個人再生手続後の注意点とは?完済に向けて知っておきたいこと

【個人再生完済に向けて知っておきたいこと】今後の生活再建のためにできること

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「個人再生後の返済途中だけど、これからの生活が不安」
「これからの生活再建のためにできることを知っておきたい」
個人再生後の返済をされている方の中には、このようなお考えをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、個人再生の手続が終了し、さらに債務を完済したあとの情報として、知っておいていただきたいことについてご説明します。

合わせて、個人再生後、債務を返済中の方が注意すべきことについてもご説明します。

この記事が、個人再生手続後のライフプランを考える上で参考となれば幸いです。

1.個人再生後に知っておきたいこと

個人再生後に知っておきたいこと

個人再生手続において裁判所の認可を受けた再生計画に従って返済を続け、債務を完済したものの、その後の生活にどのような影響があるのか、不安をお持ちの方も多いかと思います。

特に気にされることといえば、クレジットカードの利用やローンの申込みなどへの影響でしょう。

個人再生後、どのような影響があるのかについて順にご説明します。

(1)事故情報の登録期間

個人再生などの債務整理を行うと、その事実が信用情報機関に事故情報として登録されることになります。これを「ブラックリスト入り」と言います。

このブラックリスト入り状態だと、クレジットカードの利用やローンを組むことなどができない状態になります。

金融機関は、借入れなどの申込みを受けると与信審査のために信用情報機関に信用情報の照会を行うのですが、そこに事故情報があると返済の確実性に疑いがあると判断され、審査に通らないのです。

各信用情報において事故情報が削除されるまでの期間は、以下のとおりです。

債務整理の手続方法 株式会社シー・アイ・シー(CIC) 株式会社日本信用情報機構(JICC) 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
任意整理 完済から5年 完済から5年
(ただし2019年9月30日以前の契約は受任通知の送付日から5年)
完済から5年
個人再生 完済から5年 完済から5年
(ただし2019年9月30日以前の契約は手続開始決定日から5年)
手続開始決定日から10年か、完済から5年のいずれか遅い方
自己破産 免責許可決定確定日から5年 免責許可決定確定日から5年 手続開始決定日から
10年

この表の個人再生の欄のとおり、個人再生を行うと、事故情報が削除されるまで、最長で手続の開始から10年かかります。

つまり、最長で10年間、クレジットカードを利用したり、ローンを組んだりすることができなくなる、ということになります。

クレジットカードを利用できないと、キャッシュレス決済の手段が限られてしまい、不便を強いられることになります。

この間の代替手段としては、デビットカードの利用が考えられます。

デビットカードは、クレジットカードと異なり決済と同時に銀行口座から引き落としされるため、与信審査が不要ですので、ブラックリスト入りとなっている間にも利用することができます。

(2)事故情報の開示請求方法

次に、再生計画に従って債務を完済した後、ご自身がブラックリスト入りの状態のままかどうかを確認する方法を紹介します。

信用情報機関は、それぞれ加盟している金融機関の種類が異なります。

例えば、消費者金融が加盟しているのはCICやJICCで、銀行が加盟しているのはKSC、ということが多いです。

そのため、個人再生後に事故情報が削除されるまでの期間も、個人再生を行った際の債権者がどのような金融機関であるかによって変わってきます。

そこで、ローンの申込みやクレジットカードの利用再開を考えるのであれば、事故情報が削除されたかどうかを確かめておいた方がよい、ということになります。

信用情報の確認のためには、信用情報機関が設けている開示制度を利用することになります。

信用情報の開示を受け、そこに事故情報の記載がなければ、信用情報機関から事故情報が削除された、ということになります。

開示制度はいずれの信用情報機関も設けており、その方法は以下のとおりです。

信用情報機関 情報開示請求の方法 開示請求手数料
CIC インターネット、郵送、窓口で受付 インターネット、郵送:¥1,000
窓口:¥500
JICC インターネット、郵送、窓口で受付 インターネット、郵送:¥1,000
窓口:¥500
KSC 郵送のみ受付 ¥1,000

これらの方法の詳細については、各信用情報機関のウェブページに詳しく記載されていますので、そちらをご覧ください。

情報開示とは|指定信用情報機関のCIC
信用情報の確認 |日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関
本人開示の手続き | 全国銀行個人信用情報センター | 一般社団法人 全国銀行協会

(3)社会的信用の回復のために

完済後の生活のことを考えるのであれば、生活を安定させることを目指しましょう。

個人再生手続後、債務を完済するまでの間は、当然ながら生活を安定させ、返済を継続していくことが求められます。

返済が滞ってしまうと再生計画が取り消され、再生計画によって減額を認められた債務が元の金額に戻ってしまうこともあります。

また、完済後に、クレジットカードや住宅・自動車のローンの利用を考える場合も、生活の安定は重要になってきます。

それらの審査に関わるのは、信用情報機関に登録される事故情報の有無だけではないからです。

与信審査においては、通常、収入が十分にあるかどうか、その収入が安定して得られるかどうかが判断の基準になっています。

債務を完済し、事故情報も削除されたからといって不安定な収入の職業に転職してしまうなどすると、与信審査に通らない、という事態も起こり得ます。

もとより債務整理全般は、借金を整理し生活を立て直すことを目的として行うものです。

完済後の生活への影響も考え、個人再生手続後は、ご自身の家計の見直しや安定した収入の確保を心がけ、生活の立て直しを心がけることが賢明と言えます。

そうすることにより、結果的にクレジットカードや住宅・自動車ローンの利用も容易になるでしょう。

2.個人再生手続後、返済中の4つの注意点

個人再生手続後、返済中の注意点

個人再生後の支払が困難になった場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。

返済を滞りなく続けていかないと、再生計画の取消しにより、減額された部分の債務が復活し、しかも債権者から一括請求を受けてしまうことになります。

返済中に何らかの事情により支払が困難になってしまった場合、弁護士に相談した上で今後の手段を考えましょう。

そもそも支払が困難とならないようにするために気を付けることも含め、順にご説明します。

(1)無理のない返済の収支計画を作る

支払困難な状況に陥らないためには、まず、個人再生の手続の間に無理のない返済計画を立て、それを反映した再生計画案を作成することが重要です。

個人再生の申立て準備の段階で、ご自身の収支状況を知り、改善できる点があれば改善するように心がけましょう。

例えば、今まで趣味や娯楽に割いてきた支出を抑えられるのであれば節約することを心がけることが必要です。

個人再生では家計収支表を作成し裁判所に提出する必要があります。

この家計収支表の作成をよい機会ととらえ、収支状況の改善をはかり、それに見合った再生計画案を作成しましょう。

個人再生の申立てについて、弁護士に依頼していれば、家計収支表の作成についても、どのような点に注意すべきかなどについてアドバイスを受けることもできます。

返済途中で破綻することのないよう、個人再生の申立て準備段階から、返済を続けるために十分に検討をすべきです。

(2)支払遅延や滞納が生じると債権者から再生計画の取消しを申し立てられる場合がある

個人再生後の返済に遅延や滞納が生じてしまうと、債権者から、再生計画の取消しを申し立てられてしまうことがあります。

裁判所に認可された再生計画は、債務者が現実的に返済を行っていけることを証明するものでもあるため、支払の遅延や滞納は想定されていません。

そのため、遅延や滞納があると、債権者の申立てにより再生計画が取り消され、再生計画による減額、分割払いの約束はなかったことになり、債務の残額を一括で請求される、という事態になってしまいます。

このような事態に陥らないために、計画的な返済が重要ということです。

(3)再生計画の変更の利用

何らかの事情により再生計画どおりの返済が途中で困難になってしまった場合は、再生計画の変更を検討することになります。

個人再生手続の場合、法律上、やむを得ない事由により再生計画の遂行が著しく困難になったときは、申立てにより、再生計画で定められた期限を最大2年以内で延長することができることになっています(民事再生法第234条、第244条)。

例えば、勤務先から解雇されてしまったり、あるいは病気で長期間働けなくなったりした場合は「やむを得ない事由」に該当します。

変更の申立てが認可されれば、期限を延長し、再生計画が取り消されることを防ぐことができます。

(4)ハードシップ免責の利用

再生計画の変更によって返済期間を延長しても、返済の継続が難しいという場合には、ハードシップ免責を利用することが考えられます。

ハードシップ免責とは、一定の要件を満たす場合に、残債務の免責を得られる制度です。

しかし、ハードシップ免責を利用するには、再生計画の4分の3以上の弁済をすでに終えていることに加え、再生計画の変更の要件以上に再生計画の遂行が困難であること(病気により同条件の収入が得られる職業への復職が不可能であることなど。)が必要になり、そのハードルは高いと言わざるを得ません。

単に支払が困難になったというだけでは利用できない制度ですので、やはり再生計画案を作成する段階で返済が困難とならないように収支状況について十分に検討しておくべきでしょう。

まとめ

この記事では、個人再生の完済後の状況について知っておきたいこと、返済中に心得ておくことについてご説明しました。

個人再生後の返済中または完済後には、様々な問題や不安があるかもしれません。

特に返済中の問題に関しては、裁判所への申立てが必要になるなどお一人での解決が難しい場合もありますので、弁護士へのご相談が必要になると思われます。

弁護士法人みずきでは、依頼者様の状況や希望に合わせた解決策を一緒に考えますので、ご相談いただければ幸いです。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。