バイクの非接触事故とは?損害賠償までの流れも紹介
「飛び出してきた車を避けようとしてバイクで転倒してしまった」
「相手と接触したわけではないバイク事故でも治療費の請求はできるのか」
急に飛び出してきた車や歩行者を咄嗟に避けようとした場合、急ブレーキや急ハンドルをすることになります。
この際、こちらがバイクの場合には、衝突は避けられたものの転倒するなどして、怪我を負ってしまうというケースがあります。
このような場合、果たして賠償請求ができるのでしょうか。
理屈から言えば、接触を伴わない事故(非接触事故)であっても、相手の運転のせいで損害が発生したという因果関係が認められれば、生じた損害の賠償を受けることは可能です。
もっとも、非接触事故では示談交渉が難航する場合が多いため、示談に入る前に適切な対応を行うことが重要です。
本記事では、バイクの非接触事故について、示談交渉が難航する理由や損害賠償を行うまでの流れをご説明します。
1.非接触事故とは
非接触事故とは、加害者と被害者の間に物理的接触を伴わずに生じた事故を指します。
主に相手の危険行為に誘発され、危険を回避しようとして起こる事故であることから、誘因事故とも呼ばれます。
事故を回避するために急ブレーキをかけたり急ハンドルを切ったりしたときに発生することが多いです。
特にバイクを運転している場合には、スピードが出た状態から急ブレーキをかけることで、バイクのフロントタイヤがロックされて転倒することが珍しくありません。
このように、非接触事故であっても、転倒やガードレールへの衝突などによって、負傷する場合があります。
このような場合、相手方の運転と転倒に法的因果関係を認めることができれば、賠償請求することが可能です。
もっとも、非接触事故の示談交渉では、交渉が難航する場合がほとんどです。
その理由については、次項で解説します。
2.非接触事故における示談交渉が難航する主な理由
非接触事故では物理的な接触を伴わないため、示談交渉において以下の点で交渉が難航しやすいです。
- 事故原因との因果関係の立証
- 過失割合の立証
それぞれについてご説明します。
(1)事故原因との因果関係の立証
損害賠償が認められるためには、相手の行為と被害者の損害の間に因果関係が認められることが必要です。
例えば、被害者の車が後続する相手の車に追突されたことによって、首に痛みが発生した場合には、相手の追突行為と被害者の首の痛みという被害に因果関係が認められます。
しかし、非接触事故の場合には、相手の行為と被害者の損害の間の因果関係を立証することが困難になります。
具体例として、相手の車が合図を出さずに急に車線変更を行ったため、衝突を回避しようと被害者のバイクが急ブレーキをかけて転倒し、首や肩を痛めたような場合を考えてみましょう。
この場合では、相手の行為と被害者の損害の間に被害者がバイクの急ブレーキをかけたことが介在することになります。
そして、因果関係を認めるためには「急ブレーキが必要だった」という事情が必要となります。
仮に、車間距離が十分に開いているにもかかわらずびっくりして急ブレーキをしてしまったという状況だと、単独事故と扱われてしまう可能性があるのです。
そのため、具体的にどのような事故状況だったのかという点が非常に重要となってきます。
(2)過失割合の立証
過失割合とは、事故の発生について、加害者と被害者の間にどのくらいの責任があるかを割合で示したものです。
被害者側にも一定の落ち度が認められた場合、その分だけ受け取れる賠償額が減少してしまいます。
非接触事故では、当事者間の過失割合については、基本的に類似する事故態様の接触事故の割合を参考にして決められます。
交通事故の過失割合は、事故態様や道路状況などの要素によって基本となる過失割合が定められています。
もっとも、非接触事故は、被害者の回避行為が介在することによって損害が発生するため、過失割合との関係では被害者の回避行為が適切であったか否かで交渉が難航することが多いです。
例えば、衝突を回避するために転倒した場合、より適切にブレーキをかければ転倒せずに衝突を回避できたのではないか、という争点が生じます。
そのため、危険が発生したタイミングや、他に考えられる回避行動の有無など、通常の事故よりもより詳細に検討をする必要があります。
3.非接触事故に遭ったときの損害賠償までの流れ
非接触事故に遭い、損害賠償請求を行って適切な補償を受けるためには、以下の流れで対応を行うことが重要です。
- 警察に通報する
- 医療機関で適切な治療を受ける
- 弁護士に相談する
- 示談交渉で損害賠償請求を行う
それぞれについてポイントを解説します。
(1)警察に通報する
非接触事故の場合であっても、必ず警察に通報することが重要です。
道路交通法上、交通事故が発生した場合には、警察への通報が義務付けられています。
また、非接触事故の場合、警察に通報していないと実際に事故が発生したこと自体に争いが生じてしまう可能性があります。
この場合、単独事故扱いされてしまい、賠償請求をすることはとても難しくなります。
適切な賠償を獲得するためにも、警察への通報は必ず行うべきです。
(2)医療機関で適切な治療を受ける
事故直後に強い症状が現れていない場合であっても、症状があるのであれば通院するようにしましょう。
また、怪我をした場合には、人身事故として届け出ることで、警察が事故態様や道路状況に関する捜査を行い、その結果が「実況見分調書」として作成されます。
事故当時の当事者の位置関係や事故が発生した状況などが明らかにされるため、示談交渉で加害者の行為と損害の因果関係を立証したり、適切な過失割合を主張・立証する際に有益です。
人身事故の届出の方法については、以下の記事も参考になります。
(3)弁護士に相談する
非接触事故では、上記のように示談交渉が難航する場合がほとんどです。
また、示談交渉では加害者側の保険会社を相手に交渉を進めなければならず、専門知識や交渉経験がなければ有利に進めることは困難です。
そのため、非接触事故の被害に遭ったときには、なるべく早期に弁護士へ相談することがおすすめです。
示談交渉が始まる前に弁護士に相談することで、示談交渉へ向けたアドバイスやサポートを受けることができます。
また、怪我の治療を継続した後に何らかの症状が残存した場合には、後遺障害等級の認定申請を行うことが考えられます。
後遺障害等級の認定を受けることができれば、等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。
弁護士に早期に相談することで、これらの手続についてもアドバイスやサポートを受けることが可能です。
さらに、示談交渉の代理を依頼することで、相手の行為と損害の因果関係や適切な過失割合の主張・立証を行うことができます。
なお、後遺障害等級の認定申請については、以下の記事で詳しく取り上げていますので、合わせてご参照ください。
(4)示談交渉で損害賠償請求を行う
治療が完了した時点あるいは後遺障害等級の認定申請の結果が出た時点で、示談交渉が始まります。
非接触事故の場合であっても、相手方に請求できる損害項目は通常の交通事故と変わりません。
具体的には、以下のような損害項目について請求し、受け取ることができます。
- 治療費
- 傷害(入通院)慰謝料
- 休業損害
また、後遺障害等級の認定を受けることで、以下の損害項目についても受け取ることができます。
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
4.非接触事故の際に弁護士に示談交渉を依頼するメリット
非接触事故に遭った場合には、弁護士に示談交渉を依頼するのがおすすめです。
主なメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 示談交渉を一任できる
- 適切な過失割合の主張・立証ができる
- 適切な賠償額を受け取ることができる
順にご説明します。
(1)示談交渉を一任できる
煩雑な示談交渉を弁護士に一任できることは大きなメリットです。
示談交渉では、相手方の保険会社と過失割合や賠償金額について話し合いを進めますが、専門知識や交渉力がなければ、知らないうちに不利な条件で合意をしてしまう可能性があります。
示談は一度成立してしまうと、これを覆すことはできないため、大きなリスクとなりえます。
弁護士は法的交渉の専門家であるため、弁護士に依頼することで、示談交渉を有利に進めることが可能です。
(2)適切な過失割合の主張・立証ができる
示談交渉では過失割合や賠償金額について話し合いが行われます。
しかし、先ほども述べたように、非接触事故では過失割合をめぐって交渉が難航することがほとんどです。
また、被害者の過失が実際以上に高く見積もられることによって、低額な賠償額が提示されることもあります。
弁護士に交渉を依頼することで、客観的な資料や証拠に基づき、適切な過失割合の主張・立証を行うことが可能です。
(3)適切な賠償額を受け取ることができる
弁護士に依頼することで、適切な賠償額を受け取ることが可能です。
示談における慰謝料の算定方法は自賠責基準、任意保険基準、裁判所(弁護士)基準の3つがあります。
このうち、自賠責基準は最低限の補償を行うことを目的としており、3つの基準で最も低額であり、非公開となっている任意保険基準もこれと同程度とされています。
一方、裁判所(弁護士)基準とは、裁判例から導き出された基準であり、3つの中で最も高額かつ適切な基準です。
弁護士に交渉を依頼することで、最も高額かつ適切な基準である裁判所(弁護士)基準を用いて算定した賠償額で交渉を行うことができます。
そのため、最終的に受け取ることができる賠償額の増加が期待できます。
まとめ
本記事では、バイクの非接触事故について、示談交渉が難航する理由や示談交渉までの流れについて解説しました。
相手方との接触を伴わない事故であるため、損害の発生や過失割合の立証で示談交渉が難航することが予想されます。
非接触事故に遭われた場合には、なるべく早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの交通事故の示談交渉に対応してきました。
経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、非接触事故の被害や示談交渉の進め方にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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