法人の破産申立までのスケジュール

今回は、どのようなスケジュールで法人の破産申立をすすめていくのかについて説明していくことにしましょう。

1.法人破産申立までの流れ

まず法人の代表者や担当者が申立代理人となる弁護士に現在の法人の状況、資金繰り等を説明します。

その結果、これ以上の事業の継続や事業の再生は不可能であると判断された場合、破産するという方針を決定し、申立代理人となる弁護士と破産手続について依頼する旨の契約を締結します。

破産をするという方針を決定したとして、次に問題になるのは、破産の申立日をいつにするのかです。

たとえば、法人が手形を振り出していて、当座預金残高が不足し、手形が不渡となってしまう場合を考えてみましょう。

この場合、たとえばすでに資金繰りが厳しく、取引先への支払に遅れていることも多いでしょう。

そのため、申立前に手形の不渡りが発覚すると、取引先が無理やり法人に取り立てにくるなど現場が混乱したり、口うるさい債権者や親族などの一部の債権者にだけ本来すべきではない弁済(これを「偏頗(へんぱ)弁済」といいます)を行なうおそれがあり、破産手続が煩雑になることが予想されます。

このように、すでに破産方針が決定しているのであれば、できるだけ早く破産の申立をした方がよいことが多いでしょう。

ただし、破産をするとしても、すぐに破産できるわけではありません。

裁判所に手続費用として納める必要のある予納金や弁護士費用(予納金と弁護士費用をあわせて「申立費用」とします。)を確保する必要があります。

申立費用を確保できない場合には、確保するまでの間は通常破産をすることができません。

そのため、会社財産から捻出できるよう、法人の代表者や担当者は、法人の現金、預金額、売掛金の回収予定額を詳細に把握し、それを申立代理人である弁護士に知らせる必要があります。

もし、売掛金の回収によって、申立費用をすぐに確保できない場合には、債権者との関係では受任通知を出して、債権者からの取立をストップし、法人が所有する財産を換価していく作業をする必要があることもあります。

換価をする場合には、その価格が不当に低くないよう査定を取る必要があります。

なお、東京地裁では比較的少額の予納金で破産をすることもできますが、地方によっては予納金が高額になることもあります。

そのため、予め破産の申立をする予定の地方の裁判所に問合せをして凡その予納金を把握する必要もあります。

いずれにせよ、いつ申立をするかを決める場合には、申立費用を考慮しなければなりません。

2.申立方法の選択

(1)自己破産の申立

株式会社が自己破産の申立を行なう場合には、会社の取締役会を開催し、破産をすることについての取締役会決議をすることが通常です。

そのため、会社経営者が破産をする方針を決定した場合には、今日明日で取締役会決議を開けるものではないのが通常ですから、情報が外部に漏洩して破産準備に影響がでないように配慮しつつできるだけ早めに取締役会を開催すべきでしょう。

なお、取締役会を開かない場合、あるいは開けない場合には、取締役の過半数が破産をすることについて同意し、それを書面にする必要があります。

(2)準自己破産の申立

取締役会決議を経ずに、取締役が取締役の地位に基づいて会社の破産手続開始の申立をすることが法律上認められています。

これを準自己破産の申立といいます。

これは、緊急性があり取締役を開催する時間がない場合、取締役会を開催すると破産をすることの情報が漏れ混乱が予想される場合、代表取締役が亡くなっている場合、一部の取締役が機能を果たしていない場合に用いられる手法です。

3.資料の準備

法人は、裁判所に対して、破産に至る経緯や財産状況等について説明するための資料を準備する必要があります。

この準備がスムーズにいけば、破産申立もスムーズに行なうことができますが、準備が遅れてしまうと、せっかく申立費用が準備できていたとしても、破産の申立をすることができないということもありえます。

そのため、法人の代表者やその担当者としては、申立代理人に破産手続について依頼をしたとしても、それで安心というわけではなく、申立代理人から要請のあった資料の提出に協力する必要があります。

4.申立書等の提出と面接又は債務者審尋

(1)申立書等の提出

予定していた申立日に申立書と添付書類を裁判所に提出します。

添付書類としては、法人登記の現在事項証明書、取締役会議事録、債権者一覧表、資産一覧表、確定申告書、決算書などがあります。

(2)面接又は債務者審尋

東京地裁に申立をする場合には、債務者自身に破産に至る経緯などの事情を裁判官が尋ねる債務者審尋という手続は行なわれず、申立代理人である弁護士と裁判官との面接が行なわれることになります。

他方で、地方の裁判所に申立をする場合には、債務者自身に破産に至る経緯などの事情を裁判官が尋ねる債務者審尋という手続が行なわれることがあります。

なお、債務者審尋といっても、申立代理人も同席するのでご安心ください。

5.破産手続開始決定と破産管財人の選任

申立代理人の裁判官との面接又は債務者審尋を経て、破産手続をすすめていくことに問題がないと裁判所が判断した場合には、裁判所から破産手続開始決定がなされます。

また、法人の財産を管理する者として破産管財人が選任されることになります。

まとめ

以上、簡単に法人の破産申立までのスケジュールを説明しました。

ただ、法人破産の申立といっても、法人の破産に至る経緯や財産状況等はケースバイケースです。

そのため、速やかに破産の申立を行なう必要がある場合や、従業員の雇用や取引先を維持するために、事業を譲渡する場合、申立費用を確保する必要がある場合など様々なバリエイションがあり、どのようなスケジュールで破産の申立を進めるべきかについては、専門家である弁護士でなければ判断が困難なことが多いです。

法人の破産を検討されている方は、破産をすべきかどうかの検討や、混乱なく破産の手続をスムーズに進めるためにも、お早目に弁護士に相談されることをお勧めします。