自己破産で破産管財人が選任されるケースとは?

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

自己破産の手続きにおいては申立後に裁判所から「破産管財人」が選任されるケースがあります。

この記事では、自己破産で破産管財人が選ばれるケースやその後の対応についてご説明します。

破産管財人が選ばれるからといって、特に心配される必要はありません。

この記事の内容を踏まえ、ご自身が自己破産を行うことが可能か確認されてみてください。

1.破産管財人とは

自己破産の手続きには①同時廃止事件、②管財事件の2つがあります。

同時廃止事件は、破産法第216条1項において「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない」と定められています。

破産者にこれといった財産が無く、破産手続の費用を支払うことが困難であると認められた場合に、同時廃止事件となります。破産手続開始決定と、破産手続廃止決定が同時に出されるため、同時廃止と呼ばれています。

一方で管財事件は、破産管財人が選ばれ、破産管財人が破産者の破産に至った事情や、財産の状況を調査します。

破産者の財産は破産管財人によって管理・回収・換価され、最終的には各債権者への配当されます。

申立の際に、破産者が手続きの種類を希望することは可能ですが、同時廃止事件・管財事件のどちらに振り分けられるかは、申立を受けた裁判所が申立書の内容を精査した上で判断します。

破産管財人も裁判所によって選ばれます。

そのため、破産者側で破産管財人を選ぶことは出来ません。

原則として、破産者と債権者らと利害関係のない弁護士が選任されます。

申立て裁判所の管轄する弁護士の中から選任されることが一般的です。

弁護士が選任される理由は、破産管財人の職務を進める上で法的な知識が不可欠であるためです。

2.破産管財人が選任されるケースとは

管財事件に振り分けられる典型的なケースは、大きく分けて以下の2つとなります。

(1)破産者が一定額以上の財産を保有している場合

破産者へ一定額以上の財産がある場合には、換価と債権者への配当が必要となるため、破産管財人が選任されます。

財産の金額基準については各地の裁判所にもよりますが、預貯金や保険の解約返戻金等、個別の財産で20万円を超える場合に管財事件とされるケースがあります。

一方、法人が自己破産した場合には管財事件となります。

法人が破産すると、法人・会社が消滅することになるので、財産等を全て処分する必要があるためです。

(2)破産者に免責不許可事由に該当する行為がある場合

破産者に財産が無い場合でも、ギャンブルや浪費等の免責不許可事由がある場合には、破産者へ免責を許可することが妥当であるかの調査が必要となるため、管財事件とされるケースがあります。

免責不許可事由とは、破産法において一定の事情がある場合に、裁判所は破産者の免責を許可しないと定めており、この「一定の事情」を免責不許可事由と言います。(免責とは、破産手続を行うことで、破産者の抱えている借金を裁判所に免除してもらうことを「免責」と言います。)

免責不許可事由の該当ケースとして多く挙げられるのは、浪費やギャンブルの為の借入や、換金行為(クレジットカードで借り入れた物品を現金化すること)、偏波弁済(支払停止後、特定の債権者にだけ返済する行為)等があります。

しかし、免責不許可事由がある場合でも、破産管財人が調査を行い、破産者への免責に対する意見を裁判所へ出すことで、免責不許可事由がある場合でも免責を許可する「裁量免責」を認めてもらうことができます。

また、上記の2つに当てはまらない場合でも、資料が不足していたり、破産に至った経緯などが分かりにくく、裁判官が調査を必要と判断したりした場合には、破産管財人が選任されることがあります。

これは、弁護士や司法書士へ依頼せず、本人が破産申立を行った場合に考えられるケースも同様です。

3.破産管財人の役割・職務内容

では、破産管財人が選任された場合、破産管財人は実際にどの様な業務を行っていくのでしょうか。

ここでは、破産管財人の役割や、具体的な職務内容について説明していきます。

(1)破産者の債権額の確定

破産管財人は、破産手続開始決定前に破産者が有していた債務(破産債権)を調査します。

各債権者へ適切に配当を行うために、各債権の金額・内容を把握する必要があるためです。

各債権者から提出された債権届出書を基に、内容を精査して債権の内容・金額を調査し、債権の確定手続を行います。

(2)破産者の財産の調査

破産管財人は、申立書に記載されている破産者の財産状況が正しいか、破産者が隠している財産はないかを調査します。

また、申立の前に不当に財産を減少(無償で知人へ譲ったり、相場よりもかなり低い金額で売却している等)があった場合には、破産管財人はその破産者の行為を取消すことができます。

調査のために、破産者本人と破産管財人で面談を行われることが一般的です。(申立代理人が居る場合には、申立代理人も同席することができます。)

破産者はきちんと調査に協力しなければならず、調査への協力を拒否したり、虚偽の申告を行った場合、破産が認められない免責不許可事由に該当し、破産ができなくなってしまいます。

(3)郵便物の確認

破産管財人が選任されると、破産者宛の郵便物が破産管財人の事務所へ転送されます。

破産管財人は郵便物を開封し、内容を確認します。

転送されるのは、郵便局を通す郵便物(手紙・はがき・レターパック等)が対象となります。

(4)破産者が所有していた財産の換価

破産管財人の職務で最も重要な役割は、破産者の持っている財産を管理、換価(現金化)し、換価した現金を各債権者へ均等に配当することと言えます。

調査した財産を換価し、分配するお金を管理します。

(5)債権者集会で報告を行う

管財事件の手続き中は、裁判所で「債権者集会」という期日が開催されます。

破産管財人は期日へ出廷し、破産者の財産の換価状況等を報告します。

(6)配当手続き

破産者の財産を全て換価し終えたら、配当表を作成し、各債権者の債権額(前述(1)で確定したもの)に応じて配当します。

(7)破産者の免責許可について意見を述べる

破産者に免責を許可するべきかどうかの意見を述べます。

これは、破産に至った経緯や、破産者がきちんと反省しているか、破産者が手続きに協力的であるか、今後破産者が収入の範囲内で生活をしていくことができ、生活を立て直すことが可能かなど、様々な点を総合的にみて判断されます。

4.手元に残せる財産の範囲

破産管財人によって、破産者の所有する財産が換価されることが分かりました。

しかし、破産者の財産すべてを破産財団へ組み入れて換価してしまうと、破産者の生活が成り立たなくなってしまいます。

生活を立て直すべく破産手続きを行っているため、生活が成り立たなくなってしまっては本末転倒です。

そのため、破産者の生活に必要最低限度の資産については、破産財団に組み入れることなく財産を残すことができます。

これを自由財産といいます。

手元に残すことができる財産は以下になります。

(1)破産財団の範囲

破産財団の範囲は破産法34条に定められています。

同条は、1項で破産者が破産手続開始決定時点で有している一切の財産を破産財団とするとしているものの、3項で以下2点については破産財団に属しないとしています。

#1:民事執行法131条3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭

民事執行法には「標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」と定められています。

この金額は、民事執行施行令という政令に定められており、66万円とするとされています。

66万円を1.5倍した金額は99万円です。

したがって自己破産をしても現金であれば99万円まで手元に残すことができるということになります。

#2 :差し押さえることができない財産

民事執行法上で差押えをすることが禁止されている財産があります。それらを「差押禁止財産」と言います。

差押禁止財産として挙げられるのは、給料や賞与・退職金の4分の3に該当する部分(但し、給料の手取り金額が44万円を超える場合は、33万円のみ差押禁止となる。)や、生活必需品、食料や燃料、職業に必要な物(農家の場合、農機具など。)、国民年金・厚生年金・健康保険や生活保護給付金等社会保障のために受給する権利です。

(2)自由財産の拡張

上記(1)以外の財産は自由財産として扱うことが法律に明記されていません。

明記されていない財産については、破産者(通常は申立代理人弁護士)から裁判所へ自由財産の拡張申立を行い、裁判所の決定により自由財産とすることができます。

この自由財産拡張申立において、破産管財人は、申立内容を精査し裁判所に対して拡張を認めるかどうかについての意見を報告するという役割を担います。裁判所は破産管財人の意見を踏まえ決定を出します。

#1:自由財産拡張申立に対する裁判所の判断傾向

自由財産の拡張申立は、現金を含めた総額(差押禁止財産を除く)が99万円以内である場合は認められやすい傾向にあります。

他方で、99万円を超える自由財産の拡張においては厳格に判断されます。管轄裁判所によって取り扱いは異なるものの、特別な事情がない限り認めないというスタンスの裁判所が多いように見受けられます。

#2:個別の換価基準

私たちが生活していくうえで最低限度必要な資産というのは無数にあります。

にもかかわらず、全ての管財事件において自由財産拡張申立が必要となると、破産者、破産管財人、そして裁判所の全てに対して多大な負担となります。

そこで、各地の裁判所では、一律換価することを要しない財産の種類と数を特定した独自の基準を設けています。

実務上、この基準のことを「個別の換価基準」と呼んでいます。

個別の換価基準にあたる財産は、その裁判所においては、法律に明記されていないため自由財産ではないものの、自由財産として扱われるということになります。

本ページでは、東京地方裁判所の基準についてご紹介します。

東京地方裁判所における個別の換価基準

  • 残高20万円以下の預貯金(複数口座ある場合には全ての口座を合計して20万円以下)
  • 見込額が20万円以下の保険解約返戻金(契約が複数ある場合には合計して20万円以下)
  • 評価額が20万円以下の自動車
  • 居住物件の敷金債権
  • 電話加入権
  • 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下の退職金債権
    ※支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える場合には退職金債権額の8分の7相当額
  • 家財道具

(3)新得財産

破産財団に組み入れられる財産は、破産手続開始決定時点で破産者が所有している財産です。

破産手続開始決定以降に新たに取得した財産は「新得財産」とされ、破産財団へ組み込まれることはありません。

そのため、破産者が自由に所有することが可能です。

まとめ

自己破産手続において、破産管財人が選ばれるケース、選ばれた際のその後の手続きや、破産管財人の職務内容についてご説明しました。

弁護士に依頼して自己破産手続を行った場合、破産管財人とのやり取りを弁護士に任せる事が出来ます。

また、破産管財人との面談に弁護士が同席することができ、弁護士は破産者が無事に免責の許可を得られるよう、サポートすることが可能です。

現在自己破産の手続きを検討していて、手続きに不安がある方は、弁護士へお気軽にお問い合わせください。

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執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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