交通事故の片側賠償とは?通称「片賠」のメリットと解決時の注意点について弁護士が解説

執筆者 潮崎 雅士 弁護士

所属 第二東京弁護士会

初動が大事。様々なことに当てはまりますが、法律問題もそうです。しかし、今まで法律問題に関わったことがなく、どうすればよいかわからない方が多いと思います。そうして初動が遅れると、最良の解決は難しくなってしまいます。
逆に相談が早ければ早いほど、より良い解決がしやすくなります。ですので、何かお困りのことがあれば、お早めにご相談ください。皆様の法律問題の最良の解決に向けて全力でサポートさせていただきます。

「交通事故での片側賠償とはどのようなものなのか?」
「片側賠償によるメリットやデメリットについて知りたい」

交通事故に遭ってしまった方の中には、このような疑問をお持ちの方もいるかと思います。

本記事では、交通事故の片側賠償のメリット、片側賠償による解決が望ましいケース、片側賠償で解決する場合の注意点について解説します。

この記事を読んで、交通事故の示談交渉で過失割合について交渉を少しでも前進させるための参考となれば幸いです。

1.交通事故の過失割合と片側賠償

そもそも過失割合や片側賠償がどのようなものかわからない方が多いでしょう。

そのため、ここでは過失割合や片側賠償がどのようなものかご説明します。

(1)過失割合とは

過失割合とは、交通事故の責任が当事者双方にどれくらいあるかを数値で表したものです。

過失割合は、原則として加害者側と被害者側の過失を合わせると10割になります。

そして、過失割合に応じて、その過失分の賠償責任を負います。

例えば、AさんとBさんの事故で過失割合が1:9、双方の修理金額が100万円ずつだった場合、AさんはBさんに対して10万円、BさんはAさんに対して90万円を賠償する必要があります。

(2)片側賠償とは

片側賠償とは、上記のような過失割合の際に、「片側の人だけが賠償をする」という解決方法です。

上記の例で言えば、BさんがAさんに対して90万円の賠償をするが、AさんはBさんに対して賠償をしなくてもよい、という解決になります。

俗にこれを過失割合9:0と言ったりします。

過失割合9:1の場合、通常は被害者も1割の賠償責任を負います。

しかし、加害者側が被害者への請求を放棄することで、被害者は賠償しなくてよくなります。

双方に過失があるにもかかわらず、加害者のみ賠償することから、片側賠償と言われています。

2.片側賠償による処理を行うメリットと注意点

片側賠償で解決をするとどうなるのでしょうか。

ここでは、片側賠償のメリット・デメリットをご説明します。

(1)メリット

#1:加害者側に賠償金を支払う必要がなくなる

上記で見たとおり、通常、加害者側の過失が10割ではない場合、被害者側にも過失があるため、被害者からも加害者に損害の一部を支払う必要があります。

しかし、片側賠償にすることで加害者側の過失が10割でないにもかかわらず、被害者側は加害者に賠償金を支払う必要はなくなります。

その結果、差し引きで被害者が手元に受け取れる賠償金が高くなることになります。

#2:示談交渉が早期に解決する可能性がある

少なからずの被害者の方が、自分にも過失割合があるとして自分の損害額の賠償が一部目減りすることは仕方ないとしても、加害者に対して賠償しなければいけないという点に拒否感を持ちます。

しかし、過失割合を10:0に変更するというのはかなり大変であり、交渉が難航することも珍しくありません。

このような場合、相手方が片側賠償を提案してくると、早期解決が可能となります。

(2)注意点

注意点としては、片賠という方法が、法的に請求できるものではないということです。

上記でも説明したように、片賠とは、加害者側が請求を放棄することで成立します。

したがって、加害者側が任意にそのような方法を選択しないと実現しません。

加害者側が、「法的には請求できるけれど、早期解決のために請求をしない」という選択をしてくれないと、片賠による解決はできないのです。

そのため、弁護士が介入すればうまくいく、などというものではない点は注意が必要です。

3.片側賠償による解決が望ましいケース

どのような場合に、片側賠償による解決がより効果的かを見ていきましょう。

(1)過失割合をめぐって示談交渉が難航している場合

物損の解決をするためには、過失割合について話し合いがまとまることが必要です。

もっとも、過失割合の判断をするために必要となる資料が常に十分であるというわけではありません。

裁判になった場合に、どのような認定がされるか微妙なケースというのも珍しくないのです。

そのような場合に、裁判でどちらかが負けるという結果になる前に、間を取ったような解決方法として片側賠償による方法で解決をするということが考えられます。

(2)加害者側の損害額が大きい場合

加害者側の損害額が大きい場合、被害者側の過失が1割や2割だとしても支払わなければならない金額が大きくなってしまいます。

例えば、過失割合ではAさんが10%、Bさんが90%という事故だったとして、Aさんの車は大衆車で修理金額は20万円程度にもかかわらず、Bさんの車は高級車で修理に200万円もかかるとします。

この場合、Bさんの賠償額は20万×90%=18万円であるのに対して、Aさんの賠償額は200万円×10%=20万円となります。

Aさんは、自分の方が悪くない事故であるにもかかわらず、自分の方が支払額が多くなることになり、納得することは難しいでしょう。

このような場合、片側賠償での解決ができれば被害者側としても気持ちとして納得しやすく、望ましいです。

4.過失割合について弁護士に相談するメリット

過失割合に争いがある事故を弁護士に依頼すると様々なメリットがあります。

ここではそのメリットをご説明します。

(1)提示された過失割合が適切かどうかのチェックを受けられる

交通事故があった場合、相手の保険会社から過失割合の提示を受けます。

しかし、それが適切なものか個人で判断することは困難です。

弁護士であれば、過去の裁判所の考え方に基づき、提示された過失割合が適切かどうか判断することができます。

(2)適切な過失割合を主張・立証するためのアドバイスを受けられる

過失割合は、まずどのような態様の事故だったのかという認定から始まります。

そして、それを考える上では刑事記録の取得等、証拠収集を行ったうえで、これを分析・検討する必要があります。

具体的にどのような事情を主張するべきなのか、その場合どのような修正が考えられるのかと言った点は、裁判実務を理解していないと困難です。

そのため、弁護士に依頼することで、適切な過失割合の主張立証ができるようになります。

(3)示談交渉を依頼できる

保険会社との示談交渉はわからないことが多くストレスに感じる方も多いでしょう。

しかし、弁護士に依頼することで、示談交渉を一任でき、ストレスを感じることはなくなります。

また、弁護士から通院頻度や過失割合に重要な証拠の収集について、アドバイスやサポートを受けることができます。

(4)受け取れる賠償金の増額が期待できる

交通事故の示談交渉では、自賠責基準、任意保険基準、裁判所(弁護士)基準の3つの算定基準が使用されます。

自賠責基準は被害者の最低限の補償を行うことを目的としており、3つの算定基準の中では最も低額です。

また、算定基準が非公開となっている任意保険基準も自賠責基準と同程度か少し上回る基準とされています。

そして、弁護士や裁判所が使用する裁判所(弁護士)基準は、最も高額な基準です。

加害者側の保険会社は自賠責基準か任意保険基準を用いた金額で賠償金の提示を行うため、裁判所(弁護士)基準を用いた場合よりも低額であることがほとんどです。

弁護士に示談交渉を依頼すれば、裁判所(弁護士)基準によって算定した賠償額の請求が可能になり、受け取ることができる賠償額の増額が期待できます。

まとめ

本記事では、片側賠償の概要やメリット、片側賠償による解決が望ましいケース、片側賠償で解決する場合の注意点についてについて解説しました。

示談交渉で過失割合をめぐって加害者側と折り合いがつかない場合などには、相手方が片側賠償による解決を提案してくることがあります。

片側賠償で解決した方が良いかどうか不安があるようであれば、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

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執筆者 潮崎 雅士 弁護士

所属 第二東京弁護士会

初動が大事。様々なことに当てはまりますが、法律問題もそうです。しかし、今まで法律問題に関わったことがなく、どうすればよいかわからない方が多いと思います。そうして初動が遅れると、最良の解決は難しくなってしまいます。
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