個人再生の返済期間

1.個人再生の返済期間はどれくらいなのか

個人再生手続というのは、圧縮した借金を再生計画という返済スケジュールに沿って、返済をすることを定める手続です。

個人再生手続では、返済スケジュール(再生計画)の認可を裁判所から受けて、返済スケジュールが確定してから、通常は3年で、3か月に1回以上の割合で分割して返済しなければならないとされています。

例えば、借金が元々500万円あり、再生手続の中で500万円の借金が100万円に圧縮された場合、圧縮された100万円を3年間で分割して返済していくということです。

しかし、3年のスケジュールでは、住宅を残すために住宅ローンを支払続けている人や、返済をする期間中に途中に子供の大学への進学などがあり養育費の出費が増えるなどの理由で、必ずしも全ての人が3年間で再生手続によって圧縮された借金100万円を無理なく返済することができるわけではありません。

そこで、例外的に「特別の事情」があれば、5年を超えない範囲で返済スケジュールを延長することができるとされています。

原則として3年間、3か月に1回以上の割合で分割して返済しなければならない。
例外的に「特別の事情」があれば、5年を超えない範囲で返済することもできる。

(1)5年を超えない範囲で返済期間の認められる「特別の事情」とは?

それでは、5年を超えない範囲で返済する期間が認められる「特別の事情」があるといえるためには、どのような事情が必要でしょうか?

簡単にいうと、収入から生活費、子供の養育費、家族の医療費を差し引くと、3年では圧縮された借金を分割して返済することが難しいといえるような具体的な事情が必要とされています。

(2)「特別の事情」の具体例とは

将来的に子どもの進学を控えている場合、親の老後の面倒をみる予定がある場合、住宅を残すために住宅ローンの支払いがある場合には、養育費、介護費用、住宅ローンを差し引くと、圧縮された借金額の返済を3年間ですることが難しいといえるでしょう。

逆に言うと、毎月の手取り収入額が10万円程度しかないが、実家で暮らしている等の事情から賃料や水道光熱費などの負担がほとんどなく、毎月相当程度の余剰が見込まれる場合には「特別の事情」があるとはいいにくいです。

例えば、再生手続により圧縮された借金が100万円の場合、100万円を3年間(36か月)で返済することを考えると、毎月の返済額は2万8000円程度です。

毎月の余剰が3万円あることから、返済が可能といえるため、「特別の事情」があるとは言いにくくなります。

また、毎月の収入からは余裕がなくても、ボーナスとしてもらえる額が多く毎月余剰が出る場合、たとえば毎月の手取の収入は15万円程度であるが、ボーナスとして年に100万円程度を受け取れる場合には、ボーナスの額も加味して、「特別の事情」があるかどうかを検討することになります。

毎月の出費のうちで節約可能である娯楽費だとか交際費の出費が多く、節約をすることで3年間のスケジュールでの返済が可能である場合には、「特別の事情」は認められにくくなるといえるでしょう。

もし、「特別の事情」があるとして、3年を超えるスケジュールでの返済を希望する場合は、3年間の返済では、再生手続で圧縮される借金額の返済が困難であること(延長する必要性)、返済期間を延長すれば再生計画に沿って返済することが可能であること(延長の許容性)を裁判所に十分に説明する必要があります。

「特別の事情」が認められるかどうかの具体例

認められやすい例
・子供の進学を控えていて、出費の予定がある場合
・住宅ローンの支払がある場合
・親の老後の面倒をみる予定がある場合認められにくい例
・収入は少なくても、実家暮らしのため生活費の負担が少ない場合
・毎月の収入は少なくても、ボーナス受取額が多い場合
・節約可能な出費が多い場合

2.東京地裁の運用

毎月の家計の余剰と、返済スケジュールを3年とした場合に毎月返済することになる金額を比較して、毎月返済する金額の方が多くなるときには、返済期間の延長を考えるべきでしょう。

東京地裁で3年を超える返済スケジュールを認めてもらうには、「特別の事情」を説明する書面(上申書)を裁判所に提出する必要があるとされています。
なお、東京地裁では、民事再生法が債務者の経済生活の債権を図ることを目的としているために、3年を超える返済期間を認める「特別の事情」は広く認められるべきであるため、3年を超えるスケジュールを広く認める運用をしています。

ただし、3年を超える長期間での返済となった場合には、期間中に返済する意欲がなくなることで返済を継続することできなくなるといったリスクがあることに注意が必要です。