自己破産をすると滞納している家賃はどうなる?自己破産時の注意点

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

「自己破産したら滞納している家賃はどうなるのか」
「自己破産をしたら家賃を滞納している物件から出て行かなければならないのか」

自己破産を検討している方で、滞納している家賃はどうなるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、自己破産と滞納家賃の関係性や自己破産時の注意点についてご紹介します。

1.自己破産をしたら滞納した家賃はどうなるのか

自己破産をしたら滞納した家賃はどうなるのか

滞納している家賃は自己破産の免責対象です。

自己破産によって裁判所から免責が認められると、滞納している家賃の支払いが免除されます。

自己破産をすると、公租公課や養育費、罰金などを除いた借金は、原則として支払う必要がなくなるのです。

また、家賃のほかにも、水道光熱費も免責の対象となります。

そのため、自己破産によって上水道・ガス・電気料金も支払いが免除されるので、一緒に覚えておきましょう。

なお、細かい点になるのですが、水道料金に関しては、上水道使用料金は自己破産の免責対象ですが、下水道使用料金は免責の対象外です。

下水道使用料金は行政が徴収しており、税金のような扱いになるため、下水道使用料金は、自己破産後も支払い義務が残ります。

2.自己破産の注意点

自己破産の注意点

滞納家賃がある方は、自己破産において知っておくべきことがあります。

自己破産の注意点は以下の6点です。

  1. 自己破産で支払義務が免除される対象
  2. 賃貸契約に連帯保証人がいる場合
  3. 賃貸契約が解除される可能性
  4. 保証会社が家賃を立て替えていた場合
  5. 公営住宅に住んでいる場合
  6. 自分で自己破産手続きをする場合

自己破産後、トラブルに発展する可能性があるので、これらのポイントは押さえた上で自己破産の手続を行いましょう。

(1)自己破産で支払義務が免除される対象

自己破産で支払義務の免責対象は、破産手続開始時に存在していた債務のみなので注意しましょう。

つまり、破産手続開始後に発生した債務は手続中でも返済義務があります。家賃に関しても同様です。

自己破産の免責が決定しても、破産手続開始後の家賃を含む債務は支払わなければなりません。

たとえば、2023年3月1日に破産手続を開始した場合、2023年2月分までの家賃が免責対象で、2023年の3月分以降の家賃は支払い義務が残ります。

自己破産の免責が決定するまでの家賃が対象ではない点に気をつけましょう。

(2)賃貸契約に連帯保証人がいる場合

賃貸契約に連帯保証人がいる場合は、自己破産をすると、賃貸借契約に関する債務の請求が保証人に行われます。

たとえば、入居時に親族や友人や連帯保証人になってもらった場合、破産手続を開始すると、家の貸主が連帯保証人に対して残りの債務の返済を請求することになります。

債務者本人は自己破産によって返済義務が免除されますが、連帯保証人に負担はかかってしまうことになります。

そのため、連帯保証人がいる場合は、自己破産の手続を開始する前に、連帯保証人に対して自己破産を行う旨を伝えておきましょう。

(3)賃貸契約が解除される可能性

家賃の滞納が長期間続くと、賃貸契約が解除される可能性もあります。

自己破産に関係なく、貸主は家賃の滞納がある場合、債務不履行として、借主に対して賃貸契約の解除を要求することが可能です。

そもそも賃貸契約は、借主が毎月の賃料を支払う代わりに賃貸物件に住むことができるという契約なので、家賃の滞納が続くと契約が解除されても仕方がありません。

自己破産によって滞納している家賃の支払義務が免除されて家賃が支払われないと、賃貸借契約の解除を求められる可能性が高くなります。

滞納家賃があって自己破産を行う場合には、予め家賃の滞納を解消するか引っ越しをするか弁護士に相談しながら検討しておくことが大切でしょう。

(4)保証会社が家賃を立て替えていた場合

保証会社が家賃を立て替えた場合でも退去を迫られる可能性があるでしょう。

賃貸契約は借主が貸主に対して賃料を支払うという契約ですが、家賃保証会社と契約をしている場合は、借主が賃料を払わない際は、家賃保証会社が立て替えることになります。

貸主は家賃保証会社から家賃の支払いを受けているため、一見不払いはないように思うかもしれません。

しかし、借主が賃料を支払っていない時点で契約の義務に反しているため、当事者間の信頼関係が崩れているとみなされれば、契約を解除されることがあります。

したがって、家賃保証会社に立て替えてもらっているからといって、必ずしも契約が継続されるとは限らない点を押さえておきましょう。

(5)公営住宅に住んでいる場合

住居が公営住宅の場合も、自己破産の申立て時に相当期間の家賃を滞納している場合は賃貸借契約が解除され、退去を求められます。

公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者などに対して整備された住宅なので、救済制度として活用されるものです。

しかし、家賃を支払わなければ、一般の賃貸物件と同様に契約を解除されます。

そのため、公営住宅に住んでいる場合であっても、自己破産の準備を進める際には、家賃の滞納の解消か新しい住居への転居を同時に検討しましょう。

なお、転居を考えても住める場所がどうしても見つからない場合は、役所の生活福祉課に相談して、次の住居を確保することをおすすめします。

(6)自分で自己破産手続をする場合

自分で自己破産の手続をする場合は、ライフラインが止まるリスクに注意しましょう。

破産法第253条によると、自己破産の手続中、使用料金が未納状態でも、ガス会社や電力会社がライフラインを停止してはいけないことになっています。

ただし、そのためには破産開始手続のことをそれらの会社に通知をしなければなりません。

弁護士に自己破産の手続を依頼したり、破産管財人が選任されたりした場合は、ガス会社や電力会社に破産開始手続の通知が行われますが、自分で手続を行う場合は、ご自身で通知をしない限り、各会社に通知が届きませんので注意してください。

この点からも、自己破産手続きを自身で行うのではなく、弁護士に依頼するほうが無難といえるでしょう。

3.自己破産申立から退去までの主な流れ

自己破産申立から退去までの主な流れ

滞納家賃があって滞納を解消せずに転居する場合の自己破産申立から退去までの大まかな流れについてご紹介します。

主な流れは以下のとおりです。

  1. 裁判所が債権者に通知
  2. 引渡し予定日の交渉
  3. 賃貸物件から退去

滞納した家賃が免責の対象となる場合、基本的には賃貸借契約が解除され、退去を求められる可能性が高いため、その場合の大まかな流れを押さえておきましょう。

(1)裁判所が債権者に通知

自己破産の申立てをすると裁判所から貸主に対して破産手続開始の旨を通知します。

貸主も破産者が提出する債権者一覧表に記載するため、貸主は裁判所から債権者として取り扱いをうけることになります。

裁判所から受け取った通知によって、貸主は借主が自己破産の申立てを行った事実を知ることになるでしょう。

(2)引渡し予定日の交渉

裁判所から通知を受け取った貸主は、借主に対して契約を解除の上、退去を求める可能性があります。

貸主から賃貸契約の解除を求められ、滞納家賃の解消ができない場合には、新しい住居を見つけなければなりません。

しかし、すぐに転居先が見つかるとは限らず、ある程度の猶予が必要な場合もあります。

そこで、引越しの目処が立つまでは、しばらくの間住ませてもらえるように、貸主と引渡し予定日の交渉を行いましょう。

なお、先ほど述べたように、破産手続開始後に発生した家賃は支払い義務があるため、家賃を払うなどして新たな滞納が生じていかないようにしましょう。

(3)賃貸物件から退去

引越しの目処が立ったら、なるべく速やかに退去しましょう。

なお、賃貸契約時に敷金を支払っている場合は、退去時に修繕費用などが差し引かれた残額が返還されます。

敷金から退去までの債務が差し引かれることは自己破産をしていたとしても同様です。

返還額が99万円以下で、住宅用として契約していた賃貸借契約の敷金は、債務者の自由財産として返還を受けることができるでしょう。

まとめ

これまで説明させていただきましたが滞納した家賃は自己破産で支払義務が免除される対象です。

ただし、自己破産により賃貸借契約を解除され、退去を求められる可能性があります。

自己破産を申立てするに際して、転居を考える場合には、スムーズに引越しできるように、手続の準備と同時進行で転居先を探しておき、なるべく早くに引越しができるように進めましょう。

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執筆者 花吉 直幸 弁護士

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