計画倒産とはなにか?その概要と違法にあたるケースについて弁護士が解説

「計画倒産とはどのようなものなのか」
「計画的に法人破産の手続を進めることとの違いは?」
会社、法人の経営者や代表者の方の中には資金繰りの悪化などによって法人破産の手続を行うことを検討されている方もいると思います。
計画倒産とは、踏み倒すつもりで借金や商品の購入などをして会社や法人を意図的に倒産させることをいいます。
本来、法人を倒産させるにあたっては、破産を行うことを決めていながら新たな借入を行うことは止めたり、法人の資産が不正に流出することを防ぎながら準備を進めていく必要がありますが、計画倒産ではそのような対応が行われません。
計画倒産を行うと、従業員や債権者の権利を侵害するだけでなく、違法行為として処罰されるリスクがあります。
本記事では、計画倒産の概要やリスク、計画倒産であると評価されずに法人破産の手続を進めるためのポイントについて解説します。
1.計画倒産の概要
先ほども述べたように、計画倒産は踏み倒すつもりで借金や商品の購入などをして会社や法人を意図的に倒産させることを指します。
そのため、なるべく従業員や取引先に迷惑がかからないように準備を計画的に行って裁判所に法人破産の申立てを行う倒産とは異なります。
以下では、計画倒産の内容や計画的に進められる倒産との違いについて解説します。
(1)計画倒産とは
計画倒産とは、会社の経営者や代表者が最初から踏み倒す目的で借金や商品の購入を行ったうえで会社を倒産させる行為のことです。
会社が事業を行っていく中で資金繰りの悪化などによって借金の返済ができない状態となれば、裁判所に対して法人破産の申立てを行うことは望ましい手段といえます。
法人破産を行うと、法人格自体が消滅するため、会社の債務もそれに伴って消滅します。
その際には、会社が有する財産について換価処分が行われ、債権者に配当が行われます。
これによって、債権者も一定の債権について回収を行うことができる可能性があるのです。
しかし、計画倒産では、会社の財産を隠したり処分したりすることが伴うことが多く、本来債権者に配当されるべき原資を著しく減少させてしまうのです。
(2)計画的な倒産との違い
計画的な倒産とは、あらかじめなるべく従業員や取引先に迷惑がかからないように準備を行って会社を倒産させることを指します。
そのため、計画倒産と計画的な倒産とでは「会社や法人を倒産させる」という目的においては共通しているといえます。
しかし、計画倒産と計画的な倒産との大きな違いは、経営者が不正に会社の財産を得ようとしているかという点です。
先ほども述べたように、破産手続では、会社の所有する財産は換価処分が行われ、最終的に債権者へ配当されます。
しかし、債権者に配当される財産を不当に減少させたり、債権者をだまして融資を受けたりする計画倒産は、債権者の利益を侵害します。
そのため、計画倒産は場合によっては罪に問われるケースもあり、容認される行為ではないのです。
このように、計画倒産を行うことは、会社や法人を取り巻くさまざまな利害関係人に悪影響を及ぼすだけでなく、それ自体が処罰の対象となることもあります。
なお、計画倒産は経営者や代表者が意図的に行うこともあれば、意図せずに該当する行為を行ってしまうケースもあります。
そのため、どのような行為が計画倒産に該当する可能性があるのかを把握し、そのような行為を回避する必要があるといえるでしょう。
具体的なケースについては、次項で詳しく解説します。
2.計画倒産と評価される可能性があるケース
計画倒産と評価される可能性があるものには、以下のようなケースが挙げられます。
- 倒産することを予定しながら融資を受けた場合
- 倒産することを予定しながら大量の商品などを仕入れた場合
- 会社の財産を廉価で売却した後に法人破産の手続を行った場合
このような行為を行うと、不当な理由によって法人破産を申し立てたと評価され、場合によっては犯罪行為に該当してしまいます。
なお、法人破産の申立てをするには、法律によって定められた手続きであるため、いくつかの要件を満たさなければなりません。
法人破産を行うための要件や法人破産を行うことができないケースについては、以下の記事も合わせてご参照ください。
(1)倒産することを予定しながら融資を受けた場合
倒産することを予定しているにも関わらず、そのことを隠して融資を受ける、借金をするなどの行為は、計画倒産と評価される可能性があります。
事業を継続することを目的に融資を受けることや借金をすることはもちろん問題がありません。
しかし、中には事業を継続する意思がないにも関わらず、融資を受けるなどし、代表者が個人的にその金銭を費消するケースがあります。
このような行為は、返済をする意思がないにも関わらずお金を受け取って債務を負ったと評価され、詐欺罪に問われるリスクもあるのです。
また、このような行為を行った後に法人破産の申立てを行うと、債権者を害する目的のもとに行ったと評価され、破産詐欺罪が成立する可能性もあります。
(2)倒産することを予定しながら大量の商品などを仕入れた場合
倒産を予定しながら、そのことを隠して大量の商品を仕入れ、販売することも計画倒産にあたると考えられます。
具体的には、大量に仕入れた後に原価よりも安価な価格で販売し、その代金を経営者のもとに移転した後に倒産させる行為です。
商品の代金を払わず、会社の財産を流出させるため、計画倒産の中でも債権者を害する程度が高い行為であり、詐欺罪や破産詐欺罪に該当する可能性があります。
(3)会社の財産を廉価で売却した後に法人破産の手続を行った場合
会社の財産を市場相場よりも著しく低い価格で処分すると、債権者が不利益を被ります。
法人破産は、最終的に法人の所有する財産について換価処分を行い、その金銭を債権者に配当する手続です。
通常であれば1000万円で売却できる財産を500万円で売却すれば、債権者に配当できる金銭は500万円にまで減少してしまい、債権者に不利益が生じます。
特に資金繰りが悪化してしまうと、その場しのぎの方法で資金調達を繰り返してしまうケースも見られます。
しかし、そのような行為を行った後に法人破産の申立てを行ってしまうと、計画倒産と評価され、不当な目的のもとで申立てが行われたとして法人破産の手続が頓挫してしまうリスクが高まってしまうのです。
3.計画倒産で成立しうる犯罪とは
計画倒産をすると、罪に問われるケースもあります。
具体的には、以下のような犯罪に該当する可能性があります。
- 詐欺罪
- 破産詐欺罪
計画倒産を行うと、法人破産が進められなくなってしまうだけではなく、犯罪行為として処罰される可能性もあります。
そのため、計画倒産のリスクを把握し、このような行為を行わないことが大切です。
(1)詐欺罪
詐欺罪は、相手をだまして不正に利益を得たような場合に成立する犯罪です。
上述のケースの中では、返済能力が無いにもかかわらずあるように見せかけて融資を受けたり、新たに借入れを行ったりする行為がこれにあたる可能性があります。
詐欺罪が成立すれば、最大10年以下の懲役が科せられることに注意が必要です。
ただし、一見計画倒産に見える行為であったとしても、会社の財政状況を立て直そうとして融資を受けたものの、結果上手くいかずに倒産せざるを得なくなった場合では、犯罪行為に当たりません。
(2)破産詐欺罪
会社が破産手続を進めるに当たって、財産を隠したり損壊したりするなどして債権者の権利を損害した場合に成立します。
計画倒産の中では会社が倒産する前に財産を不当に隠すような行為が当てはまります。
破産詐欺罪が成立すれば、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられます。
なお、破産詐欺罪は破産手続開始決定前であっても、該当する行為があれば犯罪が成立する点に注意が必要です。
4.計画倒産のリスクを回避しながら法人破産を行うための方法
上記のように、計画倒産は債権者を害し、自身にとってもリスクの高い行為といえます。
資金繰りの悪化などによって事業の継続が困難となった場合には、なるべく早期に関係者を害することが無いように準備を行い、法人破産の手続を進めることが最も大切です。
計画倒産に当たってしまうような行為に注意しながら法人破産を行うには、以下のような方法が考えられます。
- 弁護士に相談する
- 財産隠しをしない
- 前もって計画的に準備を進める
順に見ていきましょう。
(1)弁護士に相談する
会社の資金繰りが苦しいような場合には、なるべく早期に弁護士に相談をしましょう。
資金繰りの悪化に伴って、その場しのぎの資金調達などを行ってしまうと、場合によっては計画倒産と評価されかねません。
弁護士は法律の専門家ですので、計画倒産のリスクを回避しながら破産手続を進めることができます。
弁護士に相談すべきタイミングについては、以下の記事も参考になります。
また、法人破産を行う際の主な注意点については、以下の記事も合わせてご覧ください。
(2)財産隠しをしない
上記でご説明したように、会社の財産を隠すことは罪に問われるケースもあるため、必ず正しく会社の財産のすべてを申告しましょう。
また、財産隠しをしたとしても、取り戻されてしまいます。
破産手続では、裁判所から選ばれた破産管財人が会社の財産を調査・管理をします。
破産管財人が財産隠しを見つけると、否認権という権限を行使することが可能です。
否認権が行使されれば、不正な財産処分などの行為が無効となり、財産は取り戻され、最終的に債権者への返済に充てられます。
手続をスムーズに進めるためにも、財産を勝手に処分したり隠したりしないようにすることが大切です。
(3)前もって計画的に準備を進める
法人破産を行う際、従業員がいる場合は解雇しなければなりません。
従業員を解雇するためには、解雇予告もしくは解雇予告手当の支払いが必要です。
解雇予告をする場合は、解雇日の30日以上前に従業員に対して予告することが必要になります。
即日で従業員を解雇する場合には、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません。
このように従業員への対応についても予めどのようにするのか準備が必要なのです。
また、法人破産の手続をするためには、依頼をする弁護士の費用や、裁判所に予納金と呼ばれる費用を納める必要があります。
弁護士の費用や予納金の金額は債務額などによって異なりますが、会社の財産状況が悪く予納金を払えない状態であれば、破産手続をすることもできません。
法人破産を行う場合は、一定の資金を確保しながら計画的に準備を進める必要があることも押さえておきましょう。
なお、法人破産における予納金の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
本記事では、計画倒産の概要や、計画的に破産の準備を進めることとの違い、計画倒産を行うことのリスクなどについて解説しました。
計画倒産に該当するような行為を行ってしまうと、刑事罰を科されるだけでなく、法人破産の手続が頓挫してしまいます。
重大な影響があることを知らずに、計画倒産と評価されかねない行為を行ってしまう場合もあるため、注意が必要です。
計画倒産に当たる行為を避けながら適切に法人破産を行うために、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの法人破産の手続に対応してきました。
経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、法人破産の申立てをご検討の方はお気軽にご相談ください。
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