個人再生と滞納している税金等(公租公課)について

個人再生と滞納している税金等(公租公課)について

私(Aさん)は、個人事業主として自営業を営んでいますが、毎月の銀行への返済、固定費の支払があり、今のままでは事業の継続が困難です。

住宅ローン支払中の住宅があるし、事業の継続もしたいので、破産ではなく個人再生手続の利用を考えています。

ただ、私には、上記負債の他に税金などの滞納もあります。

内訳としては、所得税が60万円、住民税が70万円、国民健康保険料は50万円の滞納があります。

これらの税金などを支払わなければならないのでしょうか。

税金なども他の負債と同様、圧縮されませんか。

個人再生手続を申し立てるにあたって、この滞納している税金は何か問題になったりしませんか。

(1)公租公課は、手続と関係なく返済しなければならないのか

所得税、住民税、固定資産税、健康保険料などの国や地方公共団体に治めなければならないものを総称して公租公課といいます。

この公租公課は、再生手続上、優先的な債権(この債権を「一般優先債権」といいます)。として取り扱われています。

一般優先債権として取り扱われると、再生手続と関係なく支払をしなければなりません。また、再生手続によって圧縮をうけることもありません。

さらに、公租公課の場合、滞納処分(強制的な財産の差押等)がされる可能性もあります。

この滞納処分は、再生手続が開始されることによって、手続が中止になったり、取り消しなることもありません。

このように公租公課は、手続と関係なく返済しなければならないのです。

また、他の負債と異なり圧縮されることもありません。

(2)滞納している公租公課がある場合、再生計画への影響はあるのか

滞納している公租公課は、上記のとおり再生手続に関係なく、支払わなければなりません。

滞納している公租公課がある場合には、滞納処分がなされてしまえば、個人再生手続の中で決めたスケジュール通り(「再生計画」といいます)の返済をすることが困難となってしまうことも予想されます。

分かりにくいかも知れないので具体例を挙げます。

個人再生手続とは、簡単に言うと、もともとある負債を5分の1にして、それを3年間で返済していく手続です。

Aさんの負債が540万円とすると、それを5分の1に圧縮した金額である108万円を返済していくことになります。

3年で108万円を返済するので、36ヶ月で割った3万円を毎月返済する再生計画を作成することになるのが通常です。

Aさんの家計をみると、生活費をのぞいて毎月6万円は確実に余剰がでそうです。

その場合、再生計画に基づいて継続的に返済できるように思えます。

しかし、Aさんは180万円の滞納公租公課があるため、180万円について再生計画とは別に支払わなければなりません。

一度に、滞納処分をかけられ差押を受けても、再生計画通りに返済することは難しいです。

また、180万円を仮に3年で支払をしていくとしても、毎月5万円返済していかなければなりません。

毎月の余剰が6万円ですから、再生計画で返済する3万円と税金で毎月5万円の支払いでは毎月2万円の赤字が出ます。

結論として、やはり再生計画通りの返済をすることが困難ということになります。

このように、滞納している公租公課がある場合には、再生計画に影響が出てくることがあります。

(3)再生計画に影響がないようにする対策は?

(1)弁済が可能であれば、できるだけ早い段階に支払っておくのが望ましいです。

しかし、そもそも、弁済をすることができない場合には、また弁済しても多額の滞納公租公課が残ってしまう場合もあります。

その場合、滞納している公租公課の返済を考慮して、スケジュールどおり返済を継続していくことが可能な再生計画を作成する必要があります。

なお、返済を継続していくことが可能である再生計画を作成するのが難しい場合には、再生計画手続が途中で終了(手続が途中で終了することを「手続の廃止」といいます。)してしまうこともあり得るので注意が必要です。

そこで、公租公課の支払を求めている国や地方公共団体とあらかじめ期限を猶予してもらうことや長期の分割協議を行った上で、再生計画案を作成しなければなりません。

また、国民健康保険料や国民年金等については、減免や猶予制度の制度があります。

減免や猶予制度をすでに利用している場合は多いですが、利用されていない場合にはできるだけ早く利用し、実現可能な再生計画を作成すべきでしょう。

(2)で挙げた具体例でいうと、国民健康保険を減免することや猶予制度の利用をすること、毎月の返済額を再生計画で返済する金額と合わせて6万円以下にするよう国や地方公共団体と協議する必要があります。

なお、滞納している公租公課がある場合、実務上は必要に応じて、国や地方公共団体との協議内容等を踏まえた陳述書や報告書を裁判所に提出して、滞納している公租公課が再生計画を作成する際に、支障がないことを示しています。

まとめ

以上みてきたとおり、公租公課の滞納がある場合、その額によっては再生手続に影響することが十分にありえます。

その場合、とるべき対策は具体的な事案によって様々です。

具体的な場合にどのように対処していくべきかについては、弁護士に相談することをおすすめします。