法人破産を行うと銀行口座はどうなる?手続における扱いや注意点について解説
「法人破産で法人名義の銀行口座はどうなる?」
「法人の財産に預貯金が含まれている場合にはどのような対応が必要か知りたい」
法人、会社の代表者の中には、法人破産における銀行口座の取り扱いについて、このような疑問をお持ちの方もいると思います。
法人破産の手続では、法人が所有するすべての財産が換価され、債権者に配当されます。
そして、法人名義の預貯金がある場合には、預貯金も換価処分の対象となり、手続の中で債権者に配当されることになります。
もっとも、法人名義の口座にある預貯金は、債権者に配当するための主要な財産となるため、手続を進めるうえで注意すべきポイントも多いです。
本記事では、法人破産における銀行口座の取り扱いや対応の注意点について解説します。
法人破産の手続の流れについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
1.法人破産における銀行口座の取り扱い

法人破産の手続を進めると、法人名義の銀行口座は凍結されてしまう可能性が高いです。
これは、債権者である金融機関が法人に対して有する貸付金などの債権と預金を相殺して回収を図るからです。
法人破産は複雑な手続であり、専門的な知識や実務経験が求められることから、弁護士に依頼して進めることが一般的です。
そして、弁護士が手続を受任すると、金融機関をはじめとする債権者に対して受任通知と呼ばれる書面を送付します。
受任通知を受け取った金融機関は、法人に対して有する債権を保全・回収することを目的に法人名義の口座を凍結します。
口座が凍結されてしまうと、凍結が解除されるまでは入金も出金もできなくなります。
特に売掛金の入金口座や従業員への給与の支払口座が凍結されてしまうと、その金融機関が有する貸付金債権などと相殺されてしまい、法人の財産が流出する事態になりかねません。
また、従業員への給与の支払いができなくなると、従業員の生活にも影響が生じるリスクがあり、適切な対応が求められます。
そのため、法人の負債や財産状況などを踏まえた上で、受任通知を送付する前に法人名義の口座からお金を全額引き出す場合や受任通知自体を送付しない場合もあります。
なお、受任通知を送付しない場合には、法人破産の申立てから数日以内に裁判所によって法人名義のすべての口座が凍結されます。
これは、法人の財産が流出することを防ぐ「保全処分」に基づく凍結であり、金融機関が独自に行う口座凍結とは異なる目的で行われます。
受任通知の送付も含め、どのような方法によって法人の財産の流出を防止するかは、手続を依頼した弁護士が検討・判断する事柄です。
代表者が自己判断で法人名義の口座から多額のお金を引き出した場合には、財産隠しなどを疑われてしまい、法人破産の手続に重大な影響を及ぼす可能性もあります。
法人名義の口座の取り扱いについては、必ず弁護士に相談・確認の上で対応を進めるようにしましょう。
法人破産における受任通知の役割や注意すべきポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
2.法人破産における銀行口座に関する注意点

法人名義の預貯金は、法人が取引先に対して有する売掛金債権などと同様に重要な財産です。
そのため、法人破産を行うことを代表者が決意した場合には、財産の流出を防止するために法人名義の預貯金口座をすべて把握した上で、依頼をする弁護士に申告し、通帳や印鑑なども弁護士に預けることが求められます。
また、法人の銀行口座については、以下の点にも注意を払う必要があります。
- 破産手続を裁判所に申立する前でも口座が凍結される可能性がある
- 代表者個人の口座が凍結される場合もある
- 引き出した預金は適切に管理する
順にご説明します。
(1)破産手続を裁判所に申立する前でも口座が凍結される可能性がある
法人名義の銀行口座は、法人破産の申立とは無関係に凍結される可能性があります。
例えば、資金繰りが悪化し、金融機関が貸付金などの回収に疑念を持った場合には、口座が凍結されるリスクがあります。
また、取引先などのほかの債権者に対して買掛金の支払いが長期間にわたって滞っている場合には、その取引先から仮差押えなどの措置をとられることもあるでしょう。
特に法人破産の準備中に口座が凍結された場合には、破産手続費用の工面などに困る事態が生じる可能性もあるため、注意が必要です。
法人破産を申し立てる際に必要な費用の項目や金額の相場については、以下の記事もご覧ください。
(2)代表者個人の口座が凍結される場合もある
代表者個人の銀行口座は、法人破産の手続とは無関係です。
そのため、法人の破産手続きを進めたとしても、原則として代表者の口座が凍結されることはありません。
しかし、代表者が法人の債務について連帯保証人となっている場合には、注意が必要です。
代表者が連帯保証人になっていて、法人名義の口座と代表者個人の口座を同じ金融機関で開設している場合には、その金融機関が法人破産の事実を知ったときに代表者の口座も連動して凍結される可能性があります。
なお、代表者が法人の債務について連帯保証人となっている場合には、代表者個人も法人破産と一緒に自己破産を行うことを検討した方がよい場合も多いです。
法人破産と代表者の責任については、以下の記事もあわせてご覧ください。
(3)引き出した預金は適切に管理する
法人破産の手続では特定の債権者のみに返済を行うことは禁止されますが、従業員への給与の支払いについては例外的な取り扱いがされています。
具体的には、従業員に対する一定期間の未払いの給与や退職金は「労働債権」として法的に保護されており、優先的に支払っても問題はありません。
そのため、口座が凍結されることに備えて、従業員への給与の支払いのために一定の金額をあらかじめ引き出しておくことも検討しましょう。
しかし、引き出したお金は従業員の給与支払いのみに使い、取引先などへの返済にあててはいけません。
使途不明のお金が生じた場合には、財産隠しを疑われることもあり、場合によっては刑罰を科されるリスクもあります。
そのようなリスクを回避するためには、法人名義の口座から引き出した預金は適切に管理することが重要です。
もっとも、破産手続を進めるにあたって、法人の多額のお金を動かしてしまうと財産隠しなどと疑われるリスクもあるため、対応については弁護士に相談・確認するべきでしょう。
法人破産における従業員の給与の支払いや破産手続における配当の優先順位などについては、以下の記事が参考になります。
3.法人破産について弁護士に相談するメリット

法人破産では、法人の財産の管理や債権者への対応などの点で代表者が注意すべきポイントが多くあります。
しかし、法的知識や手続の経験がなければ裁判所などへ適切な対応を進めることは難しいです。
そのため、法人破産を行うことを検討されている場合には、弁護士に相談することがおすすめです。
特に弁護士に相談し、手続を依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- 手続の準備段階から必要なサポートを受けられる
- 書類の作成・収集のサポートを受けられる
- 予納金の負担を抑えられる可能性がある
- 裁判所や債権者の対応を一任できる
それぞれについてご説明します。
(1)手続の準備段階から必要なサポートを受けられる
弁護士に相談することで、手続の準備についてアドバイスやサポートを受けることができます。
法人破産を申し立てるまでには、法人名義の銀行口座への対応をはじめ、さまざまな事前準備が必要です。
しかし、不適切な対応をしてしまうと、法人の財産が流出したり財産隠しを疑われたりするリスクが高まります。
弁護士に相談・依頼することで、そのようなリスクを回避しつつ、申立てを進めていくためのサポートを受けることが可能です。
法人破産の申立てにあたってあらかじめ行うべき事前準備や注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
(2)書類の作成・収集のサポートを受けられる
弁護士に手続を依頼すると、書類作成や資料収集のサポートを受けることもできます。
法人破産では、裁判所に対して申立書面や法人の財産に関する資料などを提出する必要があります。
どのような書類や資料を提出すべきかは手続の経験がなければ正確に判断することは難しいことも多く、不備や不足があれば、訂正や追加提出が求められ、手続の進行が遅れてしまう可能性もあります。
しかし、法人破産に慣れた弁護士に依頼することで、書類作成を一任したり、資料収集のサポートを受けたりすることができるため、不備や不足なく対応を進めることが可能です。
法人破産の申立てに必要な書類や資料については、以下の記事で詳しく解説しています。
(3)予納金の負担を抑えられる可能性がある
法人破産の裁判所費用(予納金)は、債権者数や負債額などによっても変動しますが、50万円程度かかります。
予納金を全額納付することは法人破産を進める上での前提となるため、予納金を捻出できないほど資金繰りが悪化している場合には、法人破産を行うことが難しくなってしまいます。
しかし、弁護士に法人破産を依頼することで、費用負担を抑えられる可能性があります。
これは、弁護士が代理人となることで、少額管財事件という手続に振り分けられる可能性があるからです。
少額管財事件は、法人の財産や債権者数などの規模が比較的小さく、定型的な処理を図ることができるものについて適用されます。
そして、少額管財事件に振り分けられるための要件として、弁護士が代理人として手続を進めていることが挙げられます。
そのため、弁護士に依頼すると、予納金を通常よりも抑えて手続を行うことができる可能性があります。
少額管財事件に振り分けられる要件や注意点については、以下の記事もあわせてご覧ください。
(4)裁判所や債権者の対応を一任できる
法人破産の手続の中では、複数回にわたって裁判所や破産管財人とのやりとりが発生します。
また、債権者集会と呼ばれる期日では、法人の代表者が出席し、債権者から質疑があった場合にはこれに回答する義務を負います。
弁護士に手続を依頼することで、裁判所への対応を一任することができます。
また、債権者対応は代表者が行う必要がありますが、弁護士からあらかじめアドバイスやサポートを受けることができ、適切な対応を進めることが可能です。
債権者集会の概要や代表者が出席する際のポイントについては、以下の記事も参考になります。
まとめ
本記事では、法人破産における銀行口座の取り扱いや対応の注意点などについて解説しました。
法人名義の銀行口座については、弁護士が受任通知を送付し、その金融機関が受け取った時点で口座が凍結される可能性があります。
そのため、受任通知を送付するかどうかを含めて慎重に検討する必要があります。
また、法人としても口座が凍結されてしまうと、従業員への給与の支払いなどで問題が生じることもあるため、申立ての準備段階から弁護士のサポートを受けて適切な対応を進めることが重要です。
法人破産をスムーズに進めるためには、専門知識だけでなく手続の経験も必要とされるため、申立てを検討されている場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの法人破産の手続に対応してきました。
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