ギャンブルの借金で個人再生を行うことはできる?手続中の注意点についても解説
「ギャンブルで借金を負った場合にも個人再生はできるのか」
「個人再生の手続中にギャンブルをしてしまった場合の影響は?」
ギャンブルなどによって多額の借金を負ってしまい、返済が難しくなったことから、個人再生を行うことを検討されている方の中には、このような疑問をお持ちの方もいると思います。
個人再生とは、借金の返済が困難であることを裁判所に申し立て、一定額まで減額した債務を分割して弁済する内容の再生計画案を作成し、その計画について裁判所の認可を受けた上で、そのとおり弁済することで、残額の免除を受けられるという手続です。
いくらまで減額できるかは借金の総額などによって決まり、場合によっては最大で10分の1程度まで減額されることもあります。
そのため、同じ債務整理手続である任意整理と比較して、返済の負担を大きく軽減できる可能性があります。
また、自己破産とは異なり、一定の条件を満たすことで、住宅や車などの財産を残したまま手続を進められる場合がある点も特徴です。
そのため、生活や仕事への影響を抑えながら借金問題の解決を図れる可能性があります。
もっとも、個人再生は裁判所を通じて行う手続であることから、借金の原因がギャンブルや浪費の場合でも利用できるのか不安に感じる方も少なくありません。
そこで、本記事では、ギャンブルによる借金であっても個人再生を利用できるのか、また、手続中にギャンブルを行った場合にどのような影響が生じる可能性があるのかについて解説します。
個人再生の流れや、手続にかかる期間の目安などについては、以下の記事も参考になります。
1.ギャンブルによる借金で個人再生を行うことはできるか

結論から述べると、ギャンブルによって借金を負った場合であっても、個人再生を行うことは可能です。
自己破産について規定する破産法は、ギャンブル等の射幸行為や浪費によって著しく財産を減少させたり、過大な債務を負ったりしたことを、免責不許可事由と定めています。
そのため、裁判所が免責不許可事由に該当すると判断した場合には、自己破産の手続を行ったとしても、借金の返済義務が免除されない可能性があります。
これに対して、個人再生では、原則としてどのような理由で借金を負ったのかは問題とされません。
ギャンブルが原因で借金が増えてしまった場合であっても、それだけを理由に再生計画案が認可されなくなることはありません。
自己破産と異なり、免責不許可事由のようなものは定められていないのです。
もっとも、個人再生のうち、小規模個人再生を行う場合には、注意が必要です。
個人再生には、以下の2つの手続があります。
- 小規模個人再生手続
- 給与所得者等再生手続
このうち、小規模個人再生手続では、再生計画案の内容について、債権者が同意することが求められています。
具体的には、すべての債権者のうち過半数を占める債権者が反対した場合またはすべての債権額の過半数を占める額の債権者が反対した場合には、再生計画案が認可されず、個人再生を進めることができなくなってしまいます。
そのため、ギャンブルによって多額の借金を負っている場合には、債権者が手続に反対する可能性も考えられます。
これに対し、給与所得者等再生手続では、債権者の同意や多数決は不要とされています。
ただ、給与所得者等再生手続は、小規模個人再生手続と再生計画案に定める最低弁済額の決め方が異なっており、返済額が高額になるケースもあるため、どちらの手続を選択すべきであるかについては、収入状況や借金額、債権者の状況などを踏まえて慎重に検討する必要があります。
小規模個人再生手続の概要や給与所得者等再生手続との違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
2.個人再生を行うことが適しているケース

個人再生では、借金の原因は問題とされません。
そのため、ギャンブルや浪費などによって借金を負った場合であっても、個人再生を申し立てることは可能です。
そして、裁判所から再生計画案の認可を受けることで、借金の減額を受けながら返済を続けていくことができます。
また、特に以下のようなケースでは、個人再生を利用するメリットが大きいといえるでしょう。
- 個人再生の申立要件を満たしている
- ギャンブルや浪費が借金の主な原因である
- 手元に残したい財産がある
- 自己破産による資格制限を避けたい
順にご説明します。
(1)個人再生の申立要件を満たしている
個人再生は、裁判所を通して行う手続であるため、申し立てるための要件が法律上定められています。
小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続では細かな違いがありますが、双方に共通する主な要件として以下のものがあります。
- 支払不能となるおそれがあること
- 住宅ローンを除いた借金の総額が5000万円を超えていないこと
- 継続的または反復して収入を得る見込みがあること
個人再生では、裁判所から再生計画案の認可を受けた後、原則として3年(特別な事情が認められる場合には5年)にわたり、再生計画に従って返済を継続しなければなりません。
そのため、現在だけでなく、将来にわたっても安定した収入を得る見込みがあることが非常に重要となります。
また、住宅ローンを除いた借金総額が5000万円を超えている場合には、個人再生を利用することができません。
そのため、申立てを検討する際には、借入残高や債権額を正確に把握しておく必要があります。
個人再生の要件の詳細については、以下の記事もあわせてご覧ください。
(2)ギャンブルや浪費が借金の主な原因である
ギャンブルや浪費が借金の主な原因である場合には、個人再生が特に適しているケースがあります。
前述のとおり、自己破産では、ギャンブルや浪費による借金は免責不許可事由に該当する可能性があります。
もっとも、ギャンブルによる借金が一部にとどまる場合などには、裁判所の裁量によって免責が認められるケースも少なくありません(裁量免責)。
しかし、借金の大部分がギャンブルや浪費によるものである場合には、自己破産を申し立てたとしても、免責が認められない可能性が出てきます。
そのような場合には、借金の原因が問題とされにくい個人再生を選択する方が適しているといえるでしょう。
また、将来利息をカットした上で、5年程度の分割返済によって完済できる見込みがある場合には、任意整理を選択することも考えられます。
もっとも、借金総額が高額であり、利息をカットしただけでは月々の返済の負担が十分に軽減されない場合には、元本も含めた大幅な減額が可能となる個人再生の方が適しているといえるでしょう。
個人再生と任意整理の違いや比較については、以下の記事で詳しく解説しています。
(3)手元に残したい財産がある
住宅や車などの財産を所有している場合には、個人再生が適しているケースがあります。
自己破産では、一定以上の価値がある財産については、手続の中で換価処分が行われ、債権者への配当にあてられることになります。
そのため、住宅などを手元に残すことが難しくなるケースも少なくありません。
これに対して、個人再生では、原則として申立人の財産そのものが換価処分されることはありません。
特に生活や仕事などで手放すことができない財産を有している場合には、個人再生を行うことが適しているといえます。
もっとも、住宅や車などについてローンが残っている場合には注意が必要です。
住宅ローンが残っている住宅については、住宅資金特別条項(いわゆる「住宅ローン特則」)を利用することで、住宅ローンを支払い続けながら個人再生を進めることができる場合があります。
一方で、車やバイクのローンには、このような制度は用意されていません。
そのため、残債務がありかつ所有権留保が設定されている場合には、ローン会社によって引き揚げが行われる可能性があります。
住宅資金特別条項の要件については、以下の記事で詳しく解説しています。
個人再生と車のローンの関係については、以下の記事もあわせてご覧ください。
なお、ローンを完済している住宅や車については、個人再生後も手元に残せる可能性がありますが、財産価値が高い場合には「清算価値保障原則」によって返済額が増える可能性があります。
所有している財産の価値と最終弁済額の関係については、以下の記事もあわせてご参照ください。
(4)自己破産による資格制限を避けたい
自己破産では、手続中、一部の資格や職業について制限を受ける場合があります。
具体的には、以下のような職業・資格が代表例として挙げられます。
- 弁護士、司法書士、税理士などの士業
- 警備員
- 生命保険募集人
- 証券外務員
- 宅地建物取引士
- 企業の役員 など
これらの職業に就いている場合には、自己破産手続中、一時的に業務を行えなくなる可能性があります。
これに対し、個人再生では、このような資格制限はありません。
そのため、仕事への影響を抑えながら債務整理を進めたい場合には、個人再生を選択するメリットがあるといえます。
また、従前どおり仕事を継続できることによって、安定した収入を維持しやすい点も、個人再生のメリットの一つです。
自己破産による資格制限については、以下の記事も参考になります。
3.個人再生の手続中にギャンブルをした場合のリスク

借金の主な原因がギャンブルであったとしても、個人再生の申立要件を満たしていれば、個人再生を行って返済の負担を軽減できる可能性があります。
もっとも、個人再生の手続中にギャンブルをしてしまうと、手続に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
具体的には、以下のようなリスクが考えられます。
- 最低弁済額が高額になる
- 再生計画案が認可されない可能性がある
- 再生計画が取り消される可能性がある
いずれも個人再生による生活再建を困難にしてしまう重大なリスクです。
そのため、遅くとも弁護士に手続を依頼した後や、個人再生を具体的に検討し始めた段階では、ギャンブルをやめる必要があります。
(1)最低弁済額が高額になる
個人再生の手続中にギャンブルをしてしまうと、ギャンブルに支出した金額が最低弁済額に上乗せされる可能性があります。
個人再生では、最低弁済額や清算価値などを基準として最終的な弁済額が決定されます。
そして、手続中にギャンブルによって財産を減少させたと判断されると、その支出分が最低弁済額に反映される可能性があります。
その結果、ギャンブルに使った金額が大きいほど返済額が増えてしまい、個人再生による返済負担の軽減のメリットが小さくなるおそれがあります。
なお、個人再生を申し立てる際には、申立書だけでなく、家計収支表や銀行口座の取引履歴、給与明細など、さまざまな資料を裁判所に提出する必要があります。
そのため、不自然な出金や使途不明金があれば裁判所から説明を求められることになります。
特に、短期間に多額の現金の引出しやギャンブル関連の支出がある場合には、裁判所に把握される可能性が高いです。
このように、手続中にギャンブルを行うことは、個人再生のメリットを損なう結果につながる可能性があります。
個人再生における最低弁済額の考え方については、以下の記事もあわせてご覧ください。
(2)再生計画案が認可されない可能性がある
個人再生によって借金を減額してもらうためには、再生計画案を作成し、裁判所に提出しなければなりません。
そして、裁判所は、申立人の収支状況などを踏まえ、今後も継続的に返済を行うことができるかという点を審査したうえで、再生計画案を認可するかどうかを判断します。
そのため、手続中にギャンブルを行ったことが判明すると、裁判所から本当に継続的な返済が可能なのかという疑問を持たれてしまう可能性があります。
特に、家計管理ができていないと判断された場合には、再生計画案の認可に悪影響を及ぼすことが考えられます。
もっとも、ただちに手続が進められなくなるとは限らず、事情説明や再生計画案の修正によって対応できるケースもあります。
たとえば、ギャンブルによる支出分を反映した内容に再生計画案を修正することで、あらためて認可を受けられる場合もあります。
しかし、その分、手続が長期化したり、裁判所への追加説明が必要になったりする可能性があります。
また、裁判所から指定された期限までに必要書類の提出や再生計画案の修正ができなかった場合には、手続自体が終了してしまうリスクもあります。
このような事態を避け、個人再生を円滑に進めるためにも、ギャンブルをしないことが重要です。
(3)再生計画が取り消される可能性がある
再生計画案が認可され、返済が始まった後であっても注意が必要です。
返済を開始した後にギャンブルを行うようになると、資金が不足し、再生計画どおりの返済ができなくなってしまう可能性があります。
そして、再生計画に従った返済を継続できない場合には、債権者からの申立てなどによって、再生計画が取り消される可能性があります。
再生計画が取り消されると、個人再生による借金の減額効果も失われ、原則として減額前の債務を請求されることになります。
このように、個人再生は、再生計画案が認可された後も、継続的に返済を続けていくことが前提となる手続です。
返済が始まってからも、生活を再建させることを意識し、ギャンブルとは距離を置くことが重要です。
4.個人再生について弁護士に相談するメリット

個人再生は、裁判所を通して行う手続であり、申立てから認可決定まで、一定の流れやスケジュールに従って進められます。
また、手続の準備段階や手続中には、資料収集や家計の管理、裁判所への対応など、さまざまな注意点があります。
そのため、誤った対応をしてしまうと、手続が長期化したり、最悪の場合には個人再生が認められなくなったりする可能性もあります。
特に、ギャンブルによる借金があるケースでは、裁判所や個人再生委員から家計状況や支出内容について詳しい説明を求められることも少なくありません。
このようなリスクを避け、スムーズに手続を進めるためにも、個人再生を行うことを検討されている場合には、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、主に以下のようなメリットがあります。
- 個人再生が適しているか説明を受けられる
- 督促や返済を一時的に止められる可能性がある
- 裁判所とのやりとりについてサポートを受けられる
順にご説明します。
(1)個人再生が適しているか説明を受けられる
個人再生は、ギャンブルによる借金がある場合でも利用できる手続ですが、利用するためには法律上の要件を満たしている必要があります。
また、住宅や車などの財産を残しながら手続を進められる可能性がある一方で所有している財産の価値によっては返済額が高額となり、十分な返済負担の軽減につながらないケースもあります。
このように、個人再生を行うべきかどうかは、借金額や収入状況、所有財産、借金の原因など、さまざまな事情を踏まえて判断する必要があります。
弁護士に相談することで、自身の状況で個人再生を行うことが適しているかについて、具体的な説明を受けることができます。
また、借金総額や毎月の返済可能額によっては、個人再生ではなく任意整理や自己破産を選択した方が適しているケースもあります。
そのため、できるだけ早い段階で弁護士に相談することで、個人再生以外の選択肢についても比較することができ、自分に適した解決方法を検討しやすくなります。
なお、債務整理を検討すべきタイミングについては、以下の記事もご覧ください。
(2)督促や返済を一時的に止められる可能性がある
弁護士に個人再生の手続を依頼すると、通常は、債権者に対して受任通知と呼ばれる書面が送付されます。
貸金業者や債権回収会社などは、弁護士から受任通知を受け取った後、法律上、原則として債務者本人に対して直接督促を行うことができなくなります。
そのため、借金の督促や取立てが止まり、返済も一時的に停止できるケースが一般的です。
特に個人再生では、申立書類の作成や資料収集、家計の見直しなど、多くの準備が必要となります。
また、裁判所へ納める予納金や弁護士費用など、一定の費用も必要となるため、申立てまでに資金を準備しなければなりません。
返済や督促が一時的に止まることで、その間に手続費用を積み立てたり、生活状況を立て直したりする時間を確保しやすくなります。
弁護士に依頼することで、必要書類や準備の進め方についてサポートを受けながら、落ち着いて準備を進めることができます。
個人再生の必要書類や手続費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
(3)裁判所とのやりとりについてサポートを受けられる
個人再生では、申立てだけでなく、その後も裁判所とのやりとりが継続的に発生します。
特に、裁判所によっては、裁判所と申立人の間を取り持つ役割がある「個人再生委員」が選任される運用となっており、家計状況や借り入れ経緯などについて説明を求められることもあります。
もっとも、初めて個人再生を行う方にとっては、どのような資料を準備すべきか、どのように説明すればよいのかが分からず、不安を感じることも少なくありません。
弁護士に依頼することで、裁判所へ提出する書類の作成や裁判所との連絡・調整についてサポートを受けることができます。
また、申立人本人が裁判所や個人再生委員との面談に対応する必要がある場合でも、事前に説明内容や注意点についてアドバイスを受けることができるため、安心して手続を進めることが可能です。
このように、個人再生を円滑に進め、借金の返済負担の軽減を受けるためにも、弁護士から継続的なサポートを受けることには大きなメリットがあります。
まとめ
本記事では、ギャンブルによる借金と個人再生の関係について解説しました。
ギャンブルが主な理由で借金を負った場合であっても、個人再生の申立要件を満たしていれば、個人再生を利用することは可能です。
裁判所から再生計画案の認可を受けることで、借金を大幅に減額したうえで、分割返済による生活再建を目指すことができます。
また、自己破産とは異なり、一定の場合には住宅などの財産を残しながら手続を進められる可能性がある点も、個人再生の大きな特徴です。
もっとも、個人再生の手続中や、再生計画に基づく返済開始後に再びギャンブルをしてしまうと、返済計画に悪影響を及ぼし、個人再生が認められなくなったり、再生計画が取り消されたりするリスクがあります。
そのため、個人再生を検討する際には、借金の原因だけでなく、借入総額や収入、財産の所有状況なども踏まえて、自身に適した手続を選択することが大切です。
個人再生を行うことが適しているかどうかの判断が難しい場合には、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
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