法人破産における債権者への配当の順番は?配当があるケースを弁護士が徹底解説

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

「法人破産の手続で債権者に支払われる配当がある場合の支払いの順位は?」
「どんな債権へ優先的に配当が支払われるのか知りたい」

会社を経営されている方の中には、資金繰りの悪化などによって破産手続を検討されてて、破産手続を進めた場合、債権者にどのように資産が分配されるか心配されている方もいると思います。

また、取引先が破産して、自社の債権に対して返済が行われるのか心配されている方もいると思います。

会社、法人の破産では、破産手続の中で資産を換金していって残った残余財産が、債権者平等の原則のもとで、各債権者に配当されていきます。

この配当が行われる場合、債権の種類によっては優先順位が設けられています。

本記事では、法人破産手続における配当の順位や注意点、法人破産手続を弁護士に依頼するメリットについてご説明します。

1.法人破産での債権者への配当順位

法人破産において、債権者が法人に対して有する債権は、大きく次の2つに分類されます。

債権者が法人に対して有する債権

  • 財団債権
  • 破産債権

配当の順位としては、財団債権が優先し、破産債権はそれに劣後する関係になります。

法人に債権者に支払う資産が残っている場合、最初に財団債権への支払が行われ、その後に破産債権に配当が行われることになるのです。

以下では、それぞれの分類にどのような債権が該当するのかについて解説します。

(1)財団債権

財団債権とは、法人破産の手続によらずに随時支払われる債権を指し、その意味で最も強力な債権です。

具体的には、以下のような債権がこれにあたります。

財団債権に属する債権の具体例

  • 破産管財人の報酬債権
  • 納期限未到来または納期限到来から1年未満の租税債権
  • 破産開始手続開始決定前3か月以内の従業員の給与債権

これらの債権は、破産債権者全体の利益と政策的配慮に基づいて、優先的に支払いがなされるべきものとして取り扱われています。

なお、財団債権の引き当てとなる会社・法人の残余財産の総額が財団債権の全額を下回る場合には、財団債権に属する債権額に応じた割合で支払いが行われます。

(2)破産債権

破産債権は、財団債権には該当しないものの、破産手続開始決定前に起こった原因によって生じた債権です。

具体的には、破産する会社への売掛金や貸付金、未収金など取引によって発生した債権がこれにあたります。

破産債権に属する債権については、破産債権の中でも定められた配当順位に従って一部または全部が支払われます。

配当順位は、以下のように定められています。

破産債権の優先順位

1.優先的破産債権
2.一般的破産債権
3.劣後的破産債権
4.約定劣後破産債権

どのような債権が該当するのか、それぞれ順にご説明します。

#1:優先的破産債権

破産債権に属する債権のうち、優先的に配当が行われる債権を指します。

具体的には、以下のものが挙げられます。

優先的破産債権に属する債権の具体例

  • 財団債権に属さない租税債権
  • 財団債権に属さない従業員の給与債権

#2:一般的破産債権

破産債権に属する債権のうち、他のどの分類にも属さない債権を指します。

法人破産に関連しては、金融機関からの借入れや取引先との買掛金・売掛金などの債権などがこれにあたります。

#3:劣後的破産債権

優先的破産債権と一般的破産債権の配当を終えて、なお余剰がある際に配当される債権です。

具体的には、破産手続開始決定後の利息や遅延損害金、延滞税や加算税などがこれに該当します。

#4:約定劣後破産債権

会社、法人と債権者の間で、配当順位が劣後的破産債権に劣後する旨が事前に取り決められている債権を指します。

これに該当する債権については、他の破産債権の配当を終えて、なお余剰がある際に配当される債権であるため、基本的に法人破産の手続において配当が行われる可能性はほとんどありません。

2.配当に関する注意点

債権の優先順位は上記のとおりですが、配当を行う資産が有り、配当手続を進めていく上では、以下の2点にも注意する必要があります。

配当に関する注意点

  • 別除権は破産手続によらず常に優先する
  • 順位を誤った配当は損害賠償責任を問われる

これらについて順にご説明します。

(1)別除権は破産手続によらず常に優先する

別除権とは、抵当権や質権などの債権者が予め破産する法人の財産に設定している担保権を指します。

担保権が設定されている債権を有する債権者は、破産手続によらずに優先的に債権の回収を図ることができます。

そのため、会社や法人が所有する不動産などに担保権を有する債権者が独自に担保権の実行をして債権の回収を図ることは妨げられないことになります。

別除権を行使されると、担保権が設定されている財産を失うことになるため、その分だけ破産手続で配当される残余財産が減少してしまいます。

法人破産の手続を進めるにあたっては、このような法人の財産から優先して回収を図ることができる債権があるということを押さえておきましょう。

(2)順位を誤った配当は損害賠償責任を問われる

法人破産においては、債権の種類ごとに配当の順位が決められています。

優先順位に反した支払いが行われると、先に返済を得られるはずだった債権者から損害賠償を請求されてしまう可能性があります。

配当を行うのは裁判所から選任された破産管財人であるため、破産する法人はそこまで気にする必要はないのですが、支払いの順番は複雑に規律されているため慎重に行われる手続であることは把握しておきましょう。

3.法人破産手続の申立てを弁護士に依頼するメリット

法人破産の手続を弁護士に依頼することには種々のメリットがあるのですが、いくつか主だった点を紹介します。

法人破産の手続を弁護士に依頼するメリット

  • 複雑な手続を任せることができる
  • 債権者への対応を弁護士が行う
  • 少額管財事件となれば必要となるトータルの費用を抑えることができる可能性がある

それぞれ順に説明します。

(1)複雑な手続を任せることができる

法人破産では、申立書類の作成や必要書類の収集、債権者や従業員の対応、事業所や資産の対処、破産管財人や裁判所への説明や引継ぎなどの多岐にわたる複雑な作業を進めていく必要があります。

これらの手続は法的な知識や破産実務の経験がなければ、進めていくことが困難です。

弁護士に依頼することで、これらの手続を任せることができます。

(2)債権者への対応を弁護士が行う

会社・法人の破産では、債権者の数が多くなることも少なくなく、付き合いからの感情的な苦情や返済の督促など当事者での対応だと精神的、労力的に厳しいこともあります。

弁護士に手続を依頼することで、破産申立に準備を要して債権者とのやり取りが必要なケースでは、弁護士が窓口となって債権者との対応をおこなうため、当事者の負担を軽減することができます。

(3)少額管財事件となれば必要となるトータルの費用を抑えることができる可能性がある

法人破産では、少額管財事件という制度の運用がなされる裁判所が多くあります。

少額管財とは、比較的定型的な処理が可能な破産手続に適用され、裁判所に納める予納金の金額が低くなります。

少額管財が適用される条件として、弁護士が代理人として破産申立が行われているものに限られるということがあります。

もちろん申立てを依頼する弁護士の費用も必要となるのですが、裁判所に納める金額が低くなる少額管財のケースでは、弁護士費用の全額がトータルで必要となる費用に加算されるわけではないという利点があります。

まとめ

本記事では、会社、法人破産の破産手続における配当の順位や、注意点などについて解説しました。

配当の順位や優先的に支払いがされる債権の種類については法律上複雑な定めがあります。

優先順位に反する配当が行われた場合には、債権者から損害賠償を求められるリスクもあるため、破産手続上慎重に債権の認否が行われています。

法人破産の申立てや手続の流れに何らかのご不安がある方は気兼ねせずにまずは弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの法人破産の手続に対応してきました。

経験のある弁護士が丁寧にお話を伺いますので、法人破産の申立てをご検討の方はお気軽にご相談ください。

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。