外国語学校の破産の特殊性

1.外国語学校の破産の特殊性とは

外国語学校の場合、全国に教室を設置し、生徒数が膨大になる可能性があります。

また、提供している受講コースが多種多様であることが多く、その場合、受講コースにより授業料の割引率が異なることがあり、1回当りの講義の単価を算出することは難しいです。

さらに、債権者の中には、外国人講師が含まれることもあります。

このような事情があるため、外国語学校の破産事件の特殊性は、外国語学校に対する債権の調査が困難という点にあります。

実際に、破産手続を行なった有名なところとしては、平成19年に破産手続を行なったノヴァや平成22年に破産手続を行なったジオスがあります。

2.破産手続開始決定前に注意しなければならないこと

(1)申立費用の確保

破産手続をする場合には、弁護士費用と裁判所に納める予納金(これを「申立費用」といいます。)というものが必要です。

これらは破産する会社の売掛金や預貯金などから、工面することが通常です。

外国語学校の教室は、賃借物件であることが多いため、破産前の外国語学校の主な財産としては、賃借時の差し入れ保証金があります。

もっとも、既に賃料の不払いが発生していたり、明渡し時の原状回復費用を考えると、財産としてわずかということもあり、申立費用として不十分なことがあります。

他方で、破産の原因の究明、全国各地に存在する賃借物件の返還、生徒の未受講分の学費の計算、生徒の受け入れ先の確保など、処理をすべきことが大量になることがあります。

予納金は、上記の事務作業の多寡によって決定されるものです。

予納金を低額に抑えるためには、破産手続開始前にできるだけ上記の処理を済ませることが理想です。

(2)インターネットを利用した情報提供

未受講債権者数が多く、かつ、全国各地にいるような場合は、電話や書面などでは十分な情報提供を迅速にできない可能性があります。

そのため、債権者に対する情報提供をするのにウェブサイトを利用する必要があるでしょう。

3.破産手続の開始決定後に注意をすべき事項とは

(1)インターネットを利用した情報提供

未受講債権者数が多く、かつ、全国各地にいるような場合は、申立後に行なわれる債権者集会の出席が困難ということになります。

破産管財人は、ウェブサイトを開設して、情報提供をするなどの工夫をすることがあります。

具体的には、債権者集会の際に配布した資料で開示可能なものについては、IDとパスワードを記載した書面を債権者に送付して、債権者限りでウェブサイトを閲覧できるようにしたケースがあります。

(2)破産手続開始決定等の英訳文

講師に外国人が多いため、外国人用の案内をする必要があります。

実際に、破産手続開始決定した旨の通知、債権の届出書及びその記載要領について、英訳文の添付をする等の工夫をおこなった例があるようです。

(3)官庁等への通知

外国語学校の設置、廃止は通常都道府県の教育委員会か都道府県知事の認可を受けなければならないため、破産手続開始の決定があった場合には、その通知を行なわなければなりません。

4.生徒を保護するための方策

(1)代替授業の提供

外国語学校の破産の場合、配当が見込まれない事案が多いため、生徒への実質的な救済というのは他校に受け入れてもらうということになります。

外国語学校は、語学教育サービスの提供、消費者保護を目的とする協議会に加盟していることから、授業料を支払い済みで、受講未了分がある生徒については、協議会を経由して、加盟している学校に協力を求めるなどをして、代替授業の提供の承諾を得る必要も出てくるでしょう。

実際に代替授業の提供を受けられたケースがあります。

そのケースの場合には、外国語教室事業に対する社会的信用を保つために、消費者保護を目的として、破産会社の生徒から授業料を取ることなくレッスンを無償で行なったようです。

(2)クレジット利用

受講料の支払にクレジットを利用している場合は、一定の要件(支払回数が3回以上の場合、授業料に低数量を加えた金額が4万円以上の場合)を充たす場合には、クレジット会社に支払の停止を求めることができます。

支払い停止を求めた際に、クレジット会社が何回分の未受講分があるのか、受講データを証明するように求めることがあるため、破産管財人から生徒に対して、受講データを提供した事例があります。

なお、クレジット会社によっては、代替授業を受けた場合は、支払い停止ができなくなるという主張がなされることがあるようですが、代替授業が無償である場合、破産会社に支払った受講料の対価として代替授業を提供しているものではないことを、当該クレジット会社に説明をして検討を促してもらうことになります。

まとめ

今回は、外国語学校が破産する場合の特殊性について説明しました。

外国語学校が破産する場合には、上記の点以外にも問題になる点は多く、早めに対処をすることで問題点を潰すことができます。

外国語学校の破産を検討されている方はお早目にご相談されることをおすすめします。