駐車場内における事故について|過失割合の考え方を解説!

駐車場内は、車の速度も遅く事故は起こりにくいと思われがちです。

しかし、実際には、駐車場内では道路のように車両の動きが一定ではなく不規則になるため、車同士の接触リスクが高まります。

また、駐車スペースを探すことに気を取られて、周りの車や歩行者の動きを十分確認せず運転しがちなため、事故がおきやすいと考えられています。

車両事故の約3割は駐車場で発生したものとの調査結果も出ているようです。

このように、駐車場内での事故は、通常の道路と比べて、広さや形状が様々で、かつ車両の動きも多様であるため、事故が発生した際の過失割合が特に問題となってきます。

1.過失割合の考え方

駐車場内の事故の過失割合の前に、過失割合の考え方についてお話します。

過失割合は、被害者・加害者双方の過失の対比によって定められます。

そして、それぞれの責任を考えて、両者の均衡を図ることを過失相殺といいます。

損害額にも大きく影響するので、過失割合を考えることはとても重要です。

たとえば、完全に停止している状態で後ろから追突された場合、(駐停車禁止場所だったり夜間に非常点滅灯を灯火していないなどの特殊事情がある場合を除き)当然被害者に過失はありません。

では、信号機のない交差点において、加害者側に一時停止規制があるにもかかわらず、それを無視して交差点に進入し、被害者の車両の側面に衝突した場合はどうでしょうか。

もしかしたら、一時停止を無視して交差点に進入してくる車両なんか避け切れないのだから、被害者に過失なんかないだろうと考える方も多いかもしれません。

しかし、双方が同程度の速度で交差点に進入した場合には、基本的な過失割合は2:8となるのです。

これは、一時停止の規制がない側においても、見通しがきかない交差点に入ろうとする車両は、徐行義務(道路交通法42条1項)が課せられているため、一時停止義務違反と徐行義務違反を比較して上記のような割合となっています。

このように、交通事故における過失割合は、道路交通法上の義務に違反しているかどうかを基礎に考えられています。

そして、様々な事故態様を類型化して、基本的な過失割合を定めている、 「別冊判例タイムズNo.38」という書籍があります。

これは、東京地方裁判所の民事交通訴訟研究会という裁判官が中心となって発足した研究会が作成したものです。

判例タイムズ社という法律専門書を出版している会社から出版されています。

弁護士も保険会社も(訴訟になれば)裁判官も、この判例タイムズを使って過失割合を決めていきます。

判例タイムズには、歩行者対四輪者、歩行者対自転車、四輪者同士の事故など、様々な事故態様が類型化されており、その数は300パターン以上にもなります。

交通事故の依頼を受けるときには、その中から類似するものを選び過失割合を考えていくのです。

2.駐車場事故の過失割合

さて、本題の駐車場事故の過失割合ですが、事故態様を一般化抽象化するのが難しく、過失割合を定めるのは容易ではありません。

冒頭でも言いましたが、駐車場は通常の道路と比べて、広さや形状が様々で、かつ車両の動きも多様です。類型化が難しいため、判例タイムズを見ても、300パターン以上あるうちのわずか5パターンしか載っていません。

また、過失割合は、道路交通法上の義務に違反しているかどうかを考えるとも言いましたが、駐車場が私有地である場合、駐車場内の道路は道路交通法上の「道路」には当たりません。

だとしても、前方注視義務や徐行義務が要求されていることは運転慣行から当然であるため、過失割合の考え方としては、道路交通法上の「道路」と同様に考えられるべきです。

そして、駐車場では、四輪車が後退、方向転換等の行為に出ることが多く、駐車している四輪車から歩行者が出てくることも多いため、走行している四輪車に対し、前方注視義務や徐行義務がより高度に要求されることになります。

では、具体的な事故態様から、駐車場事故の過失割合をいくつか見ていきましょう。

(1)通路の交差部分における四輪車同士の出会い頭事故

駐車場内の通路では、四輪車が転回や後退など様々な動きをすることが想定されます。

そこで、道路交通法上の「道路」に当たらないため、法令上の優先関係及び通行方法に関する義務がなくても、交差部分を通行する四輪車は、等しく他の四輪車の通行を予見して安全を確認し、交差部分の状況に応じて、他車との衝突を回避することができるような速度と方法で通行する義務を負うと解されます。

したがって、交差部分に進入した四輪車同士の出会い頭の衝突事故が発生した場合は、原則として、双方が同等の過失責任を負うこととされ、基本的な過失割合は50:50となります。

(2)通路を進行する四輪車と駐車区画から通路に進入しようとする四輪車との事故

通路を進行する車(A車)と駐車区画から通路に出ようとする車(B車)が衝突した場合、その基本的な過失割合はA:B=30:70となり、B車の責任が重くなります。

四輪車が駐車場内の通路と駐車区画との間を出入りすることは当然に予定されているといえます。

そこで、通路進行車は、駐車していた四輪車が通路に進入してくることを常に予見すべきであり、衝突を回避することができるような速度と方法で通行する義務を負うと考えられています。

他方で、駐車区画退出車は、駐車区画内で停止しているのであるから、通路進行車よりも容易に安全を確認し、衝突を回避することができると考えられています。

したがって、駐車区画退出車により重い注意義務が課されることになります。

(3)通路上における歩行者と四輪車の事故

通路上において歩行者と車が衝突した場合、基本的な過失割合は人:車=10:90となります。

駐車場内の通路は、主に、駐車場を利用する四輪車が移動するための設備であるが、歩行者が駐車場内の通路を通行する例は日常的に見られます。

したがって、四輪車は、人の往来があることを常に予見し、歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行する注意義務を負うと考えられます。

他方で、駐車場内の通路が主に四輪車の移動のための設備である以上、歩行者においても、四輪車が通行することを常に予見し、慎重に進路の安全を確認すべきです。

したがって、四輪車が重い責任を負いますが、歩行者もある程度の責任は免れないことになります。

まとめ

駐車場内での事故は、上であげた3つの例以外にも、同じ駐車区画内に駐車しようとして四輪車が衝突した場合や、駐車区画をはみ出して駐車していた四輪車を擦ってしまった場合など様々です。

事故態様は公道上の事故より個別性は高いと思われます。

そうすると、判例タイムズの基本的過失割合から判断がつかないこともあるかもしれません。

そのような場合には、これまでの裁判例に事故態様が近いものを探し出し、具体的状況における当事者の注意義務を検討する必要があります。その検討こそ弁護士の仕事です。

駐車場に限りませんが、交通事故に遭い、過失割合で納得がいかない場合には、是非当事務所にご相談ください。

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