民事再生手続と事業譲渡

会社が民事再生手続を行う際には、事業の再生に必要な資金を得るためなどに、事業の一部の譲渡を行うことがあります。

とはいえ、事業譲渡を行う場合には、株主、債権者や従業員などの利害関係人に大きな影響を及ぼしますから、事業譲渡は、法律上何の制限もなく行うことができるとはされてはいません。

そのため、事業譲渡を進める前には、法律上の制限がクリアできるかどうかを検討する必要があります。

そこで、今回は、民事再生手続における事業譲渡について説明していくことにしましょう。

1.事業譲渡とは

ここでいう事業とは、一定の目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産のことをいうとされています。

事業の譲渡とは、会社がある事業を譲渡することであり、売買契約などの取引行為によってなされます。

法律上の制限としては、会社法上の制限と民事再生法上の制限があります。

会社法では、会社が事業の「全部」または「重要な一部」の譲渡をする場合には、株主総会の特別決議(株主総会において出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。

また、民事再生法では、民事再生手続開始決定後に今まで行っていた事業の全部や重要な一部を譲渡するには、裁判所の許可が必要とされています。

当該事業が重要な事業の一部であるかどうかは、事業譲渡によって事業の継続にどのような影響があるか、債権者に対する弁済に影響がないかをみると考えられています。

上記影響を見極めるための判断要素としては、その事業が本来の事業か付随的な事業か、譲渡対象部分の範囲や価格が会社の資産に占める割合をみていくことになります。

2.裁判所の許可

(1)事業再生のための必要性

ここでいう「事業の再生のために必要と認める場合」とは、

① 事業の譲渡により残存する事業の再生・継続に必要な資金を得る場合
② 現在の経営陣に対する信用が失われたが、第三者の下で事業を継続すれば取引の継続が望まれ、事業の再生が可能になる場合
③ 事業の再生も不可能とはいえないが、第三者に譲渡した方が、再生がより確実で、それが債権者や従業員に有利な場合

が想定されます。

この事業譲渡の必要性を判断する際には、事業を譲り受ける者の選定過程の公正さや譲渡代金、譲渡条件が相当であるかどうかも考慮されますので、事業譲渡にあたっては、事業を譲り受ける者の選定の公正さと譲渡価格の妥当性の確保には十分配慮することが求められます。

(2)意見聴取

事業譲渡をするには、債権者や労働組合等の利害関係人から意見を聴取する手続をとらなければならないとされています。

#1:債権者からの意見聴取

意見聴取の方法に決まりはなく、各裁判所の裁量にゆだねられている。

たとえば東京地方裁判所では、事業譲渡許可の申立てがあると、その2週間程度後に意見聴取期日を開催して、全再生債権者の意見を直接聴くことが通常です。

債権者が200人を超える多数の場合には主要債権者について意見聴取期日の招集通知を行い、そのほかの債権者には書面で意見を提出するように新聞広告をすることにしているようです。

なお、この意見聴取を適切に行うためには、聴取期日に先立ち、再生債務者は事業を譲り受けた者の選定過程や譲渡の条件及び価格の妥当性について可能な限り十分な説明を再生債務者に行うことが要請される。

実務的には、裁判所が主催する意見聴取集会に先立ち、自ら債権者説明会を開催して、説明を行うことが望ましいと考えられています。

裁判所は、意見聴取集会での再生債権者の意見の内容や監督委員の意見を踏まえて事業譲渡の許否の判断を行うとされています。

特に問題のないケースでは、意見聴取集会の当日に事業譲渡の許可決定をしています。

また、再生債権者から強い反対意見が出て検討を要する場合は、一定の期間を設け、監督委員の意見を求めた上で、その許否を決定しています。

#2:労働組合等からの意見聴取

裁判所は、事業譲渡の許可をする場合には、労働組合からも意見を聴取しなければなりません。

この意見聴取方法にも具体的な決まりはなく、各裁判所の裁量に委ねられています。

東京地方裁判所では書面により意見を求めるのが通常のようです。

3.株主総会の決議に代わる許可

(1)代替許可とは

会社法では、上記のとおり、株式会社が事業の「全部」または「重要な一部」譲渡するためには、株主総会の特別決議が必要であるとされています。

とはいえ、会社が倒産状態にある場合、資産劣化を防ぐには早期に事業譲渡を行う必要がありますが、他方で株主は会社の経営に関心を失っており、株主総会決議の成立が困難であるケースが多いです。

そのため、株式会社である再生債務者が債務超過である場合には、株主の株券は実質的には価値を喪失していることも踏まえて、裁判所による株主総会決議に代わる許可の制度を設けています。

これを、いわゆる代替許可といいます。

(2)代替許可を得るためには

#1:債務超過の株式会社であること

債務超過であるかどうかは、事業継続価値を基準に判断するのが一般的と考えられています。

#2:事業の継続のために必要であること

裁判例では、「事業の継続のために必要であること」というためには、事業譲渡をしないとその事業が遅かれ早かれ廃業に追い込まれるような特別な事情がある場合、その事業の資産的価値が著しく減少する可能性のある場合に限られ、株主総会の特別決議を経ずに裁判所の株主総会に代わる審査によって臨機応変に事業譲渡を可能ならしめるものとしています。

#3:代替許可の公告等

代替許可があった場合、その要旨を記載した書面を株主に送達しなければなりませんが、官報に広告することによって代替しているのが通常です。

まとめ

今回は、民事再生手続における事業譲渡ついて説明をしました。

事業譲渡を行う場合には、上記の点以外にも問題になる点があります。

早期かつ適切に対処をすることで、円滑に民事再生手続を行なうことができます。

民事再生手続を検討されている法人役員の方は、なるべくお早目に弁護士にご相談されることをおすすめします。