破産申立直後にすべき事項

1. 破産をした場合の説明義務

破産者は、破産管財人(破産者の財産を管理、調査し、金銭に換え、最終的には各債権者への配当等の職務をする裁判所から選任された弁護士)が職務をスムーズに行なえるようにする必要があります。

そのため、破産者(会社の取締役も含む)は、破産管財人(破産者の財産を管理、調査、換価や処分等の職務をする裁判所から選任された弁護士)に破産に関することを説明する義務(説明義務)を負うとされています。

この説明義務に違反すると、場合によっては刑罰(3年間の懲役または300万円以下の罰金)が科されることになったり、個人の破産者の場合は、借金が帳消しにならなくなります。

以下では、破産の申立をし、申立が認められた直後、すなわち破産手続開始決定直後にする必要がある事項について説明します。

破産者が破産手続開始決定直後にする必要がある事項といっても、会社の破産を申立する場合には、弁護士(申立代理人)に依頼している場合がほとんどです。

そのため、実際には破産者本人が全て行うのではなく、破産者と連携し、弁護士(申立代理人)が、以下の事項を行なうことになります。

2 . 破産手続開始決定直後にする必要がある事項

(1)破産者、関係者の連絡先の確認

会社の代表者、幹部や社員等の連絡先、居住先、携帯電話番号、固定電話番号等について確認をする必要があり、これを破産管財人に伝える必要があります。

これは、今後の破産管財人の管財業務(破産者の財産を管理、調査し、金銭に換え、最終的には各債権者への配当等)のために、破産者本人はもとより関係者との連絡が必要となるからです。

(2)債権者・破産した会社の財産について確認できるようにするための資料整理

特に法人の破産の場合、会社財産の劣化を防ぐといった理由で、破産の申立を急いですることがあります。

そのため、申立代理人が作成し、裁判所に提出した書類の内容には、誤りや漏れが生じることが少なからずあります。

破産管財人は、破産手続開始決定後に、申立書類に間違いや漏れがないかを確認しなければなりません。

そのため、破産管財人が確認をしやすいようにきちんと整理をして申立書類等破産に関する書類を引き渡す必要があります。

(3)否認該当事由がある場合の事情整理

破産状態に陥っていた後に、一部の債権者だけ優先して弁済していた等の場合、破産管財人は否認権というものを行使して、その弁済行為自体をなかったものにすることができます。

破産者は否認権を行使されるような事情がある場合には、申立前はもちろんのこと ですが開始決定後であっても早急に破産管財人に事情を伝え、的確な措置をとってもらう必要があります。

否認権を行使しなければならないような事柄に関して、不動産登記事項証明書、売買契約書、領収書など客観的な資料を整理し、破産管財人が否認権を行使するべきかどうか必要な資料を提供する必要があります。

(4)財産関係の引渡し

#1:社屋、オフィス、工場等の引渡し

破産手続開始決定の後は、財産の管理する権利は、破産者(代表者)ではなく、破産管財人に移ります。

そのため、不動産を破産管財人がすみやかに管理(施錠、鍵の管理、告示書の貼付等)することができるように、鍵の引き渡し、地図を用意したり、実際に場所の案内等をする必要があります。

#2:印鑑、各種帳簿の引渡し

申立代理人が既に破産者から預かっているものですが、申立代理人を通じて、破産者の会社印、代表印、帳簿、手形・小切手帳、クレジットカード、契約書等を破産管財人に引き渡す必要があります。

なお、帳簿については、パソコンによりデータ管理されていることが最近では多いです。

パソコンのリース契約をしている場合には、パソコンをリース会社に引き渡し、破産手続開始後には利用できなくなるため、事前に印刷しておくのが良いでしょう。

(5)売掛金等の債権請求のための必要書類の整理補助

売掛先一覧表は、申立時に裁判所に提出しています。

しかし、申立の時点と開始決定の時点では、時間的な間隔があるため、内容・金額が変動している場合があります。

そこで、破産管財人が正確な金額を把握できるようにするため、引き続き売掛金の内容や金額の確認作業をする必要が生じる場合があるとともに、商品内容・数量、金額等の問い合わせの対応や、売掛先ごとの契約書、発注書、納品書、請求書請求明細を整理し、破産管財人に引き継ぐ必要があります。

(6)業務補助者の確保、破産管財人への引継ぎ

開始決定後の財産の破産管財人の管理換価作業は短期集中的に行なわれる必要がありますが、経理、社会保険、クレーム等に対応する必要があり、破産管財人だけでは対応できないことがあります。

開始決定後も、サポートが必要な場合には、従業員を雇用する必要があることもあります。

そのため、サポートが必要な業務の内容、従業員名、雇用条件等を破産管財人に知らせる必要があります。

なお、以上にあげた事柄の多くは、破産手続開始決定前後の破産管財人との打ち合わせをする際に行われます。

このように、破産申立までで破産者が行うことの全てが終了するわけではありません。

破産手続開始決定後も、破産者は、破産が適切に行われるよう説明や協力することが必要となります。

破産申立で一安心するのはやむを得ませんが、破産申立後も緊張感を失わないようにする必要があることに注意が必要です。