未払賃金立替制度について

未払賃金立替制度とは、企業が倒産した場合に、賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金について政府が事業主に代わって支払う制度のことをいいます。

独立行政法人労働者健康福祉機構(以下、「福祉機構」といいます。)が本制度を実施しています。

立替払を行ったときは、その立替払金相当額について、福祉機構は管財人や事業主に求償します。

1.立替払の対象者

立替払の対象者となるためには、以下の要件をみたす必要があります。

使用者が以下の要件を満たしていることが必須になります。

使用者
  1. 労災保険の適用事業で1年以上事業活動を行っていたこと
  2. 法律上または事実上の倒産に該当すること

労働者が以下の要件を満たしていることが必須になります。

労働者
  1. 倒産について裁判所への破産申立または労働基準監督署長への認定申請(事実上の倒産の場合)が行われた日の6か月前から2年の間に退職し
  2. 未払い賃金が2万円以上あること

例えば、破産手続開始等の申立日又は認定申請日が平成27年4月1日だとすると、その6か月前の平成26年10月1日から平成28年の9月30日までの期間内に退職した人が対象となります。

(1)立替払制度の対象となる未払賃金

退職日の6か月前の日から福祉機構に対する立替払請求の日の前日までの間に支払期日が到来している「定期賃金」「退職金」のうち未払いであるものです。

賞与や、臨時の賃金は対象にはなりません。

(2)立替払をする額

「未払賃金の総額」の100分の80の額です。

もっとも、立替払をする額には限度額が設けられています。

限度額は、退職労働者の退職日における年齢が45歳以上であれば296万円、30歳以上45歳未満であれば176万円、30歳未満であれば88万円です。

2.請求手続

<法律上の倒産の場合>
法律上の倒産の場合であれば、破産管財人等又は裁判所から、破産の申立日、決定日、退職日、未払賃金額、立替払額、賃金債権の裁判所への届出額を証明する「証明書」の交付を受ける必要があります。

<事実上の倒産の場合>
倒産をした企業(中小企業)の本社の所轄の労働基準監督署長に「認定申請書」を提出し、
①事業活動が停止し、
②再開する見込がなく、かつ、
③賃金支払能力がないこと(「倒産の認定」)を受ける必要があります。

倒産の認定申請をすることができる期間は、倒産した企業を退職した日の翌日から起算して6か月以内に限られます。

例えば、退職した日を平成26年10月31日とすると「認定申請書」は、その翌日の11月1日から平成27年4月30日までの間に労働基準監督署長に提出する必要があります。

(1)立替払請求書の提出

「証明書」または「確認通知書」の交付を受けたら、「未払賃金の立替払請求書」と「退職所得の受給に関する申告書・退職所得申告書」に必要事項を記入し、福祉機構に提出します。

(2)請求期間

立替払の請求ができる期間は、裁判所の破産等の決定の日又は労働基準監督署長の倒産の認定日の翌日から起算して2年以内に限定されています。

例えば、平成27年4月30日が破産等の決定の手続の日である場合には、翌日の5月1日から起算して2年である平成29年の4月30日まで間に立替払の請求期間が限定されます。

3.立替払の支払

福祉機構は、提出された書類等を審査し、請求の内容が要件を満たしていると認められたときに、立替払金を支払います。

※ 不正受給が行われた場合
偽りその他不正行為により立替払金の支給を受けたときは、立替払金額の2倍の額の納付を命じられるほか、刑事責任を問われることがあります。

この他、未払賃金立替払制度についてのご相談は、当事務所までお問い合わせください。