破産をした場合の生命保険やゴルフ会員権の取り扱いについて

破産をした場合、破産者に財産があると、財産を金銭に換えた上で、債権者に配当することになります。

現金であれば、金額も明確ですし、そのまま配当することができます。

もっとも、解約返戻金のある生命保険やゴルフ会員権については、価値が不明確ですし、また、そのままでは債権者へ配当することができません。

そのため、実務上は、破産の申立をする前に生命保険やゴルフ会員権にどれくらいの価値があるかを査定し、配当にまわせる額を把握する必要があるとされています。

それでは、生命保険やゴルフ会員権について、破産の申立前にどのようなことを調査していくのでしょうか。

以下では、生命保険とゴルフ会員権に分けて、具体的な調査内容を説明していくことにします。

1.生命保険について

まず、申立に至る前にすべき調査内容と破産管財人(裁判所からの選任され破産者の財産を管理する仕事する者)への引継ぎ事項について説明していきましょう。

(1)申立に至る前にすべき具体的調査内容

#1:生命保険の種類・内容の調査

破産者の保険の種類や内容は、申立時に書面にして裁判所に提出する必要があります。

そのため、保険証券や保険約款を確認して、生命保険の種類・内容を把握する必要があります。

#2:解約返戻金額の調査

保険会社に解約返戻金額を照会して、金額を把握します。

保険会社から定期的に送られてくる書面で解約返戻金の見込み額が分かることもあります。

#3:解約返戻金や満期返戻金請求権が担保に出されていないかの調査

解約返戻金や満期返戻金請求権に対しては質権が設定されている場合があります。

この場合、破産手続をしたとしても、質権を有している者が、解約返戻金や満期返戻金を回収する権利をもっていることになります。

債権者に対してどれくらいの額を配当にまわすことができるかを確認するために、解約返戻金や満期返戻金に対して質権が設定されているかどうか確認することが必要なのです。

#4:契約者貸付の有無および額の調査

保険会社が契約者貸付を行っている場合、解約返戻金や満期保険金の支払時に契約者貸付金と相殺されることになります。

そのため、契約者貸付を行っているのか、また、行なっている場合には、その額を調査しておくことが、現実の解約返戻金を把握するために必要なのです。

なお、貸付がされている場合、貸付金の利息の負担を回避するためにも、申立段階で早期に解約することが必要です。

#5:破産者の保険契約継続の意思確認と保険契約を引き受ける者の選定

破産者の年齢、健康状態等により現存する保険契約を解約してしまうと、新たに保険に入ることができない場合があります。

その場合、破産者としては、保険契約の存続をしておきたいということもあるでしょう。

保険契約の存続をしておくための方法としては、契約者の名義を変更することにはなりますが、破産者の親族等が、解約返戻金相当額を破産管財人に支払うことにより、保険の契約者名義変更をしながらも、保険契約を継続することができます。

そのため、破産者としては、保険契約を継続したいかどうかについての検討と、継続するのであれば、解約返戻金相当額を一体誰が支払うかなどを申立代理人に伝え、破産管財人への提案する準備を行なう必要があります。

上記保険証券、保険約款、解約返戻金額について保険会社の回答書は、一覧表に整理して破産管財人に引き継ぐことになります。

また、継続の必要のない保険契約であれば、保険料の負担を回避するために、破産の申立をする前に解約手続を行い、解約返戻金を受領して、破産管財人に引き継ぐことも検討することになります。

(2)取り扱いについて

上記引継ぎを踏まえて、破産管財には保険を価値に換えることになります。

生命保険を価値に変える方法としては、保険の契約を解約して、その解約返戻金を破産財団に組み入れる方法があります。

すでに満期が到来している、あるいは直近に到来する場合には、解約をするのではなく、満期保険金を破産財団に組み入れることもあります。

なお、東京地裁では原則として20万円以下の保険解約返戻金については、配当に回す必要のない財産(自由財産)と考えられています。

2.ゴルフ会員権について

(1)申立に至る前にすべき具体的調査内容と破産管財人への引継ぎ

まず、生命保険と同様に、申立に至る前にすべき調査内容と破産管財人への引継ぎ事項について説明していきましょう。

#1:ゴルフ会員権の内容を把握

ゴルフ会員権の内容を把握するために、ゴルフ会員権証書や定款・会則を入手する必要があります。

会員権が譲渡可能かどうか、預託金の返還請求権の有無および額や返還時期、年会費支払義務の有無やその額を把握しておく必要があります。

#2:年会費支払義務がある場合の支払状況の把握

年会費支払義務がある場合、債務者からの事情聴取や請求書の有無を把握するなどして、年会費の未払いがあるかどうか、あるとしたら、その額はいくらであるのかを把握する必要があります。

また、新たな年会費の負担を回避するため、場合によっては退会手続を行なうことも検討します。

#3:ゴルフ会員権の取引状況の調査

会員権が譲渡可能な場合、取引相場の有無および額、名義書換停止かどうかを調査します。

#4:預託金返還請求

ゴルフ場に預けたお金を返してもらえる時期(預託金返還時期)がすでに到来している場合、退会手続をして、年会費の発生を止めるとともに預託金の早期回収の手続を進め、預託金を破産管財人に引き継ぐことも検討します。

なお、ゴルフ場経営社には、会社更生手続、民事再生手続、さらには破産手続の適用を受けている会社もあり、預託金返還請求権が無価値となっている場合もあるので、倒産に関する情報が必要な場合があります。

上記ゴルフ会員権について調査した内容は、保険契約の場合と同様、一覧表に整理して破産管財人に引き継ぐことになります。

(2)取り扱いについて

上記引継ぎを踏まえて、破産管財にはゴルフ会員権を価値に換えることになります。

具体的にいうと、ゴルフ会員権は、会員権自体を売却してその代金を破産財団に組み入れるか、預託金返還請求権がある場合には、退会して預託金の返還を受けて破産財団に組み入れることになります。

他方で、譲渡禁止のもの、預託金返還請求権のないものは、換価価値がないので、破産管財には破産財団から放棄することになります。

このように生命保険契約やゴルフ会員権については、調査しなければならない事項が多くあります。

これは、生命保険契約及びゴルフ会員権には財産的に価値があり、債権者に対して配当に回すことができる重要な財産である以上、やむを得ないといえるでしょう。

なお、上記では一般的な保険契約やゴルフ会員権についての調査内容等について説明してきましたが、具体的な場合についてどのような調査をなすべきか、また、どのように取り扱われることになるかはケースバイケースで判断が難しいこともあるでしょう。そのため、詳細については、弁護士に相談をすることをおすすめします。