パチンコ店の経営会社の倒産件数が増えてる?破産の特殊性について

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1.パチンコ店経営会社の倒産件数の増加しているのか

2004年頃から、パチンコ店経営会社の倒産(破産や個人再生)は急増しました。

これは、2004年に、射幸性の高い4号機と呼ばれるパチスロ機を利用することを禁止し、新基準に沿った 5号機のみを設置しなければならないという規制が原因でした。

この規制強化によって、新たなパチンコ機(5号機)の購入を余儀なくされたパチンコ店経営会社は、新台購入のために莫大な費用がかかりました。

新台は、1台50万円程もしたようです。仮に、200台のパチンコ機があった場合には、1億円もの出費が必要となったのです。

また、5号機の設置により、従前より射幸性が落ちたことで、集客力も落ち、資金力のあまりない小規模な店舗は苦境に立たされることになりました。

その結果、パチンコ店経営会社の倒産件数は、2005年には39件、2006年には、54件の倒産が発生し、2007年、2008年には72件の倒産が発生しました。

その後の倒産件数は、上記規制による淘汰が落ち着いた2015年は17件、2016年は13件のみと倒産件数は低減していました。

しかし、 2017年の5.9号機への切替えが義務付けられたため、パチンコ店経営会社は、2004年の頃と同様、新台購入のための費用負担をしなければならない状況です。

また、 2018年2月には出玉規制が行なわれることになっています。

これは、1日の出玉上限を従来の3分の2の5万円とするもので、パチンコの射幸性がさらに失われることから、さらなる集客力の低下が見込まれています。

パチンコ業界は、かつては30兆円規模の市場であったが、現在は21兆円程度にまで減少し、規制がなくても決して景気がよい状況とはいえないようです。

そのため規制が追い討ちとなり、これから、パチンコ店経営会社の倒産件数が増加する可能性が高いです。

実際に、 2017年の倒産件数は、29件と、2014年以来3年ぶりに前年を上回っています。

その中には、負債額100億円を超すゲンダイグループの倒産(民事再生)があり、これは 2007年以来10年ぶりの負債100億円以上の大型倒産となっています。

2.パチンコ店経営会社の破産の特殊性

上記では、パチンコ店経営会社の倒産件数の推移と増加の可能性についてみてきましたが、実際に、パチンコ店経営会社を破産する場合に、他の業界と異なる処理をしなければならないところについて、ここでは説明をしていくことにします。

パチンコ店経営会社が他の業界と異なるところといえば、それは、「貯玉」を取り扱っているというところにあります。

「貯玉」とは、パチンコにおいて、大当たり等で得た出玉を景品に交換せずに、そのままパチンコ店に預けておく行為やその仕組み、または預けている玉そのもののことをいいます。

貯玉により、景品交換所ですぐに景品にかえなくてよくなるため、店側が常連客の囲い込みのために行なえます。

また、貯玉利用客側としても、一定の玉数に達したところで景品に交換できるので、端数の無駄がなくなります。

このように、貯玉は、パチンコ店にとっても、貯玉利用客にとってもメリットがあることから、近年では、貯玉を利用しているパチンコ店が多く、またその場合、貯玉利用客がひとつの店舗だけで千人以上にも及ぶケースがあるようです。

上記のとおり、貯玉利用客にとって貯玉とは、再度その貯玉を利用することで、現金を使うことなく再プレーをすることができ、また景品にも交換することができるため、お金のような価値をもちます。

そのため、パチンコ店が破産をした場合に、その貯玉利用者をどのように取り扱うかが問題となります。

以下では、貯玉利用客の保護措置はないのか、保護措置がない場合に、どのように破産手続上、貯玉利用客の権利を取り扱うかについて説明していくことにします。

3.貯玉補償制度と実際の事案

(1)貯玉補償制度

貯玉は、各パチンコ店経営会社が独自に管理・運営を行なっているため、パチンコ店が閉店しまった場合に、貯玉利用客は何の補償も受けられなかったようです。

かつては、パチンコ店の閉店に伴い、パチンコ店の運営会社に対して、貯玉利用客が損害賠償を求める事例もあったようです。

そこで、現在では、パチンコ店経営会社の破産により、貯玉の賞品交換ができなくなる事態に備えて、パチンコ店経営会社らから拠出金をあずかり、利用者の保護措置を図ることを目的として、「一般社団法人貯玉補償基金」が設立されています。

貯玉補償基金に加盟するパチンコ店数は、2008年当時は、2500店程でしたが、現在では6500店を超えているようです。

2017年には、一般社団法人貯玉補償基金から、パチンコ店経営会社の破産等に伴う補償を3法人で実施しているようです。

(2)実際の事案

破産の申立をしたパチンコ店経営会社が一般社団法人貯玉補償基金と契約をして貯玉補償基金制度に加盟していたことから、同法人が貯玉利用客に物品等を提供して、貯玉相当分の補償をしたために、結局のところ、貯玉利用客を破産債権者と取り扱わなかった事案はあるようです。

また、過去には、基金未加入のパチンコ店経営会社の貯玉についても、上記基金が補償を行なった例もあるようなので、それを基金にお願いすることも考えられますが、あくまでも特例措置として補償されたもので、基金未加入のパチンコ店経営会社の貯玉一般にあてはまるとはいえないでしょう。

それでは、貯玉補償制度が利用できない場合に、貯玉利用客は破産手続上どのように取り扱われるのでしょうか。

これについては、どのように取り扱うべきかという明確な基準は、実務上ありませんが、パチンコ店経営会社にお金を貸している金融機関のように、債権者として取り扱うというのがひとつ考えられます。

破産手続上なんら優先権をもたない一般的な債権のことを破産債権といいますが、この破産債権者として貯玉利用客を取り扱うということです。

貯玉利用客を破産債権者として取り扱った場合には、経営するパチンコ店が1店舗であったとしても、その数は数千名となる可能性があります。

また、債権額が1万円にも満たない貯玉利用客がその半数を占めるでしょう。

そのため、破産手続のなかで貯玉利用客への対応について、十分に整理をしておかなければなりません。

そもそも貯玉利用客を破産債権者として処理するかどうか、破産債権者として取り扱うこととして、多数いる貯玉利用客に対して、どのように破産手続について情報提供するか等などについて、事前に裁判官や管財人とともに打合せをし、検討する必要があるでしょう。

今回は、パチンコ店経営会社が破産をする場合の特殊性について説明をしました。

パチンコ店経営会社が破産手続を行なう場合には、上記の点以外にも問題になる点があります。

また、破産をするための弁護士費用や裁判所に納める予納金に充てる資金がない状況になってからでは、資金確保ができるまで、破産申立を行なえなくなってしまいます。

早期かつ適切に対処をすることで、円滑に破産手続を行なうことができます。

パチンコ店経営会社の破産を検討されている経営者の方は、お早目に弁護士にご相談されることをおすすめします。