自己破産すると家はどうなる?自己破産が家に及ぼす影響とは

自己破産すると家はどうなる?自己破産が家に及ぼす影響とは

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 第二東京弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「自己破産をすると今住んでいる家はどうなるのか?」
「自己破産後の住む家はどうしたらよいのか?」
自己破産が持ち家に及ぼす影響について、心配になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

持ち家のある状態で自己破産をすると、家は手放さなければなりません。ただし、自己破産の手続後、すぐに住めなくなるということはありません。

この記事では、自己破産による自分の家への影響についてご説明します。

1.自己破産とは

自己破産とは

債務超過に陥ってしまい、債務を返済していく見通しが立たなくなってしまった場合の手段として、自己破産という制度を耳にしたことがあると思います。

自己破産とは裁判所に債務の返済が困難であることを申し立て、裁判所から、債務の支払義務の免除(免責)を受ける手続です。

税金などの一定の債権を除いて一切支払う必要がなくなる手続ですが、一定以上の価値のある財産を所有している場合、それらを手放さなければならなくなってしまいます。

一定以上の価値のある財産については、破産管財人という裁判所から選任される役職の人間によって、売却され(「換価」といいます。)代金は債権者への配当にあてられてしまいます。

ここからは、自己破産の流れについてご説明します。

(1)自己破産の流れ

ここでは、自己破産手続の流れ全般についてご紹介します。

  1. 弁護士に自己破産を依頼
  2. 弁護士から債権者に対して受任通知を送付(債権者からの督促が中断)、取引履歴の開示請求
  3. 自己破産の申立て
  4. 破産手続開始の決定
  5. 免責決定

依頼から免責決定まで半年以上かかることもあります。また、住んでいる家をはじめ、財産を手放さなければならないどうかはこの流れの中で決まります。次に、家を手放すケースと手放さないケースについてみていきましょう。

2.自己破産で家を手放すケース・手放さないケース

自己破産で家を手放すケース・手放さないケース

家の名義人が誰であるかによって、家を手放さなくてもよいケースがあります。

家族の名義となっている場合、その家族が破産手続前に亡くなり相続が発生しているものの、その方からの名義変更がなされずそのままになっている場合には、破産者本人にも法定相続分が認められるため注意が必要です。

まずは、不動産の登記事項証明書で名義人について確認します。

名義が誰かによって、家を手放すかどうかがが決まります。

以下の三つのケースに分けてご説明します。

(1)本人名義の家

自己破産手続では、本人の名義の家は手放さなければなりません。

なお、自己破産手続前に、本人名義の家を家族名義に変更することは財産隠しによる詐欺破産罪に問われてしまう可能性があるため、注意しましょう。

(2)家族名義で、その家族が亡くなってしまっている場合

家族名義の家を相続したものの、分割協議等によって所有者が決まるまでの間は相続人全員が共有していることになります。

破産者が相続人である場合は法定相続分の持分で共有しているということです。この場合、相続を放棄することにより、他の相続人である家族名義にして家を破産手続から除外することができます。

ただし、破産手続の開始前に相続が発生していて、相続放棄の申述を破産手続の開始決定後に行った場合、その相続放棄は破産財団との関係で、限定承認の効力を有するものとされます(破産法238条)。

これにより、破産の手続中では相続放棄の効果が認められず、相続財産は最終的に債権者への配当にあてられることになってしまいます。

したがって、相続放棄をするのであれば、破産手続の開始決定前にしておく必要があります。

なお、相続財産自体が債務超過になっているなど限定承認の効力を与えても破産財団の増殖が見込めないような場合、破産管財人の権限で相続放棄の効力をそのまま認めることもあります。

(3)本人以外の名義の家は手放す必要はない

破産管財人が財産調査を進める中で対象となるのは、基本的に破産手続をおこなう本人の財産です。

したがって、本人以外の名義の家であれば原則として手放す必要はありません。

3.いつまで家に住み続けられるのか

いつまで家に住み続けられるのか

ローン残高より不動産価格が上回っており、売却することで余剰が生まれると想定される場合には、処分の選択肢に幅があります。申立て前に処分することができると、メリットが大きいこともありますが、財産隠しを疑われる可能性もあるため、必ず弁護士に相談しましょう。

家の処分については、申立て前に処分する以外に、破産手続中に処分するケースもあります。

(1)申立て前に処分する

自己破産の申立て後、破産管財人が裁判所によって選任されると、所有している財産は破産管財人の管理下に置かれるため、不動産を自由に売却することはできなくなります。

自己破産の申立て前の処分も、適正な価格での売却ができていないと、破産手続中、破産管財人による否認の対象となったり、場合によっては詐欺破産罪に問われるなどの問題が生じてしまいます。

また、売却によって得た代金についても、不用意に消費してしまうと、浪費や財産隠しと判断されてしまうことがあります。

したがって、申立て前の処分については、どのように代金を定めるか、どのように売却の手続を進めるかについて、弁護士にしっかり相談してから行うべきです。

適正な価格による売却ができてその後の代金の保管等も適正であれば、売却代金で残ったローンを完済し、さらに財産が残るようであれば、自己破産の申立てにかかる費用にあてることも可能です。

また、自己破産手続が開始されても手持ちの現金については、その他の財産と合わせて99万円以下であれば自由財産として配当にあてられることなく、所有し続けることができます。

(2)破産手続中に処分する

申立て前に処分しない場合はどうでしょうか。

自己破産の手続を行う場合、弁護士が依頼を受け、債権者に受任通知を送付した時点で、債権者からの督促は停止します。

その後、申立ての準備中は債務を支払う必要がなくなりますし、むしろ、特定の債権者に対する支払は、のちに偏頗弁済として問題となる可能性もある行為です。

そのため、債務に住宅ローンが含まれている場合、住宅ローンの支払もできない状態となります。

そのまま破産手続が進めば、手続中に家が売却されることになりますが、それまでの間、家のローン返済の支払をしないまま住み続けられることになります。

4.自己破産での家の処分方法

自己破産での家の処分方法

自己破産をすると、基本的に家は手放さなければなりません。その場合、家は競売にかけられて処分されるというイメージがあるかもしれません。

しかし、一般には、競売以外の方法で処分されることが多いです。

(1)任意売却

任意売却は、不動産業者を介し家を売却する手続のことです。

破産管財人が任意売却先を探し、売却することになります。

競売の場合、最終的な売却価格は市場価格の7~8割となることが多い一方、任意売却であれば当然市場価格での売却となります。

競売に比べて高い金額で売却することができれば、それだけ債権者への配当が増えることになりますので、破産管財人としては、まず任意売却による処分を検討することになるのです。

(2)競売

競売(けいばい)は裁判所を通じておこなわれます。実際に競売開始の決定がなされてから物件の引渡しまで時間がかかるため、それまではそのまま家に住み続けることが可能です。

競売の流れは以下のとおりであり、競売開始決定から引渡しまで、通常半年以上はかかります。

  1. 裁判所による競売開始の決定
  2. 競売が申し立てられて、裁判所に受理されたのち競売開始の決定がなされます。
  3. 現況調査
  4. 入札期間、最低入札価格の決定
  5. 入札・落札
  6. 裁判所による売却許可の決定
  7. 物件の引渡し

(3)家族による買取

家族や親戚に家を買い取ってもらう方法があります。

ただし、親族間の売買でローンを申し込んでも断られることがほとんどのため、家族が家を買う際には、通常、一括払いでの購入となります。

また、家族だからといって安くして売ることはできず、適正価格で売買しなければなりません。

破産手続開始決定後の場合、破産管財人および裁判所に認めてもらわなければ売却ができませんので、そのために、適正な価格で売買する必要があります。

また、手続開始決定前に家族に買い取ってもらう場合、価格が適正でないと、財産隠しのための名義変更と判断され、詐欺破産罪にあたるとされてしまう可能性もあります。

そのため、家族による家の買取りは、少なくとも弁護士に相談した上で手続を進めるべきです。

5.自己破産後のお住まい

自己破産後のお住まい

自己破産後の家はどう確保したらいいのか、新たに賃貸借契約を結べるのか心配になる方もいらっしゃるでしょう。

自己破産をしたからといって、賃貸借契約が結べないわけではありません。

では、実際にどのような方法があるのか一つずつご紹介します。

(1)家族名義の家に住む

繰り返しになりますが、家族名義の家であれば家を手放さくてよいため、そのまま住むことが可能です。

(2)別物件の賃貸借契約を結ぶ

自己破産をしたとしても、賃貸契約を結ぶことは可能です。ただし、物件によっては保証会社の審査が必要な場合もあるため、注意しなければなりません。

自己破産をすると、その事実が信用情報機関に破産者の事故情報として登録される、いわゆる「ブラックリスト入り」状態になるため、信販系の保証会社の審査に通るのが難しくなるためです。

新しい住居を賃貸で探す場合は、保証人不要の物件や、会社の保証なく保証人のみで済む物件を探すようにしましょう。

(3)売却先の買主と元の家の賃貸借契約を結ぶ

任意売却、競売によって家を買い取った買主と協議し、賃貸借契約を結ぶ方法があります。

買主と話し合って認めてもらう必要がありますが、これにより、家賃を支払うかわりに引き続き同じ家に住むことが可能になります。

まとめ

自己破産をすると、基本的には本人名義の家は手放すことになります。しかし、手続後すぐに失うわけではありません。

その間に、家を手放した後の住居について考えることができます。

 
賃貸借契約を結ぶ以外に従前住んでいる家での生活を続けたければ、他の債務整理を検討する必要も出てきます。

弁護士に相談の上、自己破産の手続を行う前に他の手段も含めしっかり検討しておくことをおすすめします。

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 第二東京弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。