非接触事故による急ブレーキでむちうちになった場合の対処法と注意点

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。

「非接触事故でむちうちになったら賠償金を請求できるのか」
「急ブレーキで非接触事故の場合は、どう対応したらいいのか」

急ブレーキが原因による非接触事故でむちうちになった方の中には、相手方に賠償金を請求できるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、非接触事故によってむちうちになった場合の対処法についてご紹介します。

1.非接触事故とは

非接触事故とは、相手方の危険行為が原因によって発生する当事者同士の物理的衝突のない事故のことです。

主に以下の3つの類型に分類することができます。

  1. 回避のために壁やガードレール等とぶつかる
  2. 二輪車で回避のために転倒
  3. 急ブレーキによる衝撃で受傷

非接触事故は、加害者と被害者の状況が見えづらいため、紛争になることがあります。

中でも③の急ブレーキによる衝撃で受傷した場合が、加害者と揉めるケースとして多いです。

直接的な接触がなく、両者の意見が平行線をたどることはよくあるので、交渉を有利に進めるためにもしっかり対策をしておきましょう。

また、直接的な衝撃を受けていなくても、急ブレーキによる衝撃によりむちうちになる場合があります。

以下のような症状が出ている方は、むちうちの可能性があるので、なるべく速やかに病院で検査を受けましょう。

  • 首の痛み、しびれ
  • 首の運動制限
  • 上肢の痛み、しびれ
  • 上肢の知覚障害、握力低下
  • 頭痛
  • めまい、ふらつき感
  • 吐き気
  • 耳鳴り
  • 眼のちらつき、かすみ、眼精疲労
  • 倦怠感 等々

2.急ブレーキによる非接触事故でむちうちになった場合

急ブレーキによる非接触事故でむちうちになった場合に、押さえておくべきポイントがいくつかあります。

特に知識として知っておくべき点は以下の3つです。

  1. むちうちの症状が出れば人身事故扱いになる
  2. 非接触事故でも相手方に慰謝料等を請求できる
  3. むちうちの症状が出なければ刑事責任はない

順にご説明します。

(1)むちうちの症状が出れば人身事故扱いになる

一つ目のポイントは、非接触事故でもむちうちの症状が出れば、人身事故扱いになる点です。

「人身事故=衝突事故」のようなイメージを持っている方もいるかもしれませんが、当事者のどちらかに身体的外傷があれば、人身事故になります。

何ごともなければ、その場で解散していることが多く、また物に衝突している場合は、物損事故として処理されているケースが多いので、警察に届け出をして人身事故に切り替えてもらいましょう。

(2)非接触事故でも相手方に慰謝料等を請求できる

非接触だったとしても傷害結果が生じた場合には、相手方に慰謝料等を請求できるようになります。

急ブレーキによってむちうちになった場合、衝突事故と同様に治療に関する費用をはじめ、様々な費用を請求することが可能です。

交渉の際に適切な金額を請求するためにも、領収書は全て残しておきましょう。

(3)むちうちの症状が出なければ刑事責任はない

非接触事故に関しては、むちうちの症状が出なければ相手方に刑事責任はない点を押さえておきましょう。

接触がないため、そもそも事故として処理されるためには、被害者が受傷していることが求められます。

急ブレーキが間に合って接触を避けることができ、特に何も症状が出ていなければ、事故にはならないので、相手方に対して損害賠償を求めることはできません。

3.非接触事故で請求できる費用

非接触事故で、むちうちになった場合に相手方に請求できる費用についてご紹介します。

主な請求内容は以下のとおりです。

  • 治療関係費
  • 通院交通費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料

人身事故になれば、治療費や通院のための交通費、休業した場合の損失、治療にかかる精神的苦痛への補償などを請求することができます。

具体的な内容に関しては以下の記事にまとめているので、あわせてご参照ください。

むちうちになったときの示談金の金額は?請求できる費用と交渉時の注意点

4.非接触事故に巻き込まれたときの注意点

非接触事故に巻き込まれたときにいくつか注意しなければならないことがあります。

主な注意点は以下の3つです。

  1. 相手に逃げられないようにする
  2. 症状が出たらすぐに通院する
  3. 過失割合の争いに備える

接触事故に比べると、事故の状況判断が難しいです。

何もせずに後悔することもあるので、適切に対処するようにしましょう。

(1)相手に逃げられないようにする

まずは、後からむちうちの症状が出たときに連絡を取れるように、相手方を呼び止めて連絡先の交換をしておきましょう。

また、非接触事故でも警察に連絡しておくことが大切です。

たとえ衝突事故していなくても現場の安全確保のために、警察への通報は義務付けられています。

警察に連絡することで、後に損害賠償請求や保険金請求をする際に必要な交通事故証明書を発行してもらうことが可能です。

むちうちは事故から数日経過した後に生じることが多いため、連絡先を交換していなければ、示談交渉をすることができなくなります。

連絡先を記録して相手に逃げられないようにしておきましょう。

(2)症状が出たらすぐに通院する

非接触事故の場合、症状が出ないケースもありますが、一定期間経過して何らかの症状が出る場合もあります。

そのときは、様子を見ることはせずに、すぐに通院して診察をを受けましょう。

事故直後は興奮状態になっており、異常に気づいていない場合も否定できません。

早期検査によって重症化を防ぐことにも繋がります。

なお、検査までが早ければ、怪我と非接触事故との関連性を医学的に立証しやすくなるので、むちうち等の症状が出たときにスムーズに示談交渉を行うことが可能です。

上手く示談交渉を進める上でも速やかに精密検査を受けておきましょう。

(3)過失割合の争いに備える

非接触事故は事故状況があいまいになりやすく、加害者側と過失割合の争いに発展する可能性が高いため、交渉の準備をしておくことが大切です。

基本的に非接触事故は、むちうち等の症状が発生していても、被害者側にも一定の過失が認められるケースが多々あります。

たとえば、車間距離を適切に保っていたり、安全確認を徹底していたりすれば、たとえ前方車が急ブレーキをしても難なく対応できた可能性があるからです。

そのため、少しでも有利な過失割合になるように、客観的な状況証拠として有力なドライブレコーダーの映像は残しておきましょう。

また、交渉を有利に進めるためにも、事前に弁護士に相談しておくことをおすすめします。

事故当時の状況証拠が揃っていれば、弁護士も交渉を進めやすいため、客観的な証拠は一通り確認しておきましょう。

まとめ

急ブレーキによる非接触事故でむちうちになった場合は、人身事故扱いになるので、相手方に慰謝料等を請求することができます。

ただし、むちうちの症状が出るまでは相手方に刑事責任は発生しません。

また、むちうちが生じるのは事故から数日経過している場合が多いので、連絡先を交換していなければ、後日慰謝料等を請求できなくなります。

事故直後に適切に対応しなければ、後日むちうちの症状が発生しても泣き寝入りをすることになる可能性があるので、今回ご紹介した注意点は意識しておきましょう。

もし非接触事故の対応で困った場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で受け付けておりますので、非接触事故に巻き込まれて困っている方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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