飲食店が倒産する理由と倒産した場合の対処法について解説

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

「売上が少なくテナント料や給与の支払いが困難」
「最近倒産する飲食店が多いから続けていくべきか迷っている」

飲食店の企業生存率は高くありません。

5年継続できる割合は半数以下だといわれています。

加えて、コロナ禍で飲食店は多大な影響を受けました。

そのため、撤退を考えている経営者は少なくなく、飲食店の倒産件数は増加傾向にあります。

本記事は、これから飲食店をたたむことを考えている方やたたもうか悩んでいる方に向けて、飲食店が倒産する理由や、倒産する場合にとれる手続、そして廃業届など飲食店ならではの手続についてご紹介します。

先を知ることでやるべきことが分かり、不安は解消されるものです。

是非一度、目を通していただければ幸いです。

1.飲食店が倒産する理由

自己破産をしても養育費は免責されない

倒産は法律用語ではありません。

一般的には、会社が債務の支払不能に陥る、経済活動を継続できなくなるなどの状態を指します。

飲食店が倒産する理由には、主に以下の理由があげられます。

(1)準備資金不足

店舗立ち上げ時の見通しが甘く収益化できる前に資金が尽きてしまうというケースがあります。

(2)人手不足

人手が足りず回転率が下がって業績が悪化した、高齢で後継者がいないなど、働く人がいないことで倒産することがあります。

(3)業績悪化

周辺にライバル店ができた、利益を追求するあまりに客足が遠のいた、人手不足を解消するために給与を上げたところ経費が嵩んだなど、業績悪化の理由は様々です。

2.飲食店が倒産状態に陥った場合の対処法

建設アスベスト給付金制度とは

飲食店が倒産状態に陥った場合は、「廃業」と「倒産手続」があります。

そして、倒産手続には法的整理と私的整理があります。さらに、法的整理には、破産・特別清算・民事再生・会社更生があります。

以下にそれぞれ解説します。

(1)廃業

廃業とは、事業を自らやめることです。

負債がない、もしくは負債はあっても返済可能な場合に選択します。

#1:個人経営の飲食店の場合

個人事業主の飲食店の場合は、借入れの返済、テナントやリースなどの各種契約を解約、什器備品の処分、従業員の解雇などを行います。

テナント関係は、居抜きで買い取ってもらえると比較的作業を軽減することができます。

もっとも、ビルによってはオーナーが居抜きを認めていないことがあります。一度管理会社へ問い合わせてみると良いでしょう。

#2:会社経営の飲食店の場合

会社(法人)の場合も個人事業主の場合とすべきことはほとんど同じです。

もっとも、飲食店の廃業と同時に会社をたたむのであれば、清算という会社を解散させる手続をとることになります。

清算の流れは、清算人の選任と解散登記にはじまり、解散確定申告、債権債務関係の整理、資産の換価、負債の返済、株主への残余財産の分配、清算確定申告、そして清算決了登記をもって終了します。

(2)倒産手続

倒産手続は、支払不能である場合に行う手続です。

個人の場合は、破産、個人再生、任意整理という整理方法があります。

会社の場合は、破産、私的整理、特別清算、民事再生、会社更生という手続があり、事業を停止させるか、事業を継続させるかでとるべき手続が変わります。

ここでは会社の倒産手続について解説します。

#1:破産

破産は、裁判所を介して行う手続です。

裁判所への申立てによって破産手続が開始します。

破産手続の終了とともに会社そのものと会社が抱える負債が消滅します。

手続の中では、資産の調査や換価、債権者への分配などが行われます。

裁判所と裁判所が選任する破産管財人のチェックのもと手続が進むため、債権者の満足度が高い手続です。

飲食店の破産手続については詳しくはこちらを参照ください。

#2:私的整理

裁判所を介することなく任意に負債を整理する方法です。

当事者間の合意にもとづいて行われるため、手続が簡単であるというメリットがあります。

一方で、債権者ごとの話し合いとなることから、話がまとまらず手続の遂行が困難になることがあるのがデメリットです。

#3:特別清算

この手続は株式会社でなければできません。

会社資産を換価し、債権者に分配するという点では破産と同じですが、換価の判断や方法について債権者の同意が必要など、細かいところで破産手続と異なる点があります。

債権者のとりまとめが難しいことから、一般的には破産手続をとることが多いです。

もっとも、大口の債権者の協力が得られるのであれば、破産手続よりも早期に終えることができるため、場合によっては特別清算が選択肢にあがることもあります。

#4:民事再生

民事再生は、裁判所を介して行う手続です。

会社を再生させることを目的としている点が破産と異なる点です。

債務を圧縮する内容で再生計画案を作成し、裁判所の決定を得て、その計画案どおりに返済することで、残りの債務が免除されます。

営業利益が出ている会社、営業利益は出ていないものの他社の再生のための支援を得ることができる会社などが選択することができる手続です。

#5:会社更生

会社更生は、株式会社でなければできない、経営陣は退陣しなければならないなど、細かいところで民事再生とは異なります。

一般的には民事再生を選択することが多いです。

しかし、大規模な会社である場合など、会社更生が適していることもあります。

3.飲食店の事業停止で気をつけなければならないこと

スタートさせたときと同様に、クローズさせるときにも事前の算段が必要です。

各種契約の解約、残置物の処分、原状回復など、必要な作業は多岐にわたるうえに、中には予算の確保や書面作業などの細かいものもあります。

また、対外的に公表する時期も大切です。

事前に入念に算段したうえでスタートさせる必要があります。

ここでは、飲食店の場合に特に気をつけるべき点について解説します。

(1)廃業届を行政機関へ出す

飲食店は、複数の法律によって基準が定められており、それらを監督する機関から許認可を得て営業しています。

もし事業を停止する場合には、法律の定めにしたがって、その旨を各機関へ届け出る、許可証を返却するなどの所定の手続を踏む必要があります。

法律によっては必要な届出を怠った場合の罰則が定まっているものもあるため、注意しなければなりません。

知らなかったでは済まされないものですので、事前に各所へ問い合わせておくようにしましょう。

#1:食品衛生法・健康増進法関係は地方公共団体へ

レストラン、カフェ、居酒屋、バーなど、飲食店は保健所の許可を得ています。

保健所の運用は地方公共団体によって異なるため、まず地方公共団体へ問い合わせをしましょう。

なお、学校や病院などの給食サービス事業の場合、健康増進法関係の手続の確認も必要です。

こちらも各地の地方公共団体によって運用が異なりますので、直接問い合わせることになります。

#2:風営法関係は管轄の警察署へ

深夜に酒類を提供している飲食店、ナイトクラブ、キャバクラなどは風営法の許認可があります。

深夜種類提供飲食店営業の届出、特定遊興飲食店営業許可、風俗営業許可などを得ている場合は、管轄の警察署へ相談し、必要な手続を進める必要があります。

なお、会社が破産した後も同じ事業を個人事業主として続けていきたいと考えている方も少なくありません。

その場合は、現時点で会社が得ている許認可関係を個人に引き継げるかどうかも一緒に確認しておくこともお勧めします。

後続事業をスムーズに進めることができるでしょう。

(2)飲食店の事業停止が従業員に与える影響

飲食店には多数のパートアルバイトが在籍していることが少なくありません。

解雇時期の判断、未払給与や解雇予告手当などの整理が必要となります。

また、調理師を目指しているスタッフが在籍している場合は、試験を受けるスタッフへの配慮として、手続が終了するまでに調理業務従事証明書を作成しておくと良いです。

(3)事業停止するタイミングは入念に検討する

飲食店の場合、食材など劣化する財産を多数抱えています。廃棄コストを可能な限り抑えるためには、仕入れと事業停止時期を調整する必要があります。

さらに、百貨店やショッピングモールなどに出店している場合や、フランチャイズ契約である場合など、契約の終了について違約金などの取り決めがなされている場合があります。

可能な限り無駄な支出を避けて次に繋げるためには、各種契約の終了時期にあわせて事業停止時期を決め、それに向けて仕入れを調整していくという長期的な取り組みが必要です。

また、給食サービス業の場合は、夏休み等の給食提供に支障が出ない時期とするなどの対外的な影響に対する配慮も必要です。

なお、取引先によっては事業停止を知った途端に支払いを止めてしまうところがあります。

そのため、代金を清算してもらった後に事業停止を伝えるという慎重な対応が不可欠です。

弁護士に相談しながら進めていくことで、こういった注意すべき点は回避できます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

飲食店の倒産理由と対処法についてご紹介しました。

飲食店の倒産処理には長期的な調整や予算が必要です。

そのため、倒産状態に陥った後も資金が完全に尽きるまで事業継続してしまうと、代表者、従業員、取引先などが多大な影響を被り、関係者の再起を遅らせてしまうことになりかねません。

とはいえ、事業継続できる状態なのか否かの判断は難しく、なかなか踏ん切りがつかないものです。

会社として再起できるのか事業停止するべきなのかをお悩みの方は、一度当事務所の弁護士にご相談いただければ幸いです。

破産すべきだとお伝えして次のステージへと準備を始められた方、まだ時期ではないとお伝えして奮起された方、様々な方がいらっしゃいます。

是非一度、ご連絡ください。

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。