個人再生のための要件とは?弁護士が解説!押さえておきたい様々な要件

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
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「個人再生手続を利用して借金の返済額を減らしたい」
「個人再生手続を利用するための必要な要件が知りたい」

借金を抱えて返済にお困りの方の中には、債務整理の利用を検討している方もいらっしゃると思います。

中でも、個人再生に関してこのようなお悩みや疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

個人再生手続には、小規模個人再生と給与所得者個人再生の2つのパターンがあり、手続の利用にあたって、それぞれが異なる要件を持っています。

また、個人再生手続の中でも、開始や認可、住宅資金特別条項(いわゆる「住宅ローン特則」)の利用など、場面によって様々な要件が設けられています。

本記事では、個人再生手続の概要や種類、手続進行の各種場面で必要とされる要件などについてご説明します。

1.個人再生とは?

個人再生は、債務整理の手続の一つです。

以下では、個人再生手続の概要や種類について解説します。

(1)個人再生手続の概要

個人再生は、返済が困難であることを裁判所に申し立て、借金の減額を図る手続です。

これが裁判所に認められると、債務者は減額された借金を原則3年にわたって返済していくことになります。

同じく債務整理の手続である任意整理と比較すると、借金の元本を圧縮して返済額を大幅に減額できることから、より負担を軽減することができる手続といえます。

(2)個人再生手続の種類

個人再生手続では、利用する主体によって次の区分があります。

  1. 給与所得者個人再生
  2. 小規模個人再生

順にご説明します。

#1:給与所得者個人再生

主として、会社員などの安定した収入を得ている人が対象となる手続です。

後述するように、債権者の同意がなくとも手続を進められる点にメリットがありますが、手続の利用にあたっては満たすべき要件が細かく設定されています。

そのため、会社員などの安定した収入を得ている人であっても、小規模個人再生を利用する場合が少なくありません。

#2:小規模個人再生

主として、個人で事業を営んで収入を得ている人が対象となる手続です。

再生計画案に対して、債権者の過半数の同意が得られない場合には、手続は廃止(中止)となるところに特徴があります。

また、給与所得者個人再生と比べると借金の減額幅が大きくなる傾向にあり、最大で10分の1まで減額されます。

2.個人再生手続開始のための要件

個人再生がおすすめな人の特徴

個人再生手続は、裁判所への申立によって開始します。

以下では、手続を裁判所へ申し立てるための要件について解説します。

(1)小規模個人再生・給与所得者個人再生

以下では、小規模個人再生と給与所得者個人再生の双方に関する要件について解説します。

#1:借金総額(住宅ローンを除く)が5000万円未満であること

個人再生は、企業などが利用する債務整理手続である民事再生手続を個人の場合にまで適用するために、制度や手続の一部を簡略化したものです。

そのため、住宅ローンを除いた借金総額が5000万円を超えるような大規模な債務整理については、個人再生手続では対応できません。

個人再生手続の利用を検討する際には、借金総額がいくらなのか事前に把握しておく必要があります。

この点に関しては、弁護士に事前に相談・確認することをおすすめします。

#2:将来の収入見込みが継続的または反復的にあること

個人再生手続が認可された後には、原則3年にわたって減額された借金を安定的に返済していく必要があります。

そのため、現在だけでなく将来にわたって継続的または反復的に収入を得る見込みがあることが、手続開始を裁判所に申し立てる前提となります。

#3:債務者に支払不能の生ずるおそれがあること

個人再生手続を利用するに当たっては、債務者に支払不能や債務超過の事情が発生していることが要件となります。

具体的には、契約内容に従った返済を行うことが困難なほど借金額が多額であることです。

個人再生手続は、債権者の正当な権利を制限して借金額を大幅に減額する手続であるため、債務者側にはそれを正当化できるような事情が求められます。

そのため、借金がある場合でも、家計のやりくりをすれば生活に支障なく返済が行えるような場合には、個人再生を申し立てることができません。

#4:過去7年間に免責または再生計画の認可決定・ハードシップ免責を受けていないこと

この要件は給与所得者個人再生に特有の要件です。

一定の期間内で過去に個人再生手続やハードシップ免責を利用して借金の減額や免除を受けたことがある場合には、債権者への返済が果たされない可能性があります。

そのため、過去一定期間においてそのような事情がないことが求められます。

(2)住宅資金特別条項を利用するための要件

個人再生手続では、住宅資金特別条項(いわゆる「住宅ローン特則」)を利用すると、住んでいる住宅を手放すことなく債務整理を行うことができます。

この点が、一定の財産を除いたすべての財産を処分される自己破産とは異なる、個人再生特有のメリットであるといえます。

また、住宅ローンについては個人再生手続の認可後もこれまでの契約どおりに返済していくことができます。

以下では、この住宅資金特別条項を利用するための要件について見ていきましょう。

#1:住宅ローンの借入であること

借入が住宅ローンのためのものであることが大前提です。

例えば、住宅の購入や建設・改良を目的とした借入であれば、住宅ローンとしての借入として認められます。

一方、フリーローンなど、他の債権や住宅の購入や建設・改良以外の用途で借入を行ったものについては、住宅資金特別条項の対象外となるので、注意が必要です。

#2:債務者が居住用に所有する住宅であること

住宅資金特別条項が適用されるためには、債務者が自ら所有している居住用の住宅であることも要件となります。

この居住用という意義は、床面積の2分の1以上が居住用とされていて、現実に居住の実態があるものを指します。

そのため、事業用や投資目的の不動産については、適用対象外となります。

なお、住宅を債務者が配偶者などと共同所有している場合であっても、所有名義人に債務者が含まれていれば、住宅資金特別条項を利用することができます。

#3:住宅を他の借入の担保としていないこと

住宅ローンを借り入れる際には、住宅などの不動産に抵当権を設定する場合がほとんどです。

しかし、住宅に住宅ローン以外の債権を担保するための抵当権が設定されている場合、原則として住宅資金特別条項を利用することはできません。

住宅ローン以外の債権の債権者が抵当権の実行を申し立てた場合、住宅について競売手続が進行してしまうため、住宅を手元に残すことができなくなってしまうからです。

#4:滞納後の代位弁済後6か月以内に再生手続開始の申立をしていること

借金の支払いについて、保証会社などから代位弁済がなされている場合には、その代位弁済の日から6か月以内に個人再生を申し立てることが必要です。

なお、個人再生手続の申立てには申立書などの書類のほか、債務者の財産や債権者についてもまとめた資料が必要となります。

そのため、住宅資金特別条項を利用する際には、早期の準備や対応が必要となることにも注意が必要です。

住宅資金特別条項の利用に当たっては、必ず弁護士に相談・確認をしておくことがよいでしょう。

3.個人再生手続認可のための要件

個人再生手続を裁判所に申し立てたことによって、そのまま手続が認可されるわけではありません。

具体的には、以下の要件を満たして、はじめて手続が認可され、返済計画が開始されます。

(1)再生計画案が期日までに提出されていること

個人再生を裁判所に申し立てた後には、弁護士と協議の上、再生計画案を提出する必要があります。

これは、借金の返済総額や返済方法、返済期間などについて記載したものであり、通常は申立てから3~4か月後に提出期限が設定されます。

この提出期限を1日でも過ぎてしまうと、廃止(手続の中止)となってしまうため、必ず期限までに提出することが求められます。

(2)再生計画の内容が適切に定められていること

再生計画案の内容は、民事再生法で定める基準に従っていることが必要です。

具体的には、以下のようなことが求められます。

  • 不備を補正できないような法律違反がないこと
  • 再生計画を遂行できる見込みがあること
  • 再生計画の決議が不正な方法によって成立したものでないこと
  • 債権者一般の利益を害するものではないこと

とくに、債権者を平等に扱うべきであるとする「債権者平等の原則」との関係から、特定の債権者のみを優遇する内容になっていないかも重要な要素であるといえます。

(3)再生計画案が実行できる見込みがあること

提出された再生計画案の内容が現実に実行見込みがあることも要求されます。

そのため、再生計画案に遂行の見込みがないと裁判所に判断されれば、不認可となって手続が終了します。

遂行の見込みについては、債務者が個人再生の申立ての際に提出する家計収支表の内容をもとに判断されます。

収入が少なかったり、返済に充てる金額よりも生活費の方が上回るような内容であったりすれば、返済の可能性について疑われることにもなります。

そのため、家計収支表の作成に当たっては、弁護士のアドバイスなどを受けながら適切な内容で進めていく必要があります。

(4)最低返済額の要件を満たしていること

個人再生手続では、借金総額に応じて最低限返済すべき金額が定められています。

具体的には、以下のような基準が設けられています。

借金総額 最低返済額
100万円未満 全額
100万円~500万円未満 100万円
500万円~1500万円未満 借金総額の5分の1
1500万円~3000万円未満 300万円
3000万円~5000万円未満 借金総額の10分の1

また、これとは別に、債務者が高額な財産を有している場合には、清算価値保障原則という考えに従って最低返済額が定められます。

詳しくは、以下の記事をご参照ください。

清算価値保障原則とは?弁護士が伝えたい個人再生の留意点

 

(5)債権者の過半数の同意を得ていること

この要件は、小規模個人再生に特有の要件です。

債権者は、提出された再生計画案に対して反対(不同意)することができます。

債権者の過半数が再生計画に反対(不同意)した場合、あるいは反対(不同意)を表明した債権者の債権額が借金総額の過半数を超える場合には、手続は廃止(中止)となります。

まとめ

本記事では債務整理の手続である個人再生手続について、手続開始のための要件、住宅資金特別条項を利用するための要件、再生計画認可のための要件についてご説明しました。

個人再生手続には裁判所とのやりとりを含めて、その手続の要所では複雑な要件や高度な専門知識、実務経験が必要とされます。

債務整理の利用や個人再生手続の申立でお悩みの方は、まずは弁護士へ相談してみることをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの個人再生の問題に対応してきました。

経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、ご検討の方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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