法人破産における債権者一覧表とは?役割や重要性を解説

「法人破産を行う際に必要となる債権者一覧表とはどのようなものか」
「作成する際の注意点について知りたい」

会社・法人の資金繰りが悪化し、法人破産を行うことを検討されている代表者の方の中には、このような疑問をお持ちの方もいると思います。

法人破産は、会社・法人が有する財産をすべて換価し、債権者に配当を行った上で法人格を消滅させる手続です。

そのため、債権者と負債額を正確に確定させる必要があります。

裁判所に対して法人破産を申し立てる際には、さまざまな書類を提出する必要がありますが、その中でも債権者一覧表は非常に重要な役割を持っています。

この債権者一覧表がどのような書類か、どのように作成を進めるべきか、あまり馴染みがなくて分からない方も少なくないと思います。

本記事では、債権者一覧表の概要や作成を行う際のポイントなどについて解説します。

法人破産を行うことについて悩んでいる方の参考になれば幸いです。

1.法人破産における債権者一覧表と必要書類

法人破産は法人の債務整理手続の1つで、裁判所に対して申し立てることで手続を進めます。

申立てを行う際には、申立書など定められた書類を管轄の裁判所に提出しなければならないなど、適切に準備を進めることが必要です。

ここでは債権者一覧表の概要とそのほかに必要な書類・資料について解説します。

(1)債権者一覧表とは

債権者一覧表は、法人破産の申立てを行う際に必要な書類の1つです。

具体的には、以下のような項目について記載する必要があります。

債権者一覧表の記載項目

  • 債権者の氏名
  • 債権者の住所
  • 借入れの始期および終期
  • 借入れの原因
  • 現在の残高
  • 最終返済日
  • 保証人の有無
  • 受任通知を送付した日
  • 担保の有無

債権者一覧表では、法人が抱える債務について債権者の詳細を記載し、その内容をもとに裁判所は法人の負債状況の確認・把握をします。

また、破産手続では破産管財人が裁判所によって選任され、その破産管財人が法人が所有する財産の管理・処分を代わりに行います。

債権者一覧表は、破産管財人が債権調査を行う際の重要な指標になります。

また、債権者一覧に載っていることで裁判所が債権者を把握するため、債権者が手続に参加して配当を受ける際にも重要な書類です。

なお、記載項目の1つである受任通知を送付した日というのは、弁護士が手続の依頼を受けて受任通知を債権者に送付した日のことです。

受任通知を受け取った以降、債権者は債務者に対して個別の督促や取立てが禁じられることや、破産者の経済的状況について覚知した時期の基準になることがあります。

法人破産において受任通知を送付するメリットやデメリット、注意点などについては、以下の記事も合わせてご覧ください。

2022.02.15

法人破産の受任通知とは?その効力や注意点について弁護士が解説します

(2)ほかに必要となる書類や資料

債権者一覧表のほかにも、法人破産を申し立てる際にはさまざまな書類や資料が必要となります。

具体的には、以下のような書類です。

債権者一覧表以外に必要な書類

  • 破産手続開始申立書
  • 財産目録
  • 報告書
  • 取締役会の議事録または取締役の同意書
  • 貸借対照表・損益計算書
  • 不動産登記の全部事項証明書 など

法人が保有する財産に預貯金や有価証券、車などがある場合には、それらの資産ごとに準備すべき書類や資料が追加で必要となります。

取締役会の議事録または取締役の同意書は、適正な方法により破産申立てが決定したことを証明する書類です。

取締役会設置会社であれば、破産申立てに関する取締役会を開催し、議事録を作成します。

取締役会を設置していない会社の場合、全取締役の過半数もしくは定款で定める割合の同意を示す同意書の作成が必要です。

法人破産を申し立てる際に必要となる書類や資料の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。

2024.02.20

法人破産の申立てに必要な提出書類について弁護士が解説

2.債権者一覧表の作成に関する注意点

債権者一覧表は、正確に記載をする必要があります。

内容に漏れがあると適切に手続を進められなくなる可能性もありますので、慎重に進めましょう。

作成に関する主な注意点は、以下のとおりです。

債権者一覧表の作成に関する注意点

  1. すべての債権について記載する
  2. 決算書の貸借対照表と整合的に記載する

順にご説明します。

(1)すべての債権について記載する

法人破産は、法人の負債を清算し、最終的には法人格を消滅させる手続です。

したがって、すべての負債が手続の対象となるため、不足なく債権者を記載する必要があります。

具体的には、以下のような債権者について記載します。

債権者一覧表に記載する債権者の具体例

  • 金融機関(銀行、信用金庫など)
  • 業務委託先
  • 仕入れ先
  • 事業所などの物件の貸主
  • リース物件などの貸主
  • 賃金や退職金の未払いがある従業員
  • 公共料金の未払先
  • 税金の滞納先(税務署、地方公共団体など)

負債の額の多寡に関わらず、すべての債権について記載する必要があるため、抜けや漏れがないように作成しなければなりません。

もし記載している債権者について不備があれば、裁判所から補正を求められ、手続が遅延するリスクもあります。

手続をスムーズに進めるためにも、債権者一覧の作成には細心の注意を払うようにしましょう。

(2)決算書の貸借対照表と整合的に記載する

法人破産において、債権者一覧表は裁判所が法人の負債状況を正確に把握するうえで重要な書類です。

そのため、債権者一覧表に記載されている負債総額と貸借対照表の記載内容に矛盾がないように作成を進める必要があります。

双方の金額が大きく食い違う場合、裁判所は法人の負債状況を正確に判断することが難しくなり、手続開始決定までに時間を要するケースもあります。

また、書類に矛盾があれば、意図的に財産を隠していると疑われ、法人破産の手続が途中で終了してしまうリスクがあることにも注意が必要です。

このように、債権者一覧の作成にあたっては、さまざまな注意点があり、不備などがあれば手続にも影響が生じてしまいます。

手続をスムーズに進めるためにも、債権者一覧表の作成などについては専門家である弁護士に情報を整理して提供して任せることが望ましいです。

3.法人破産について弁護士に相談するメリット

法人破産は、裁判所を通して手続が進行するため、透明性が高い点に特徴があります。

裁判所に申し立てるにあたっては、債権者一覧表の作成・提出が必要となるなど準備が必要です。

また、裁判所や債権者への対応も求められ、専門知識や実務経験がなければ適切に対応を進めることは困難が伴います。

そのため、法人破産を行うことを検討されている場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

法人破産について弁護士に相談するメリット

  1. 書類作成や資料収集のサポートを受けられる
  2. 裁判所や債権者とのやりとりを任せることができる
  3. 裁判所に納める予納金が低くなることが期待できる

順にご説明します。

(1)書類作成や資料収集のサポートを受けられる

上記で述べたように、債権者一覧表の作成には細心の注意が必要です。

また、法人の保有財産によっては、追加で資料を収集・提出しなければならないこともあります。

しかし、専門知識や実務経験が乏しい場合には、どのような書類や資料が必要となるのかを正確に判断することは困難です。

裁判所との間で書類の訂正や追加の提出などを繰り返せば、手続が遅れる事態になりかねません。

そこで、法人破産の手続に慣れた弁護士に相談・依頼することで、書類作成や資料収集の段階からサポートやアドバイスを受けながら手続を進めることが可能です。

高度な専門知識や経験を有する弁護士であれば、手続の準備に要する手間を省くことができ、スムーズに申立てを行うことができます。

法人破産の手続を行うことを検討されている方は、一度弁護士に相談してみましょう。

(2)裁判所や債権者とのやりとりを任せることができる

破産手続を行うなかで、裁判所や債権者とのやり取りが発生します。

例えば、裁判所とのやり取りでは、手続を申し立てたり、提出した書類の訂正などです。

また、破産手続では債権者集会が開かれ、破産管財人はその中で債権者に対して法人の財産の状況や手続の進捗などを報告します。

法人の代表者は債権者集会に出席する義務を負い、債権者から質疑がなされた場合には、誠実に対応しなければなりません。

裁判所や債権者への対応は、専門知識や経験がない場合には、対応を行う代表者にとっては大きな負担です。

そこで、弁護士に依頼することでこれらの対応を一任できるため、負担を軽減することができます。

法律の専門家である弁護士に任せることで、手続を迅速かつ的確に進めていくことができるでしょう。

(3)裁判所に納める予納金が低くなることが期待できる

法人破産を行うためには、裁判所に対して予納金と呼ばれる費用を納付することが必要です。

予納金の具体的な金額は、法人の負債額や債権者の数などによって20万円から数百万円の範囲で決まります。

万が一予納金を納付できない場合には手続を進めることができなくなってしまうため、法人の財産が底をついてしまう前に法人破産を行うことを検討しなければなりません。

もっとも、定型的な処理を行うことができる事案について、予納金を低く抑えて手続を進めることができる少額管財の運用を行っている裁判所もあります。

少額管財では、定型的な処理が可能であることから、手続の期間の短縮化を図ることもでき、予納金が20万円程度に抑えられることが多いです。

ただし、少額管財として処理されるためには、弁護士に手続を依頼することが要件とされています。

そのため、弁護士に相談・依頼することで、予納金を抑えて手続を進められる可能性が高まります。

少額管財の概要や振り分けられるための要件の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。

2025.08.28

法人破産における少額管財とは?その要件や手続の流れを解説

まとめ

債権者一覧表は、法人の債務の状況を示す重要な書類です。

記載内容に誤りや不備がある場合には、債権者の把握が遅れて手続が遅延したりするなどの影響も生じるため、注意が必要です。

また、法人破産を適切に進めるためには、準備中や破産申立後にも注意しなければいけないポイントがあります。

法律の専門知識や実務経験がないと円滑に準備や申立を進めることは困難なことも少なくありません。

まずは弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士法人みずきでは、法人破産の経験が豊富な弁護士が多数在籍しております。

債権者一覧表の作成をはじめ、法人破産の手続の準備でお悩みの方は、お気軽に当事務所にご相談ください。

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

依頼者の方の問題をより望ましい状況に進むようにサポートできれば、それを拡充できればというやりがいで弁護士として仕事をしています。