過失割合0:100の交通事故について解説!過失割合と修正要素(その2)

過失割合0:100の交通事故~過失割合と修正要素~その1」では、①歩行者と自動車の事故、②自転車と四輪車の事故についてお話しました。

ここでは、③四輪車同士の事故についてお話したいと思います。

四輪車同士の事故で過失割合が0:100になる場合としては、基本的には3つあります。

すなわち、(1)交差点の赤信号無視、(2)センターオーバー、(3)追突事故です。

もっとも、これらの場合でも修正要素が加わることによって、過失割合が10:90になったりもします。

そこで、上記3つの事故態様とその修正要素について説明したいと思います。

1.四輪車同士の事故

(1)赤信号無視の事故

ここでは、走行してきた四輪者同士が交差点(十字路交差点)において出合い頭に衝突した事故を想定しています。

ですので、進路前方が渋滞していたため停止していた車両、交差道路等を走行する車両の通過を待つために停止していた車両に衝突した場合は対象外となります。

ⅰ 直進車同士の出合い頭事故

車両は、信号機の表示する信号等に従わなければならず(道路交通法7条)、信号機の設置された交差点における信号の規制は、ほとんど絶対的です。

したがって、信号違反車と信号遵守車との事故は、原則として、信号違反車の一方的過失に基づくことになりますので、原則として過失割合は0:100となります。

ただし、以下の修正要素がある場合には、信号遵守車の過失割合が修正されることになります。

ア 信号遵守車に何らかの過失あり又は信号違反車の明らかな先入  +10%
※信号遵守車に何らかの過失あり
信号に従っている車両であっても、前方左右に対する通常の安全確認をせず、また信号違反車の発見後容易に回避措置をとることができたのに、これを怠った場合には、過失が認められてしまいます。
したがって、ここでいう過失とは、通常の前方に対する安全不確認又は発見後の回避措置懈怠をいいます。
※信号違反車の明らかな先入
信号遵守車が、交差点進入時に直ちに制動又は方向転換の措置をとれば容易に衝突を回避することができる場合に、信号違反車に明らかな先入があったとされます。イ 信号遵守車の著しい過失                   +10%
※著しい過失
著しい過失の例としては、わき見運転等著しい前方不注視、著しいハンドル・ブレーキ操作不適切、携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転すること、時速15km以上30km未満の速度違反、酒気帯び運転等があります。
ウ 信号遵守車の重過失                     +20%
※重過失
重過失の例としては、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反、過労・病気及び薬物の影響等の理由により正常な運転ができないおそれがある場合等があります。

エ 信号違反車の著しい過失                    -5%

オ 信号違反車の重過失                     -10%

ⅱ 右折車と直進車の事故

直進車が赤信号で進入し、右折車が右折の青矢印信号で進入した場合を想定しています。

直進車が赤信号で交差点に進入し、右折車が右折の青矢印信号で交差点に進入した場合には、直進が禁止され、右折のみが許されることになります(道路交通法施行令2条1項)。

したがって、基本的には赤信号を無視した直進車の一方的過失というべきであり、原則として過失割合は0:100となります。

もっとも、右折車も、対向直進車の動静を確認することは比較的容易であるといえるため、わずかに前方を注視すれば直進車の進入を認識することができるのにこれをしなかったというような場合には、右折車にも若干の過失が認められることになります。

以下の修正要素がある場合には直進車の過失割合が修正されます。

ア 直進車に15km以上の速度違反     +5%

イ 直進車に30km以上の速度違反    +10%

ウ 直進車の著しい過失          +5%
※著しい過失・重過失
直進車の著しい過失及び重過失は、上記ⅰのとおりです。 右折車については、直進車との間に障害物がなく、右折車がわずかに前方を注意すれば直進車の速度から見て進入を認識できるのにそれをしなかったという場合には、20%の修正が適用されます。 右折車に先行・並進右折車があって、直進車の認識が容易でない場合には、この修正はなされません。

エ 直進車の重過失           +10%

オ 右折車の合図なし          -10%

カ 右折車の著しい過失・重過失  -10~20%

(2)対向車同士の事故(センターオーバー)

同一道路を対向方向から直進している車両同士の衝突事故の場合です。

車両は、道路の左側部分を通行しなければならず(道路交通法17条4項)、また、原則として道路の左側によって通行しなければなりません(同報18条1項)。

左側部分通行は、運転者にとって、信号表示に従うことと同じく最も基本的なルールであるため、センターオーバーの事故は、原則としてセンターオーバーした車両の一方的過失というべきであり、過失割合は0:100が基本です。

ただし、以下の修正要素がある場合には、左側部分通行車の過失割合が修正されることになります。

ア 左側部分通行車の著しい過失           +10%

イ 左側部分通行車の重過失             +20%

ウ センターオーバー車が他車追越中の場合
かつ
・左側部分通行車に15km以上の速度違反     +10%
・左側部分通行車に30km以上の速度違反     +20%

エ センターオーバー車の速度違反       -10~20%

オ センターオーバー車の追越禁止場所での追越し   -10%

カ センターオーバー車の著しい過失         -10%
※著しい過失及び重過失
著しい過失及び重過失は、基本的には上記ⅰのとおりです。
その他に、左側部分通行車の著しい過失の例としては、センターオーバー車を発見した後、通路を左に変更し、あるいは遅滞なく制動すれば容易に衝突を回避することができたにもかかわらず、センターオーバー車が早晩自車線内に戻るであろうと軽信したため、あるいは、前方不注視のため、回避措置をとることができなかった場合などです。
また、この前方不注視の経過時間が長い場合などは、重過失として評価されます。

キ センターオーバー車の重過失           -20%
※センターオーバー車が他車追越中の場合
追越しの場合、対向車の速度を正確に把握することが基本となりますが、実際にはその把握は困難であるため、対向車の速度違反が重要な意義を持つと考えられ、修正要素が加わっています。

※追越禁止場所
追越禁止場所は以下のとおりです。
①道路標識等により追越禁止に指定された場所、
②道路の曲がりかど付近
③上り坂の頂上付近
④勾配の急な下り坂
⑤トンネル(車両通行帯の設けられた道路を除く)
⑥交差点(優先道路の場合を除く)
⑦踏切
⑧横断歩道及び自転車横断帯
⑨交差点、踏切、横断歩道又は自転車横断対の手前側端から前に30m以内の部分

(3)駐停車車両に対する追突事故

ここでは、駐停車車両が非常点滅灯(ハザードランプ)等を灯火したり、三角反射板等を設置したりするなどして、駐停車車両の存在を警告する措置をとっていることを前提としています。

基本的には、駐停車している被追突車は回避することができないため、過失割合は0:100となります。

ただし、以下の修正要素がある場合には、追突車の過失割合が修正されることになります。

ア 被追突車の退避不能           +10%
※被追突車の退避不能
やむを得ず駐停車する場合には、道路の左側端に駐停車すべきであり、走行車線上で運転することができなくなった場合には、速やかに車両を走行車線以外の場所に移動させるべきです。
しかし、退避することが物理上又は事実上不可能な場合には、対比しなかったことをもって被追突車を非難することはできず、過失割合が修正されます。
イ 追突車の15km以上の速度違反      +10%ウ 追突車の30km以上の速度違反      +20%

エ 追突車の著しい過失           +10%

オ 追突車の重過失             +20%

カ 視認不良                -10%
※視認不良
降雨、濃霧、夜間で街灯がなく暗い所等の理由により視認が不良の場合をいいます。

キ 駐停車禁止場所             -10%

ク 被追突車の非常点滅灯等の不灯火等 -10~20%
※非常点滅灯等の不灯火等
非常点滅灯等が点灯されていれば、追突車から被追突車の発見が容易となります。基本の過失割合は、被追突車が非常点滅灯等の灯火等の警告措置をとっていることを前提としているため、被追突車が非常点滅灯等の灯火等の措置を怠っている場合には、追突車に10~20%の減算修正がなされます。

ケ 被追突車の駐停車方法不適切    -10~20%
※駐停車方法不適切
駐停車するときは道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければなりません(道路交通法47条1項、2項)。道路幅が狭い所、追越車線、幹線道路等の交通量が多い地点に駐停車した場合には、他の交通の妨害となり、事故発生の危険を高めることになり、過失割合が修正されます。

コ 被追突車の著しい過失          -10%

サ 被追突車の重過失            -20%

まとめ

ここでは、四輪者同士の事故で過失割合が0:100になるものついてお話しました。

もっとも、「過失割合0:100の交通事故~過失割合と修正要素~その1」でもお話したように、事故状況は様々であり、加算要素もあれば減算要素もあります。

過失割合は損害額に大きく影響するものですので注意が必要です。

過失割合に納得がいかない場合、適切なものか判断に迷う場合など、過失割合などでお困りの際には、是非当事務所にご相談ください。

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