自己破産を申し立てるときに家計簿は必要?家計収支表の作成ポイントを解説
「自己破産では家計簿を提出する必要があるのか」
「通常の家計簿と同じように作成をしてもいいのか知りたい」
借金の返済ができなくなり、自己破産を行うことを検討されている方の中には、このような疑問や不安をお持ちの方もいると思います。
自己破産は、借金の返済が困難であることを裁判所に申し立て、裁判所から免責許可決定を受けて借金の返済義務を免除してもらう手続です。
同じ債務整理の手続である任意整理と個人再生では、返済義務自体が免除されるわけではないため、自己破産を行うメリットは大きいといえます。
しかし、裁判所を通して手続を行うため、申立てにあたってはさまざまな書類や資料を提出する必要があります。
その中でも、家計収支表と呼ばれる書類の内容は、自己破産の手続にも影響を与える重要な書類です。
そして、家計収支表は通常の家計簿とは異なり、作成にあたってはいくつかの注意点もあります。
本記事では、自己破産の申立てで家計収支表が必要とされる理由や記載項目、作成のポイントなどについて解説します。
自己破産の手続の流れや注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
1.自己破産で家計収支表が必要な理由

自己破産を裁判所に申し立てる際には、申立書などの必要書類とあわせて、家計収支表などの提出も求められます。
先ほども述べたように、自己破産を申し立て、裁判所から免責許可決定を受けると、債務者は借金を返済する必要がなくなります。
反面、これによって債権者は自らの債権の回収を図ることができなくなってしまい、大きな不利益を被ります。
そのため、自己破産によって免責が認められるためには、裁判所に「頑張ってはいるが返済は著しく困難である」ということを認めてもらう必要があります。
この結果、自己破産を申し立てる者には、主に以下のような観点から家計収支表の提出が求められています。
- 支払不能の要件を満たしているか判断する
- 免責不許可事由に該当する事情がないか確認する
なお、家計収支表のほかにも、自己破産の申立てでは提出する必要がある書類や資料があります。
詳細については以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
(1)支払不能の要件を満たしているか判断する
自己破産は、裁判所を通して進める手続であるため、申立てを行うことができる要件について法律で定められています。
具体的には、以下の要件を満たす場合に申立てを行うことができます。
- 支払不能に陥っていること
- 適法な申立てであること
このうち、支払不能であるかどうかを裁判所が判断するために家計収支表が必要とされているのです。
支払不能とは、すべての債権者に対して継続的に返済ができない状態をいいます。
そして、借入総額や収入、支出のバランスによって支払不能であるかどうかが判断されます。
そのため、家計収支表に記載されている支出の金額を改善することで返済できる可能性がある場合には、支払不能と評価されずに申立てが認められない場合があるのです。
例えば、月々の余剰を見ると返済に回せる金額は確かにないのだが、外食や遊興にお金を使いすぎているような場合には、これを節約して返済をすることができると考えられてしまい、支払不能と認められない可能性があります。
自己破産の申立要件については、以下の記事で詳しく解説しています。
(2)免責不許可事由に該当する事情がないか確認する
家計収支表の内容は、裁判所が借金の返済義務を免除する免責許可の判断を下す際にも重要な意味を持ちます。
自己破産を申し立て、裁判所が手続開始決定を下したとしても、自動的に免責許可決定を受けられるわけではありません。
免責が認められるためには、「免責不許可事由」と呼ばれる事由に該当しないことが必要です。
免責不許可事由とは、破産法で定められている事由であり、これに該当する場合には借金の返済義務が免除されない可能性があります。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 一部の債権者のみに返済した(偏頗弁済)
- 借金の主な原因がギャンブルや浪費にある
- 財産を隠したり処分したりした
- 自己破産を行う前提で新たな借入れを行った など
家計収支表に不自然な支出や収入が記載されていれば、免責不許可事由に該当するような事情があると裁判所に疑われる可能性もあります。
しかし、上記のような行為があったとしても、裁判所に提出する家計収支表に虚偽の記載や改ざんを行ってはいけません。
裁判所に提出する書類や資料を改ざんする行為も免責不許可事由として定められているからです。
また、家計収支表に虚偽の記載や改ざんを行ったとしても、裁判所は預金通帳などのほかの資料とも照らし合わせて確認するため、不自然なお金の動きがあれば発覚することがほとんどです。
そのため、家計収支表を作成する際には、上記のような事情があったとしても、隠さずに正直に記載することが大切といえます。
なお、免責不許可事由に該当する事情があったとしても、申立人が真摯に反省し、更生の余地があると裁判所が判断した場合には、裁量によって免責を受けることができます(裁量免責)。
免責不許可事由と裁量免責については、以下の記事も参考になります。
また、免責不許可事由に該当する場合や該当する事情の有無が判断できない場合には、管財事件に振り分けられ、手続が複雑化したり長期化したりする可能性が高まります。
管財事件の概要や手続の流れ、注意点については以下の記事もあわせてご覧ください。
2.家計収支表の記載項目

自己破産を申し立てる際に裁判所に提出する家計収支表は、収入と支出を分けて記載する必要があります。
また、1か月ごとにまとめて記載することが求められます。
どのような項目がそれぞれに該当するのかについてご説明します。
(1)収入の記載項目
収入は、以下のような項目について記載します。
- 繰越金
- 給与・賞与
- 自営収入(自営業の場合)
- 年金・生活保護(受給している場合)
- 児童手当など(受給している場合)
- 借入金
- そのほかの収入(税金の還付金などがあった場合)
- 収入合計額
なお、「繰越金」は、手元にあるお金の金額を指し、預貯金の総額と手元にある現金を合計したものです。
一般的に自己破産の際に提出が求められる家計収支表は、数か月分にわたって作成します。
そして、月をまたいで手元に残った金額がある場合には、次月の繰越金として記載するようにしましょう。
繰越金の記載金額にズレがある場合には、財産隠しなどを疑われる可能性もあるため、正確に記載することが重要です。
(2)支出の記載項目
支出には、以下のような項目を記載することが求められます。
- 家賃・地代(賃貸住宅の場合)
- 住宅ローン
- そのほかのローン(自動車、バイクなど)
- 水道光熱費
- 電話・インターネットの通信費
- 食費
- 日用品費
- 交通費
- ガソリン代
- 医療費
- 教育費
- 娯楽費
- 交際費
- 返済額
- 支出総額
収入と比較しても、項目が細かく分かれているため、作成を進める際には慎重さが求められます。
例えば、賃貸住宅に住んでいる場合には、管理費や修繕積立金についても「家賃・地代」に含めて記載しましょう。
なお、友人や職場の人と食事をした場合には、「食費」ではなく「交際費」として計上する必要があります。
また、「返済額」には借入れの返済だけでなく、クレジットカードの利用料の引落しについても記載しておく必要がある点に注意しましょう。
3.家計収支表を作成する際の注意点

裁判所に提出する家計収支表は、慎重に作成する必要があります。
記載内容に不備や誤りがある場合には、手続が遅延したり申立てが認められなかったりする事態にもなりかねません。
家計収支表を作成する際には、以下の点を押さえておきましょう。
- 申立てを行う2~3か月前から作成を進める
- 金額を正確に記載する
- 世帯全体について記載する
- 領収書などを揃えておく
順にご説明します。
(1)申立てを行う2~3か月前から作成を進める
裁判所の運用によっても異なりますが、申立てを行う前の2~3か月分の家計収支表の提出が求められることが多いです。
そのため、申立てを行う前から準備を始める必要があります。
なお、自己破産は裁判所を通して行う複雑な手続であるため、弁護士に依頼して進めることが一般的です。
そして、申立てを行うまでにはさまざまな書類を作成したり資料を収集したりする必要があり、弁護士に手続を依頼してから申立てまでには数か月を要することが多いといえます。
そのため、弁護士に相談する時点では家計収支表を作成していなくても問題はありません。
弁護士に手続を依頼した段階で作成に着手することになりますが、どのような点に注意しながら作成を進めるべきか判断が難しいことも多いです。
また、家計収支表は一度作成して提出すればよいものではなく、手続が進行している間についても作成・提出を求められる場合があります。
特に自己破産の手続を債務者本人が行う場合には、家計収支表の不備などが指摘され、手続が長期化したり免責許可決定の判断に影響を与えたりする可能性があります。
そのようなリスクを回避するためにも、弁護士に手続を依頼した上で家計収支表の作成についてもサポートを受けることが大切です。
(2)金額を正確に記載する
収入と支出の各項目については、正確な金額を記載することが重要です。
特に水道光熱費や通信費などの固定費については、領収書などの資料とも照らし合わせて整合的に記載することが大切です。
なお、食費や日用品費などについては概算でもよく、千円単位で切り上げるなどの対応でも大きな問題はありません。
しかし、あまりにも金額が不正確であれば、実際の収支との間に齟齬が生じ、裁判所に財産隠しや浪費を疑われるリスクが高まります。
そうすると、免責を受けることができなくなってしまう可能性も高まり、返済義務が免除されなくなってしまう事態にもなりかねません。
免責が認められなければ自己破産を行うメリットも失われてしまうため、そのようなリスクや不利益を回避するためにも正確な金額を記載することを意識しましょう。
(3)世帯全体について記載する
収入と支出を記載する際、申立人に同居している家族がいる場合には、世帯全体の収支について合算して記載する必要がある点にも注意しましょう。
また、配偶者と別居していたり子どもが下宿していたりして同居していない場合でも、仕送りなどをしているのであれば、その金額も記載する必要があります。
(4)領収書などを揃えておく
支出については、金額だけでなく使途も確認されることになるため、領収書や明細などの資料も別途揃えておくことが大切です。
特に水道光熱費や通信費などの固定費については、口座振替により引落記録がない場合には、家計収支表への記載とあわせて領収書の提出を求められることが珍しくありません。
また、食費や日用品の購入費用などの項目については概算でも問題はありませんが、支出が多い場合には追加で領収書などの提出を求められることもあります。
特に自己破産の申立ての後にも家計収支表の作成と提出を裁判所から求められる場合には、領収書などの資料もあわせて提出することが求められるケースもあります。
そのため、少なくとも弁護士に手続を依頼して以降の支出についても、領収書などによって客観的に金額を証明・説明できるようにすることが望ましいといえるでしょう。
4.自己破産について弁護士に相談するメリット

自己破産は、裁判所から免責許可決定を受けることで借金の返済義務が免除されますが、家計収支表の作成・提出が求められるなどの対応を適切に行うことが大切です。
しかし、知識や経験がなければどのような点に注意しながら対応を進めるべきか判断が難しいことも多いです。
また、家計収支表をはじめとする提出書類や資料に不備があることで、浪費や財産隠しを疑われると、手続が複雑化して時間がかかる事態にもなりかねません。
そのため、自己破産を行うことを検討されている方は、まずは手続全体の見通しも含めて弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 自己破産を行うことが適しているか説明を受けることができる
- 手続を依頼することで返済をストップできる
- 手続の準備についてサポートを受けることができる
- 免責を受けるためのアドバイスやサポートを受けることができる
それぞれについて見ていきましょう。
(1)自己破産を行うことが適しているか説明を受けることができる
自己破産を申し立てるためには、要件を満たす必要があります。
また、要件を満たしていたとしても、自己破産による解決が適しているかどうかは借入総額や収入、財産状況などによっても異なります。
自己破産を行うと、住宅や車などの一定額以上の財産については、手続の中で換価処分が行われ、債権者に配当されてしまいます。
そのため、住宅などの財産を手放さなければならないことが多く、生活や仕事に影響が生じることもあるのです。
継続的に収入を得ている場合には、任意整理や個人再生といったほかの手続を行うことで、生活や仕事への影響を抑えることができる場合もあります。
このように、自己破産を行うべきかどうかについては、手続の特徴や注意点も踏まえて検討すべき事柄です。
しかし、専門知識がなければ判断することは難しい場合がほとんどです。
弁護士であれば、借入総額や収支状況はもちろん、生活への影響などさまざまな観点から一人ひとりに最適な解決方法を提案することができます。
自己破産を行うことを検討されている方も、ほかの選択肢の可能性を考えることにつながるため、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
自己破産以外の手続の特徴や比較については、以下の記事も参考になります。
(2)手続を依頼することで返済をストップできる
弁護士に手続を依頼すると、債権者に対して受任通知という書面が送付されます。
受任通知には、債権者が債務者に対して直接督促や取立てを行うことを禁止する法的効力があります。
これによって、債権者への返済を停止することが可能です。
自己破産を債務者本人が申し立てる場合には、受任通知が送付されず、債権者からの督促や取立ても停止しません。
そのため、債権者からの連絡がある中で自己破産の手続を進めることは精神的な負担も大きいといえます。
弁護士に相談の上で手続を依頼すると、そのような負担を回避することができ、手続をスムーズに進めることにもつながります。
(3)手続の準備についてサポートを受けることができる
弁護士に手続を依頼することで、申立てまでの準備についてもサポートを受けることができます。
すでに述べているように、自己破産を申し立てる際には家計収支表をはじめ、さまざまな書類や資料の提出が必要です。
しかし、どのような資料が必要となるかは債務者の財産状況によっても異なります。
知識や経験がない場合には、不足なく書類や資料を揃えることは難しい場合がほとんどです。
また、手続の準備中に家計収支表の作成を進めることになりますが、裁判所から財産隠しや浪費などを疑われないためにも、正確な記載を行う必要があります。
特に支出の総額に対して食費や娯楽費の割合が高い場合には、手続を進めるにあたって支障が生じることもあるため、節約を心がけるなど生活を改めることも大切です。
このように、申立てまでにはさまざまな準備が必要となり、書類・資料の不備や生活態度に問題があれば手続を進めることができなくなったり免責を受けられなくなったりする可能性があります。
弁護士に依頼することで、準備期間中に対応すべきことや注意点についても説明やサポートを受けることが可能です。
(4)免責を受けるためのアドバイスやサポートを受けることができる
自己破産を申し立てても、免責不許可事由に該当するような事情があれば、免責を受けることができない可能性があります。
しかし、どのような行為が免責不許可事由に該当するか判断がつかない場合、手続の準備中や手続中に知らず知らずのうちに行ってしまうこともあります。
弁護士に手続を依頼することで、免責不許可事由に該当するような行為をしてしまうことをあらかじめ防ぐことが可能です。
なお、弁護士に相談した時点で免責不許可事由に該当するような事情があったとしても、必ずしも免責が認められないとは限りません。
先ほども述べたように、裁判所が裁量で免責許可を与える裁量免責という制度があるからです。
弁護士であれば、裁量免責を受けるために押さえておくべきポイントや裁判所への対応などについても熟知しています。
例えば、ギャンブルや浪費などによって自己破産の申立てに至った場合には、反省文などの提出を追加で求められることが多いです。
弁護士に手続を依頼することで、裁量免責を受けるための対策を適切に進めることもできます。
まとめ
本記事では、自己破産を申し立てる際に家計収支表の作成と提出が求められる理由や作成のポイントなどについて解説しました。
裁判所は、免責許可決定を下す際の判断要素として家計収支表の記載内容を参照するため、正確に記載することが求められます。
金額に大きなズレや誤りがある場合には、裁判所から説明や修正を求められたり、免責を受けることができなくなったり、手続の進行にも影響を及ぼす可能性があります。
また、裁判所には、2~3か月分の家計収支について記載したものを提出する必要があり、場合によっては手続中にも作成と提出を求められることがあります。
しかし、自己破産では家計収支表以外にもさまざまな書類の作成や資料の収集などを行う必要があり、知識や経験がなければ適切に対応することは困難です。
そのため、自己破産を行うことを検討されている方は、手続の見通しも含めて弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士法人みずきでは、これまでに債務整理の手続に数多く対応してきましたので、自己破産を行うことについてお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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