過失割合が10対0の物損事故の示談金の主な内訳!示談交渉が始まるまでの流れ

「過失割合が10対0のときの示談金としてどのようなものが請求できるのか」
「自分が無過失のときはどのように示談交渉が始まるのか」
物損事故の被害者で無過失の方の中には、示談金としてどのようなものが請求できるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
物損事故(物件事故)では、人身事故の場合とは異なり、物の損壊に関する損害賠償のみを請求し、受け取ることとなります。
具体的には、車両の修理費などがこれにあたります。
また、過失割合が10対0の場合には、被害者側に過失がまったくないことを意味するため、示談金は過失相殺を受けることなく、損害の全額を受け取ることが可能です。
もっとも、損害額の算定などについてはいくつかの注意点があります。
本記事では、過失割合が10対0のときの物損事故の示談金の主な内訳、示談交渉が始まるまでの流れについて解説します。
1.物損事故にはどのようなケースがあるのか
交通事故は、警察によって事故処理される際には、すべて物損事故(正確には「物件事故」)扱いになります。
人身事故とするためには、人身事故への切り替えの手続が必要です。
そのため、物損事故といっても、人的損害が発生していることもあります。
もっとも、一般的に物損事故といえば、怪我をしておらず、物的損害だけが発生しているケースですので、本記事は、物的損害だけが発生しているケースについてのみ解説します。
なお、人身事故の特徴については、以下の記事も参考になります。
また、人身事故へ切り替えた方がよいケースや切り替えの手続の流れについては、以下の記事もあわせてご参照ください。
2.過失割合が10対0のときの物損事故の特徴
物損事故とは、先ほどもご説明したとおり、交通事故の当事者双方に人的損害が生じず、車両の損壊などの物的損害のみが生じた事故のことです。
そして、過失割合とは、交通事故の発生に対する当事者の責任の割合のことをいい、過失割合に応じて示談金が増減します。
過失割合が10対0の場合には、被害者側に過失がまったくないことを意味するため、減額を受けることなく示談金を受け取ることが可能です。
もっとも、被害者に過失がまったくない場合には、当該事故との関係では保険会社に利害関係がないため、被害者自身が加入している任意保険の示談代行サービスを利用することができないことに注意が必要です。
そのため、加害者側と示談交渉を行う際には、被害者自身で進めなければなりません。
また、加害者側は、被害者側にも過失があることを主張してくることがあります。
その場合、自身の無過失を証拠等で立証する必要があるのです。
しかし、交通事故の示談交渉を有利に進めるためには、専門知識や交渉経験が必要になり、交渉に不慣れな場合には適正な額の示談金を受け取ることができない可能性があります。
そのため、まずは弁護士に相談して示談交渉を依頼するのがおすすめです。
被害者に過失がまったくない場合の示談交渉のポイントや弁護士に相談するメリットについては、以下の記事も参考になります。
なお、弁護士への相談や依頼に関する費用については、弁護士費用特約を利用することで負担を軽減できるケースが多いです。
弁護士費用特約の概要や利用すべきケースなどについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
3.主な示談金の内訳
物損事故の示談金にはいくつかの費用が含まれます。
主な示談金の内訳は以下のとおりです。
- 車両の修理費又は時価額
- 買替差額
- 買替諸費用
- 評価損
- 代車使用料
- 休車損害
- その他
順にご説明します。
(1)車両の修理費又は時価額
車両の損傷に対する修理費又は時価額を請求することができます。
物損には、全損と分損という考え方があります。
さらに、全損には物理的全損と経済的全損があります。
物理的全損とは、車両の損傷が激しく、技術的に修理ができないことです。
経済的全損とは、技術的に修理は可能ですが、修理費用が車両時価額を超えることです。
分損とは、技術的に修理が可能で、修理費用が車両時価額を超えないことです。
全損となった場合、車両時価額が賠償されることとなります。
なぜなら、時価額を賠償すれば事故車両と同等の自動車を購入することができるにもかかわらず、より高額な修理費を賠償させるというのは加害者に必要以上の負担を強いることとなり不公平だからです。
分損となった場合、修理費用が賠償されることとなります。
過失割合が10対0であれば、修理費又は時価額の全額を受け取ることが可能です。
ただし、請求できる金額は事故との因果関係が認められる範囲に限られるため、事故とは関係のない部分の修理もあわせて行った場合や事故車両より条件の良い自動車を購入した場合は、示談金の対象に含まれない点に注意しましょう。
(2)買替差額
全損となった場合には、時価額に加えて買替差額を請求することができます。
買換差額とは、事故前の車両時価額から事故車両の売却代金を差し引いた金額のことです。
もっとも、車両の時価額をどのように算定するかを巡って交渉が難航することも少なくありません。
(3)買替諸費用
全損の場合、さらに買替諸費用が請求できます。
買替諸費用とは、自動車を購入する際に車両本体価格以外にかかる費用のことです。
具体的には、検査登録手続費用、車庫証明手数料、納車費用、それらの代行費用などがあります。
もっとも、買替諸費用全額が認められるとは限りません。
どの費目が認められるかについて明確な基準はありませんので、事案に応じて検討する必要があります。
(4)評価損
評価損は、事故によって修理したときに事故前の車両から価値が下がった場合の損失金額です。
修理によって車両の外見や機能に問題がなくても、事故歴や修理歴が残ることで、売却する際に減額されてしまうことがあります。
この減額分が評価損で、その分に関して補償を受けることが可能です。
ただし、評価損の評価は難しく、加害者側の保険会社が認めるケースは少ないため、示談交渉が難航する可能性があることに注意が必要です。
(5)代車使用料
修理等によって代車を使用する場合の費用についても請求することが可能です。
通勤で車が必要な場合など、日常生活における車両の必要性が認められた場合、加害者側に対して請求することができます。
なお、代車使用料が認められない場合でも、公共交通機関を利用した場合の交通費相当の賠償を受けられる可能性はあります。
(6)休車損害
休車損害は、仕事に必要な車両が損壊した場合に受け取ることができる可能性がある損害です。
事故によって車両が損傷し、本来仕事をすることで得られるはずだった利益を失ったときの損害を請求するものです。
たとえば、キッチンカーで移動式販売を行っている場合、事故によって営業ができなくなったときに、平均売上額から必要経費を差し引いた分を請求することが可能です。
休車損害は、車両の損害による営業損害が対象で、代車等で対応できる場合は請求が認められません。
(7)その他
他にも以下のような費用を請求できる可能性があります。
- レッカー代
- 車両の保管料
- 査定料・見積もり費用
- 廃車料・車両処分費
- 車両以外の修理費、評価損
- 積荷や衣服などの損害
- ペットに関する損害
車両の損害に対する賠償金がメインですが、他にも損害が生じている場合は、その修理費等も示談金に含まれます。
事故によって損失を受けた場合は、請求できる可能性があるので、示談交渉で請求してみましょう。
4.物損事故でも慰謝料を請求できるケースもある
物損事故では、車両などの物の損壊を原因とする慰謝料の請求は原則として認められません。
その理由は、物の損壊に関する財産的損害については、修理費などの補償を受けることで精神的苦痛についても治癒されると考えられているからです。
しかし、物損事故でも、損壊した物が被害者にとって特別の価値を有するものである場合には、慰謝料が請求できることがあります。
実際、愛玩動物が交通事故で死亡した場合、飼い主が受ける精神的苦痛は社会通念上合理的な精神的損害と認められ、財産的損害とは別に慰謝料の請求が認められた裁判例もあります。
5.物損事故の示談交渉の流れ
物損事故の示談交渉は、人身事故に比べると解決までの段取りが少ないです。
示談交渉は、以下のような流れで行われます。
- 警察に通報する
- 修理費用の見積をとる
- 加害者側に見積書を提出して示談交渉を開始する
順に解説します。
(1)警察に通報する
まずは、事故に巻き込まれたら警察に通報しましょう。
道路交通法では、事故に遭ったら警察に通報することが義務付けられています。
警察への通報を怠れば、道路交通法違反となり、3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金の刑事罰を受けるおそれがあるほか、交通事故証明書の交付を受けられなくなるので注意が必要です。
交通事故証明書は、交通事故の損害を証明するために重要な書類で、示談交渉で必要になります。
交通事故証明書がなければ、交通事故が発生したこと自体に争いが生じ、示談金の請求ができなくなる可能性もあるのです。
そのため、事故の程度は関係なく、必ず警察に通報することが大切です。
なお、加入している保険があれば、警察に通報するタイミングにあわせて事故の被害を連絡しておきましょう。
保険内容次第では、保険金で補償を受けることができる場合があります。
(2)修理費用の見積をとる
つぎに車両の修理費用の見積をとります。
ただし、修理費用の見積結果が出たら、一度加害者側の保険会社に連絡をして、修理費に争いがないかの確認をしておくことが大切です。
見積後に勝手に修理を行うと、加害者側の保険会社が修理内容等が適正ではないとの主張をし、修理費用の支払いが拒否されることがあります。
そのため、必ず加害者側の保険会社に連絡をしましょう。
(3)加害者側に見積書を提出して示談交渉を開始する
見積書を加害者側の保険会社に提出し、内容に応じて示談案が送られてきたら示談交渉を始めます。
示談案には、過失割合や算定した示談金額が記されているので、まずは過失割合が10対0になっているかを確認した上で、示談金の妥当性を判断しましょう。
妥当ではないと判断した場合は、ドライブレコーダーなどの事故の物的証拠を提出し、被害者側の意見を主張する必要があります。
示談交渉ではいくつか注意しなければならないことがあるので、以下の記事もあわせてご参照ください。
まとめ
過失割合が10対0の物損事故の場合、加害者側に車両の修理費等を全額請求できる可能性があります。
ただし、請求する費用によっては算定方法などに争いが生じることがあるため、注意が必要です。
物損事故の場合は、修理費等の見積書を加害者側の保険会社に提出し、示談案が送られてきたら示談交渉を始めます。
示談交渉で気になる点がある方は、まずは弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で受け付けておりますので、交通事故の示談交渉でお困りの方はお気軽にご相談ください。
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