交通事故に遭い相手が任意保険を使わない場合のリスクや対処法

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「交通事故の加害者が任意保険を使わないと言っているけど、その場合でも示談交渉できるの?」
「交通事故の相手が任意保険を利用しない場合の対処法を知りたい」

交通事故に遭うと、加害者側が加入する保険会社と示談交渉を通して慰謝料などを決めることになります。
そのため、事故の相手が任意保険を利用しない場合、加害者本人と交渉せざるを得なくなり手間と時間がかかってしまいます。

本記事では、交通事故の加害者が任意保険を利用しない場合のリスクと対処法を順にご説明します。

1.交通事故時の相手方が任意保険を使わない状況とは

交通事故の相手側が任意保険を利用しない場合のリスクは、以下の三点が挙げられます。

・加害者本人と直接示談交渉をする必要がある
・慰謝料を受け取れない可能性がある
・物的損害について補償されないおそれがある

それぞれ詳しくご説明します。

(1)加害者本人と直接示談交渉をする必要がある

交通事故に遭うと、通常被害者は加害者側の保険会社と交渉を進めますが、相手が任意保険を使わない場合、加害者本人と直接示談交渉をする必要がある場合があります。
加害者本人がやりとりの相手となると、連絡がなかなか取れなかったりそもそも返事が来なかったりなどのトラブルが起こるケースがあります。

また、事故の加害者は交通事故における専門家ではありませんので、知識が乏しく示談交渉がなかなか進まない可能性もあります。

これらが原因で示談交渉が進まないと、慰謝料を受け取ることにも時間がかかってしまうなどのデメリットが生じ得ます。

(2)慰謝料を受け取れない可能性がある

交通事故の加害者が任意保険を利用しない場合、被害者が慰謝料を受け取れない可能性があります。

交通事故では通常、加害者が加入する保険会社が被害者へ慰謝料を支払いますが、相手が加害者本人となると加害者の自賠責保険会社もしくは直接加害者に慰謝料を請求する必要があります。
しかし自賠責保険が補償してくれる金額には上限があり、不足している分はやはり加害者に請求する必要があります。
交通事故における慰謝料は高額になる可能性もあり、加害者自身が慰謝料全額を支払えるとは限りません。

また、仮に相手が慰謝料の支払に応じたとしても、途中で支払が滞るなどのリスクも考えられます。

(3)物的損害について補償されない恐れがある

交通事故の相手が任意保険を使わない場合、物的損害について補償されない可能性があります。

事故の加害者が任意保険を利用しないもしくは保険に加入していない場合でも、自賠責保険に加入していれば人的損害についての補償を受けることができます。
人的損害とは例えば、事故による怪我の治療費、慰謝料、休業損害などが挙げられます。
しかし自賠責保険において車両修理費や代車使用料などの物的損害は補償対象外であるため、加害者本人に請求しなければなりません。

加害者自身が慰謝料を支払えるだけの資力があるとは限りませんので、慰謝料を受け取れないリスクが考えられます。

2.交通事故時の任意保険を使わない場合の対処法

アスベスト訴訟依頼から解決までの主な流れ

交通事故の加害者が任意保険を利用しない場合は、以下の二点の対処法をおすすめします。

・弁護士に相談する
・被害者自身の任意保険会社から補償を受ける

順にご説明します。

(1)弁護士に相談

交通事故の相手が任意保険を利用しない旨を主張してきた際は、まず専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、交通事故に関する専門的な知識・経験に基づいて相手側と交渉できるノウハウを持っています。
もしも加害者が任意保険を利用しない場合でも、できるだけスムーズに示談交渉を進められるよう被害者をサポートすることができます。

また、弁護士費用の工面が心配な場合でも、弁護士費用特約を利用できる事務所に頼めば経済的な負担を軽減させることができます。
任意保険に弁護士費用特約が付帯していると、示談交渉を弁護士に依頼する際に、弁護士費用を保険会社が負担してくれます。

交通事故の被害者が加害者本人に慰謝料請求を行う場合、弁護士から以下のような対策を提案される可能性があります。

#1. 内容証明郵便を送る

交通事故の相手が任意保険を利用せず、加害者本人とも連絡が取れないことで示談交渉が進まない場合は、内容証明郵便を送ることをおすすめします。

内容証明郵便を利用すると、郵便局と差出人の手元に内容の控えが残り、いつ誰がどのような書類を送ったのかが明らかになります。
内容証明郵便を送ることで、損害賠償請求時に相手が連絡を無視したり書類を受け取った覚えがないなどと主張した場合に相手へ請求した事実を証明できます。

また、内容証明郵便は加害者本人による受取を前提とした郵便方法であるため、被害者の慰謝料請求の意思が強いことも伝えられます。
損害賠償請求時において、内容証明郵便が有利に働くケースも多いですので、まず相手側にこの対策を取りましょう。

#2. 公正証書で示談書を作成する

交通事故の加害者が任意保険の利用を拒否しており、本人とやりとりをしなければならない場合は、公正証書で示談書を作成することをおすすめします。

交通事故における示談交渉の相手が加害者本人である場合、示談内容がまとまっても加害者が支払を拒否するリスクがあります。
公正証書とは、法的拘束力がない私文書とは異なり、示談内容が履行されなかった際に裁判を起こさなくても強制執行ができる文言を付加することができるものです。

つまり公正証書として強制執行認諾条項などを記しておくことで、加害者からの支払が滞ったとしても、財産の差押えを行うことができます。
公正証書は法律の専門的知識が必要となりますので、作成時は弁護士に相談することをおすすめします。

(2)被害者自身の任意保険会社から補償を受ける

交通事故の加害者が任意保険を使わない場合は、被害者自身の任意保険会社から補償を受ける方法があります。

特に損害賠償請求額が自賠責保険の支払基準を超える場合は、この方法を利用することで金銭を受け取ることができます。
利用できる自動車保険には、人身傷害保険・搭乗者傷害保険、無保険車傷害保険、車両保険などがあります。

ご自身が加入する自動車保険で人身傷害保険・搭乗者傷害保険を契約していれば、被害者本人や同乗者の死傷について補償を受けることができます。
無保険車傷害保険では、事故の相手が無保険であったり相手から十分な補償を受けられなかったりする場合に補償を受けられるものです。
車の修理費など物的損害に関する費用は、車両保険によって補償を受けられます。

被害者にとってどのような保険が使えるのかについては弁護士や保険会社の担当者にご相談ください。

まとめ

交通事故における加害者が任意保険を利用しないと、被害者にとって様々なデメリットが生じてしまいます。
そのため、相手が任意保険を利用しない旨を主張してきた場合は、まず専門家である弁護士にご相談ください。
事故の相手に慰謝料を支払う資力がないケースでも、他の手段を用いて慰謝料を受け取れるかもしれません。

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執筆者 実成 圭司 弁護士

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