自己破産すると仕事ができなくなる?自己破産による職業制限について

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 第二東京弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「自己破産をすると仕事を辞めなければいけない?」

「自己破産をしたあと就けない職業があるって本当?」

自己破産の手続を行うと、色々な制限がかかってしまいますが、その一つに職業の制限があります。

破産の手続中は一部の資格・職業が制限されてしまいますが、手続が終われば制限はなくなります。

この記事では、自己破産によって職業が制限されるとはどういうことなのか、その制限はどのような範囲に及ぶのかについてご説明します。

自己破産による資格・職業の制限についてご確認いただき、自己破産を検討する際の参考にしていただければ幸いです。

1.自己破産における職業制限とは

(1)職業制限の仕組み

自己破産手続を申し立て、手続開始決定がされると、その後は免責許可決定が確定するまで、一部の資格・職業について法律上の制限がかかります。

この仕組みについて詳しく説明すると以下のようになります。

破産の手続が終了し、免責許可決定が確定すると、破産者について、「復権」という効果が発生します(破産法255条1項1号。免責許可決定の確定以外の事由によっても復権は生じますが一般的ではないためここでは省略します)。

この復権の効果については、人の資格に関する法令の定めるところによるとされています(破産法255条2項)。

一方、資格に関して定める各法令においては、ほとんどの場合、破産手続の開始決定を受けてから復権を得るまでの間、その資格に制限が生じることが規定されています。

つまり、破産による資格・職業の制限については、破産法において免責許可決定の確定により復権という効果が生じることを定め、それぞれの資格等について定める法令において破産手続開始決定から復権まで資格を制限することを定める、という関係になっているのです。

一例を挙げてみましょう。

例えば、弁護士については、その資格について定める弁護士法に以下のような規定があります。

第7条 次に掲げる者は、(中略)弁護士となる資格を有しない。

(中略)

第4号 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

第17条 日本弁護士連合会は、次に掲げる場合においては、弁護士名簿の登録を取り消さなければならない。

第1号 弁護士が第7条各号(第2号を除く。)のいずれかに該当するに至つたとき。

このように、弁護士法には、弁護士の資格について、破産手続開始の決定を受けてから復権を得るまでの間、これを有しないこと、破産手続開始の決定を受けた場合、弁護士としての登録を取り消されることが規定されています。

したがって、弁護士は、破産手続の開始決定を受けるとその資格を失い、弁護士としての業務を行うことができなくなりますし、復権を得るまで弁護士の登録を受けることができなくなります。

一部の資格・職業については、各法律において弁護士法と同様の規定が置かれており、破産手続の開始決定から復権するまでの間、これが制限されることとなっているのです。

(2)資格・登録の取消しは必ずされるのか

ところで、資格・職業の制限のされ方にはそれぞれについて定める法令によって若干の違いがあります。

すでにその資格を得たり、職業の登録を受けたりしている場合に破産手続開始決定を受けたとき、資格や登録が必ず取り消されるかどうかはそれぞれの法律によって異なっています。

先に例として挙げた弁護士については、「登録を取り消さなければならない」というように規定されています。

このような規定がある場合、破産手続開始決定を受けると必ず登録が取り消されることになります。

これを「必要的取消し」といいます。

これに対して、法律の規定が「取り消すことができる」となっている場合、その資格・職業を認定する機関の判断を経て取消しがおこわなれるため、必ずその資格・職業が必要な業務を行うことができなくなるわけではありません。

例えば、保険募集人(保険の外交員)については、保険業法に以下のような規定があります。

第276条 特定保険募集人(生命保険募集人、損害保険代理店又は少額短期保険募集人(特定少額短期保険募集人を除く。)をいう。以下同じ。)は、この法律の定めるところにより、内閣総理大臣の登録を受けなければならない。

第279条 内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき(中略)は、その登録を拒否しなければならない。

第1号 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者又は外国の法令上これと同様に取り扱われている者

第307条 内閣総理大臣は、特定保険募集人又は保険仲立人が次の各号のいずれかに該当するときは、第276条若しくは第286条の登録を取り消し、又は6月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

第1号 特定保険募集人が第279条第1項第1号から第3号まで(中略)に該当することとなったとき。

破産手続開始決定を受けて復権を得るまでの間、あらたに保険募集人の登録を受けることはできません。

しかし、すでに保険募集人になっている方が破産手続開始決定を受けたときには、内閣総理大臣の判断を経てから取消しが行われることとなっており、自動的に取消しが行われることにはなっていません。

このように、資格・職業の登録について、必ず取り消されることになっていないものもあります。

これを、「任意的取消し」といいます。

任意的取消しの場合、取消しの処分がされるまでは仕事を継続することができます。

ただし、取消しの可能性があることは否定できませんので、リスクを避けるのであれば、個人再生など、職業制限のない他の手段を検討する必要があります。

2.制限を受ける資格・職業

破産した場合に自動的に制限される資格・職業、制限される可能性のある資格・職業、そもそも破産による影響を受けない資格・職業の例は以下のとおりです。

これらは一例にすぎませんので、ご自身の職業が制限を受けるかどうかについては根拠法令を確認する必要があります。

弁護士に相談して、法令を確認してもらえば制限の有無を調べることができるでしょう。

(1)自動的に制限される資格・職業(必要的取消しを受ける職業)

弁護士 司法書士 税理士 公証人 公認会計士 土地家屋調査士 宅地建物取引士

社会保険労務士 中小企業診断士 交通事故相談員 固定資産評価員 旅行業務取扱管理者

管理業務主任者 警備員 調教師・騎手

(2)制限される可能性のある資格・職業(任意的取消しを受ける職業)

保険募集人 証券外務員 質屋 古物商

(3)制限されない資格・職業

医師 看護師 薬剤師 社会福祉士 マンション管理士

3.職業制限に関する注意点

ここまでご説明したとおり、破産をすると一部の資格・職業は制限を受けます。

しかし、その制限は一時的なものです。

また、会社の取締役については、その他の資格・職業と制限のされ方が異なっています。

以下では、これらの点についてご説明します。

(1)制限は一時的なものである

資格・職業について制限を受けるのは、破産手続開始決定から復権を得るまでの間に限られます。

したがって、復権を得た後は制限はなくなります。

過去に破産したことがあっても復権を得ていれば、そのことによって法律上何らかの制限を受けることはありません。

弁護士、司法書士などの士業の試験についても復権を得た後、受験を制限されることはありませんし、その他の資格についても同様です。

(2)休職・転職などの必要が生じてしまう

制限が一時的であるとはいえ、資格・職業が制限されてしまうため、破産手続が行われている間は、従来の職業に就くことができなくなります。

自己破産の手続には、破産者に手続のための資力がない場合に開始と同時に手続を終了させる「同時廃止事件」と、破産管財人を選任して破産者の財産の換価処分や配当、財産の有無や免責不許可事由の調査を行う「管財事件」があります。

破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで、同時廃止事件の場合1~2か月、管財事件の場合3~6か月(財産の換価、配当を行う場合は6か月以上)がかかります。

したがって、上記の期間、資格・職業の制限が続くことになりますので、休職や転職、あるいは職場に対して一時的に資格を必要としない部署への配置転換のお願いをするなどの必要が生じます。

資格・職業を制限される期間がどれくらいになるかついては、上記のとおり、破産手続が同時廃止事件と管財事件のどちらかになるかによって変わってきます。

弁護士に相談して見込みを確認した上、資格・職業の制限への対策を検討しておいた方がよいでしょう。

(3)会社の取締役の場合再任されれば業務を継続できる

株式会社における取締役については、破産手続開始の決定を受けると退任することになりますが、再任されることによってすぐ業務に復帰することができます。

これは、破産手続開始の決定によって取締役が退任することになる理由がそのほかの資格・職業と異なっているためです。

株式会社と取締役との関係は、民法の委任に関する規定に従うとされています(会社法330条)。

委任契約は、当事者の破産により終了すると定められています(民法653条2号)ので、取締役が破産すると、退任せざるを得ないこととなります。

しかし、破産手続の開始から復権を得るまで取締役の資格になることができない、という規定はありません。

したがって、取締役の場合、破産手続開始の決定により退任することになるものの、その後に株主総会で再任されれば、復権を得るまで待たずにすぐに業務に戻ることができる、というわけです。

まとめ

自己破産の手続を進めると資格・職業制限が発生する仕組み、制限がかかる職業などについてご説明しました。

実際には、この記事で挙げた以上に数多くの資格・職業について制限がされることとなっており、制限の有無を確かめるには、根拠となっている法令の規定を調べるほかありません。

ご自身のお仕事に必要な資格や現在の職業が破産によって制限されるかどうかについて弁護士に確認し、対策を考えながら破産の手続を進めましょう。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 第二東京弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。