むちうちのレントゲンで異常なしと診断された場合の対処方法とは

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「交通事故に遭った後痛みや痺れを感じる」
「むちうちだと思ったが、レントゲン検査では異常がないと言われた」

交通事故によって受傷した後、レントゲン検査を受けても異常がないと言われるケースがあります。

本記事では、どのような場合に異常がないと診断されるのか、ほかにどのような検査を受けるべきなのかについてご説明します。

1.レントゲン検査で異常なしと診断される理由と注意点

むちうちは、交通事故などの強い衝撃で頭部が激しく揺さぶられることによって、首の軟部組織が損傷することで生じる症状の総称です。

具体的には、以下のような症状が現れることがあります。

  • 首から肩、背中にかけての痛み、筋肉の張り
  • 腕、手指の痺れ
  • 吐き気
  • めまい
  • 耳鳴り……など

診断書にはむちうちではなく、外傷性頚部症候群、頚椎捻挫といった傷病名が記載されることもあります。

以下では、むちうちの症状があっても、レントゲン検査で異常なしとされる理由やその際の注意点についてご説明します。

(1)レントゲンで異常なしと診断される理由

実は、むちうちの原因となる損傷は、レントゲン検査では発見されないことがほとんどです。

むちうちは、筋肉や靭帯、神経などの軟部組織の損傷によって生じる症状です。

しかし、レントゲン検査では骨や一部の臓器といった一部の組織しか映りません。

そのため、むちうちの原因である軟部組織の損傷を確認することはできないのです。

これがむちうちの症状が出ていても、レントゲン検査ではなにも問題がないと言われやすい理由です。

(2)異常なしと診断された場合の注意点

(1)のとおり、レントゲン検査の結果、異常なしと診断されても軟部組織の損傷がないと結論付けられるわけではありません。

そのため、症状が出ているのであれば、医師の指示に従って通院による治療を継続する必要があります。

また、長期間通院しても症状が残ってしまう場合には、後遺障害等級の認定申請を検討することもあります。

この後遺障害等級の審査にあたっては、適切な頻度と期間で通院をしていることが重要な要素となります。

そのため、自己判断で通院をやめてしまうと後遺障害等級の認定では不利となる可能性があります。

レントゲン検査で異常がないと判断されても症状が出ているのであれば、次の項で説明するような検査を受けつつ、治療を続けるべきでしょう。

2.むちうちのときに受けた方がよい検査

むちうちの原因や損傷している部位を特定するためには、より詳細のわかる検査を受ける必要があります。

レントゲン検査では異常が見つからなくても、他の検査では異常が発見されるケースも多数あります。

むちうちになった場合に受けるべき検査について2つご説明いたします。

(1)MRI検査

MRI検査とは、磁力と電波を使って筋肉や血管等の軟部組織を撮影する検査のことです。

MRIは、軟部組織の撮影に優れており、また、輪切り状に切った断面での撮影もできるため、損傷を受けている箇所を特定しやすいのです。

たとえば、レントゲンを撮影しても異常なしと判断されたのに、痺れや手先の感覚がおかしい場合は、首にある神経根の圧迫が生じている可能性があります。

MRI検査であれば、そのような所見の有無を確認することができます。

レントゲン検査だけでは判断できない軟部組織の異常も、MRI検査を受けることによって、症状の原因を特定できる可能性があります。

なお、体内に入れ歯やボルトなどの金属がある場合にはMRIを使用できないこともあるため、実施する際にはよく医師に相談しましょう。

(2)神経学的検査

神経学的検査とは、痺れなどの症状が現れた場合に、その原因を確認するための検査です。

むちうちの際に行われるものには、首の神経根の異常の有無を検査するジャクソンテストやスパーリングテストなどがあります。

ジャクソンテストは、患者が椅子などに座り、医師が患者の頭部を後ろに曲げながら圧迫します。

この時、上腕や前腕、手指等に疼痛や痺れを感じれば陽性と判断されます。

スパーリングテストは、ジャクソンテストと同じく患者が椅子などに座り、頭を後ろに反らせた状態になります。そして、痛みや痺れを感じる方向に頭を傾けて圧迫し、傾けた時に肩や腕、手指等に痛みや痺れを感じれば陽性と判断されます。

これらのテストは、神経根が圧迫を受けやすい状況を作り出して、症状の悪化があるかを見るものです。

陽性の場合は、神経根の圧迫がある可能性を示しています。

これと、MRI画像検査の結果を合わせて考えることにより、症状の原因が何なのかを探っていくこととなります。

3.他の検査で異常が見つかった場合の対処方法

高次脳機能障害に関することなら弁護士法人みずきへ

他の検査で異常が見つかった時は、まずは医師の指示に従って治療を続けましょう。

また、以下のような対処方法をとることも合わせて検討することがおすすめです。

  • 弁護士に相談する
  • 後遺障害等級の認定申請をする

順にご説明します。

(1)弁護士に相談する

弁護士に相談することで、異常が見つかった後の対処方法についてアドバイスを受けられます。

また、被害者の代理人として手続を進めたり相手方と交渉したりすることも可能です。

後遺障害等級の認定申請をする場合は、さまざまな資料や証拠を準備し提出しなければなりません。

専門知識を必要とする手続ですので、交通事故に詳しい弁護士に依頼することで的確かつスムーズに進められます。

後遺障害等級が認定され、相手方に後遺障害慰謝料を請求する際に、裁判所(弁護士)基準を用いることができるため、より高額の慰謝料を請求できる点も弁護士に相談する大きなメリットです。

(2)後遺障害等級の認定申請をする

むちうちについて、半年程度の長期間治療を続けても症状が改善されない場合、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。

後遺障害等級は1級から14級までに分類されており、むちうちの場合に認定される可能性のある等級は14級9号または12級13号です。

これらの後遺障害等級が認定されれば後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できますので、詳しく見ていきましょう。

#1:14級9号

14級9号の認定を受けるには、「局部に神経症状を残すもの」と認められる必要があります。

これは、自覚症状が事故によって生じたものであることを医学的に説明することが可能なものであることを指しています。

たとえば、事故後すぐに通院を開始して2、3日に1回のペースで通院を継続しており、疼痛や痺れを除去するための治療をしっかり受けていたにもかかわらず、症状が一貫して生じており、長期の治療後も常時その症状が残っているというような場合には、医学的に説明が可能であると認められる可能性があります。

また、MRI検査で神経根の圧迫は明らかではないもののヘルニアが認められる、神経学的検査で陽性となっているというような所見も、医学的な説明に寄与する事実です。

#2:12級13号

12級13号の認定を受けるためには「局部に頑固な神経症状を残すもの」と認められる必要があります。

この場合は、説明できるだけでは足りず、自覚症状が事故によって生じたものであることが医学的に証明できることが必要となります。

医学的な証明がされるためには、MRI検査などの画像所見、神経学的所見が存在するだけではなく、その所見の生じている箇所が、自覚症状の生じている箇所と一致していることまでが必要とされています。

#3:後遺障害等級の認定を受けるにはレントゲン検査では足りない?

ここまでの説明のとおり、後遺障害等級の認定を受けるにあたっては、軟部組織の撮影が可能な、MRI検査が重要です。

レントゲン検査では、軟部組織の撮影を行うことはできませんので、後遺障害等級の認定を受けるための検査としては物足りないということになります。

もちろん、MRI検査の結果何らかの所見があったとしても14級9号の認定すら受けられず、「非該当」という結果になることもあります。

むちうちで後遺障害認定を受ける場合の注意点については、以下の記事でより詳しく説明しています。

むちうちの後遺症では後遺障害の等級認定を受けるのは難しい?認定のポイント

まとめ

レントゲン検査を受けて異常なしと言われた場合も、通院による治療を継続し、必要に応じて他の検査を受けることも検討しましょう。

弁護士法人みずきでは、交通事故問題について被害者の方のご相談を無料で承っています。

レントゲンで異常がないと言われた時の対処方法や、検査結果を踏まえたその後の対応方法についてもお話しますので、お気軽にご相談ください。

交通事故でこんなお悩みはありませんか?

交通事故に遭ってしまったけど、
保険会社・相手方とどんな風に対応
すればいいのかわからない・・・

後遺症があるためきちんと賠償を
受けたいけど、後遺障害認定申請や
示談交渉などさっぱりわからない・・・

  • ✓ 事故発生直後からのご相談・ご依頼に対応しています。どの段階の方でも安心してご相談いただけます。
  • ✓ 治療中のアドバイスから後遺障害認定申請、その後の示談交渉や訴訟対応までサポートいたします。

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。