会社破産にかかる費用や払えない場合の対処法について弁護士が解説
「会社破産にはどのような費用が必要なの?」
「会社破産の費用が支払えない状態で破産手続きをしたい場合はどうすれば良いの?」
会社を経営されている方の中には、会社破産手続きにはどのくらいの費用がかかるのか、あるいは、会社破産手続きの費用をどう捻出すればよいか、頭を悩ませてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、会社破産において必要となる費用と支払えない場合の対処法、会社の破産を検討する際の注意点などについてご説明します。
この記事を読んで、会社破産に必要になる費用やその内訳、費用が支払えない場合の対処法を知っていただければ幸いです。
1.法人破産に必要な費用はいくらか
会社破産に要する費用としては、大別して、(1)裁判所へ納める費用と申し立てを代理する弁護士(申立代理人)の(2)弁護士費用があります。
(1)会社破産で裁判所に納める費用
裁判所へ納める費用には、申立手数料(印紙代)、郵便切手代、官報公告費、引継予納金になります。
これらの金額は、以下のとおりです。
#1:申立手数料
申立手数料(印紙代)は、1000円程度です。
#2:郵便切手
郵便切手代は、債権者数によって変動がありますが、4000円程度となります。
#3:官報公告費用
官報公告費用とは、破産手続に関する情報を債権者に知らせるために、官報に基本的な情報を公開するための費用です。
官報公告費用は、1万4786円程度となります。
#4:引継予納金
引継予納金とは、会社の財産調査、換価業務、債権者への報告や配当などを行うために裁判所から選任される破産管財人へ支払う費用です。
破産管財人の報酬や、債権者への配当に充てられます。
会社の負債額に応じて、また、破産管財人の行う業務内容に応じて、金額が異なります。
裁判所では、会社の負債額に着目して、以下のような目安があります。
- 負債額が5千万円未満の場合:70万円
- 負債額が5千万円以上1億円未満の場合:80万円
- 負債額が1億円以上5億円未満の場合:150万円
- 負債額が5億円以上10億円未満の場合:250万円
- 負債額が10億円以上50億円未満の場合:400万円
- 負債額が50億円以上100億円未満の場合:500万円
- 負債額が100億円以上の場合:700万円
もっとも、破産管財人の業務を簡略化できるようなケースで、少額管財手続きを利用した場合には、引継予納金は20万円程度の金額になります。
少額管財が使えるケースとは?
・弁護士による申立てであることが必須
少額管財は、破産管財人の業務を軽減できる場合でなければなりませんので、弁護士による事案整理、破産管財人へ引継ぎが必須条件となります。
・小規模の法人の場合
会社の規模が小さく、実質的に個人事業主が法人成りした場合にすぎないケースでは、少額管財となることが多いです。
・資産の乏しい法人の場合
不動産など換価可能な財産に乏しく、設備もリースに頼っていて、ほとんど資産のない会社は、少額管財となることが多いです。
(2)会社破産でかかる弁護士費用
破産申立を行う弁護士にかかる費用は、会社の規模、負債総額、拠点数、従業員数など破産申立準備にあたって必要となる期間、業務量の見通しに応じて異なります。
大まかな目安としては、以下の通りになります。
以下の金額はすべて税込価格です。
- 個人事業に近似する簡易なケース:33~99万円
- 負債総額1億円以下で、債権者数が50社以下のケース:88~220万円
- 負債総額1億円以上で、債権者数が50社以上のケース:165 ~
また、事業をすでに停止しているか、事業を継続しているかどうかでも、申立て前の解約や換価処理の量が異なってきますので、弁護士費用に違いがでてきます。
#1:すでに事業を停止している法人
すでに事業を停止させて債務超過にある場合には、管理や換価可能な資産に乏しいことが多いため、弁護士による破産手続き前の業務は少なくなるため、弁護士費用は44~110万円の範囲に収まることも多いです。
もっとも、すでに事業を停止してしばらく経過している会社は、代表者個人も負債の状況や売掛債権の詳細が定かではなくなってしまっているようなこともあります。
この場合には、直近の決算報告書などをもとにして、当時の会社財産の状態を確認しながら、申立て前の解約や換価業務、債権者への対応方法などを確認しながら、弁護士費用を定めることになります。
#2:事業を継続している法人
事業を継続している、または直近まで事業を行っていた会社は、売掛債権の管理、回収や、従業員への対応など、事業の停止に向けた様々な準備が必要になります。
この場合、弁護士が行う手続きも増えるため、弁護士費用は事業をすでに停止している場合と比較すると、高くなる傾向があります。
2.会社破産の費用が支払えない場合の対処法
会社破産は、借金の支払いが不可能になった会社の法人格を消滅させる手続ですので、会社の事業が停止され、売上が発生しない状態の段階で申立てすることも少なくありません。
そのため、事業停止時に、会社の資産がほとんど残っていない場合も考えられます。
以下では、会社破産に要する費用を可能な限り抑える方法も含めて、会社破産に要する費用について、全般的にご紹介したいと思います。
(1)会社財産などから工面する
以下では、売掛金の回収などの会社財産の換価によって、弁護士費用や引継予納金を工面する方法をご紹介します。
#1:売掛金の回収
事業停止から間もなく、売掛債権を有している場合は、弁護士に売掛金の回収を任せるなどして、回収した金額を弁護士費用や引継予納金に充てることができるケースがあります。
#2:会社の資産を売却する
会社破産に要する費用を捻出する方法として、法人財産を処分する方法があります。
例えば、事業停止時に残っていた会社の預貯金、事業停止後に回収した売掛債権、什器備品を換価した際の現金、会社契約の保険を解約した場合の解約返戻金などを、会社破産の費用に充てることが可能です。
#3:換価する際の注意点
法人財産を処分する際の注意点としては、適正価格で処分しなければならず、売却代金を自由に使ってよいわけではないという点が挙げられます。
①適正価格で処分しなければならない
不当に安い金額で売却してしまうと会社財産の不当な流出になります。
破産管財人に否認権を行使されてしまう(売買取引をなかった状態に戻されてしまう)おそれがあります。
そのため、法人財産の処分にあたっては、複数の売却先候補者に、買取金額の見積りをとって、最も高額な相手に売却することが必要になります。
②得た現金は自由に使用することができない
換価した後の売却代金は、申立代理人である弁護士が管理します。
売却代金は、例えば、特定の買掛先への支払い、役員借入金の返済など特定の債権者への返済に充てることはできません。
破産申立に必要な引継予納金や弁護士費用に充てることはできます。
優先的に取り扱われる債権で、例えば、直近の従業員への賃金支払いに充てようと考えている場合でも、必ず申立代理人である弁護士に相談してください。
(3)弁護士費用について弁護士と相談する
一口に会社破産の手続きと言っても、申立代理人となる弁護士の費用は、負債総額や破産申立準備にあたって必要となる期間、業務量に応じて、事案ごとに異なります。
高額な資産の回収、換価(換金)等の業務がなければ、弁護士費用は低額に抑えることが可能な場合もあります。
具体的にどのような金額になるのかは、会社の負債や資産状況を説明しながら、弁護士に相談することが必要となります。
3.会社破産における注意点3つ
以下では、あらかじめ留意しておくことでスムーズに申立て準備を行い、費用を抑えることにもつながる、会社破産における3つの注意点をご説明いたします。
(1)できるだけ早く弁護士に相談する
会社破産の手続は、複雑な処理を伴います。弁護士に委任することは、次のようなメリットがあります。
#1:従業員や取引先などの債権者対応を任せられる
会社の事業を停止させた直後は、各債権者の取立行為も考えられ、混乱を生じてしまうことがあります。
受任通知を送付した後は、弁護士が一括して窓口となります。
ですので、弁護士を通じて負債の状況や今後の手続などを説明して、状況を落ち着かせながら破産手続を進めることができます。
このことは、会社経営者の精神的な負担の軽減にもなるでしょう。
これは、弁護士へ依頼する大きなメリットといえます。
#2:申立に必要な資料の収集や申立書の作成を任せて期間を短縮する
破産申立てにあたっては、あらかじめ必要な資料をそろえて、裁判所に申立書を提出する必要があります。
必要書類には、決算報告書や、会社名義の預金通帳、事務所の賃貸借契約書などがあります。
提出するべき必要書類を適切に選別して収集することや複雑な申立書類の作成を弁護士に任せることは、必要書類の紛失を防ぎ、また必要書類を確実に揃える事ができるということになります。
その結果、終結に至るまでの期間の短縮に繋がるという、大きなメリットがあります。
#3:裁判所や破産管財人とのやりとりを任せて精神的負担を軽減する
破産申立時には、裁判所や破産管財人へ破産申立に至った経緯や事業の概要、負債や資産、収入などに関する説明が必要になります。
この説明では、どのような原因で債務が増大して債務超過・支払不能に至ったか、換価が必要な資産はないか、事業停止後に債権者からどのような請求があったかなど、破産管財人が調査を行ううえで必要な事項を、十分に説明する必要があります。
また、破産申立て後も、裁判所や破産管財人から尋ねられることや資料の提出を求められることは多くあります。
このような裁判所や破産管財人との対応についても破産手続きを十分に理解し、事情を把握して的確に行う必要があります。
これらの説明を弁護士に任せられることで、精神的負担が軽減されることはもとより、スムーズな申立て準備、破産管財人の業務の簡略化につながります。
#4:予納金が低くなる傾向がある
会社破産の申立てを弁護士に依頼することによって、事案の整理が図られ、破産管財人の負担が軽減されますので、上記の少額管財手続きの適用を受けることにより、予納金の金額は低減される傾向があります。
また、連帯保証債務など、経営者個人も負債があり、会社と同様に破産申立てをする必要がある場合、会社と個人の申立てを同時に行うことで、二重に予納金がかからなくなります。
弁護士に相談する際に、経営者個人も会社と同時に破産手続を採るか判断して、予納金の節約を検討しましょう。
#5:会社の負債と資産を把握し、速やかに破産管財人へ引き継ぐ
会社の破産申立てに時間を要してしまうと、売掛債権が時効にかかってしまったり、事務所の賃貸借契約の解約申入れが遅れ、余計な賃料が発生して、敷金の回収ができなかったり、動産が陳腐化してしまい換価できなくなってしまったりといった不利益が考えられます。
そのため、会社の負債と資産を把握して、できるだけ早く、破産申立てを行い、裁判所による破産手続開始決定を得て、破産管財人へ会社の資産等を引き継ぐ必要があります。
破産手続きに詳しい弁護士に相談することで、現在の会社の負債と資産の状態を把握し、適切・効率的に破産手続きを行うことができます。
資金繰りに不安を感じたときは、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめいたします。
(2)会社破産は法テラスが利用できない
会社破産に関しては、法テラスを利用することができません。
そのため、会社破産を検討している方は、まずは当事務所にご相談ください。
当事務所では、会社整理、法人整理に関する法律相談は、無料で承っております。
法律相談では、会社の事業内容や規模、負債、資産、拠点数、従業員数、債務増大の経緯などをお伺いして、破産申立てを行うべきか、他に適した整理方法があるかなどを検討いたします。
当事務所には、破産管財人の経験を有する弁護士も在籍しておりますので、安心してご依頼をいただけます。
(3)会社破産のタイミングを見計らう
会社破産の申立てを行う場合、そのタイミングも重要になります。
破産手続きの開始が遅れると、会社の売掛債権の消滅時効が完成したり、余分な事務所賃料が発生して敷金の回収が困難になったりするなどが考えられます。
また、会社の負債が大きくなると、引継予納金や弁護士費用なども大きくなることがあります。
そのため、弁護士に相談をして、破産申立てを行うべきか、または、破産を申し立てるにあたっての注意点や、今後の手続きの流れなどをよく話し合う必要があります。
まとめ
本記事では、会社破産を検討する際に、必要となる費用と費用が支払えない場合の対処法、会社破産を検討する際の注意点をご説明しました。
債権者からの督促が継続されている場合、早急に弁護士へ相談することで督促を中断して、会社資産の管理、換価や売掛金回収、預貯金口座や保険契約の解約処理などを必要に応じて行いながら、申立て準備をスムーズに進められます。
また、早めに弁護士にご相談いただければ、会社破産の費用が支払えない場合の対処法を踏まえて、会社の状況に合わせて弁護士費用のご提案ができます。
その他にも、上記のような弁護士に早めに相談することによるメリットがあります。
会社破産に関してお悩みがございましたら、弁護士法人みずきへご相談をお寄せください。
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