自己破産をしても起業はできるの?自己破産後の起業の三つの注意点

執筆者 中越 琢人 弁護士

所属 第二東京弁護士会

弁護士は、スーパーマンではありませんが、他人が抱える紛争の解決のため、お手伝いをすることができます。私は、一件一件丁寧で誠実な対応を心がけ、問題解決のためにできることはやり尽くすという姿勢でおります。皆様の不安が解消され、平穏な生活を送ることができるようになるまで、紛争解決のお手伝いを致します。

「自己破産をしても起業はできるのか」
「自己破産後の起業で資金に困ったときはどうしたらいいのか」

自己破産を検討している方の中には、近い将来に起業する予定があり、資金面で不安に思っている方もいるでしょう。

この記事では、自己破産後に起業するときの注意点や資金集めに困ったときの対処法についてご説明します。

1.自己破産後に起業できるのか

自己破産をしても起業することは可能です。

ただし、自己破産の手続中・手続後に、いくつかの制限を受けることにはなります。

まず、自己破産の手続中の制限として、以下の職種は資格制限の対象となり、自己破産手続中は活動することができません。

  • 各種の士業
  • 警備員
  • 保険外交員
  • 貸金業者
  • 旅行業務取扱主任者など

自己破産手続中とは、「裁判所が破産開始の決定を行ってから、免責決定が確定するまでの間」のことをいい、短くても3か月は制限を受けることになります。

そのため、免責許可が確定しないと、上記職種での企業はできません。

2.自己破産後に起業するときの注意点

自己破産後に起業するときの注意点

自己破産後に起業するときにも、自己破産手続中と同様に、いくつかの制限を受けます。

以下の点について、特に注意すべきです。

  1. 事故情報が登録されている間は借入れができない
  2. 必要最低限の財産からスタートすることになる
  3. 賃貸物件が制限され事務所を用意することが難しくなる

自己破産後にどのような制約を受けることになるのか確認しましょう。

(1)事故情報が登録されている間は借入ができない

自己破産をすると信用情報機関に事故情報として登録されるので、その間は借入れを利用することができません。

事業の規模によりますが、起業の際には数百万かかるのが一般的で、少なくても数十万用意する必要があります。

通常であれば銀行などから借入れをすることで資金を集めることになりますが、自己破産後は融資を受けることができないため、起業資金を集めることが困難となります。

しかし、条件を満たす必要はありますが、後にご説明する支援対策を利用することで融資を受けられないデメリットは解消できます。

なお、信用情報機関に登録されている事故情報は一定期間(5~10年間)経過すれば削除されるので、地道にお金を貯めつつ削除されるまで待つのも選択肢の一つでしょう。

(2)必要最低限の財産からスタートすることになる

自己破産によって、家や土地など20万円を超える資産価値の高い財産は処分されてしまうため、生活に必要最低限の財産から事業をスタートすることになります。

高額な現金や預金もない状態からスタートすることになるので、起業してもしばらくは金銭面で苦しい状況が続くことを覚悟しなければなりません。

ただし、以下の財産は手元に残るため(自由財産)、一文無しの状態で事業を始めるわけではありません。

  • 99万円以下の現金
  • 20万円以下の預貯金
  • 査定額が20万円以下の車
  • 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下の退職金債権
  • 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7相当額
  • 家財道具
  • 破産手続開始後に取得した財産

99万円以下の現金と20万円以下の預貯金は残るので、生活にかかる資金を調整すれば起業後すぐに成果が生まれなくても生活することが可能です。

(3)賃貸物件が制限され事務所を用意することが難しくなる

賃貸物件が制限されるので、ニーズに沿った事務所を用意することが難しくなる点も頭に入れておく必要があるでしょう。

自己破産をすることで、信販系の賃貸保証会社を利用している賃貸物件とは賃貸借契約ができなくなります。

また、賃貸物件の中には、事務所使用不可のものもあるため、事務所として使う物件の選択肢が少なくなるのです。

広さやレイアウト、立地など希望する要件を満たした物件を見つけるのに時間がかかる可能性が高いことから、賃貸物件を事務所として活用する方は、不動産情報をしっかり確認するようにしましょう。

3.自己破産後の起業で資金に困ったときの対処法

自己破産後の起業で資金に困ったときの対処法

自己破産後の資金集めで困っている方は、再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)の利用を検討してみましょう。

再挑戦支援資金とは、廃業や自己破産などをした、一度事業に失敗した人を対象として日本政策金融公庫が提供している融資制度のことです。

自己破産をした人の挑戦を後押ししてくれるもので、この融資制度を活用することによって、自己破産で財産を処分された状態からでも起業することが可能になります。

ただし、再挑戦支援資金を利用するには以下の条件を満たさなければなりません。

  • 廃業歴等がある個人または経営者が営む法人であること
  • 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
  • 廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること

つまり、再挑戦支援資金は、過去に事業を営んでおり失敗した人を支援してくれる制度といえます。

(1)再挑戦支援資金の融資限度額と返済期間

三つ全ての条件を満たしている場合は、再挑戦支援資金制度によって、以下の限度で融資を受けることが可能です。

個人事業 中小企業事業
融資限度額(運転資金) 7,200万円(4,800万円) 7億2,000万円(2億5,000万円)
返済期間 設備資金:20年以内(内据置期間2年以内)

運転資金:7年以内(内据置期間2年以内)

設備資金:20年以内(内据置期間2年以内)

運転資金:7年以内(内据置期間2年以内)

個人事業と中小企業事業で受けられる融資は異なりますが、返済期間は同じです。

返済期間にゆとりがあるので、事業に専念することができるでしょう。

(2)再挑戦支援資金の注意点

再挑戦支援資金を利用するときは以下の三点を満たしているか確認しましょう。

  • 自己破産の免責が確定していること
  • 過去7年以内に廃業履歴があること
  • 日本政策金融公庫による審査を通過すること

自己破産の免責許可決定が確定していることで、起業後の事業に影響がないことを証明できます。

廃業してから7年以内に再挑戦支援資金を利用する必要がありますが、もし廃業してから7年を経過している場合は、事故情報が削除されたのちに銀行などの融資を検討してみてください。

日本政策金融公庫による審査では、事業計画や収支計画、返済能力などについて尋ねられるので、自己破産の手続を依頼した弁護士に再挑戦支援資金を利用するために何をすべきか確認しておきましょう。

まとめ

自己破産をした後でも起業することはできます。

しかし、自己破産手続中には資格制限を受けますし、自己破産手続後にも、融資を受けられない、賃貸物件が制限される等のいくつかの制約を受けることになります。

廃業によって自己破産した過去がある方は、再挑戦支援資金を利用することで融資を受けることができるので、条件に合致し、もう一度事業に挑戦しようと意欲がある方は活用してみてください。

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執筆者 中越 琢人 弁護士

所属 第二東京弁護士会

弁護士は、スーパーマンではありませんが、他人が抱える紛争の解決のため、お手伝いをすることができます。私は、一件一件丁寧で誠実な対応を心がけ、問題解決のためにできることはやり尽くすという姿勢でおります。皆様の不安が解消され、平穏な生活を送ることができるようになるまで、紛争解決のお手伝いを致します。