管財事件とは何なのか?手続の流れと特徴、同時廃止事件との違いについて解説

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「どんな案件が管財事件になるのか」
「管財事件になったらどのような影響があるのか」

自己破産を検討している方の中には、管財事件とはどういうものかについて調べている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、管財事件になる基準や管財事件の特徴、手続の流れについてご紹介します。

1.管財事件とは

管財事件とは

管財事件とは、自己破産の手続方法の1つです。

破産者が一定額以上の財産を所有しているなど特定の事情がある場合に、裁判所から選任された破産管財人が財産の管理等を行うものです。

一定額以上の財産がある場合のほか、浪費、換金行為などの免責不許可事由がある場合や偏頗弁済などの否認権を行使できる行為がある場合も管財事件になるのが一般的です。

自己破産では、管財事件とならず、破産管財人に選任せずに破産手続を終結させる場合(同時廃止事件)となる場合もあります。

次の項で、ご自身がどちらのパターンになりそうか確認しておきましょう。

2.同時廃止事件との振り分け基準

同時廃止事件との振り分け基準

管財事件と同時廃止事件との振り分け基準についてご説明します。

以下に該当する場合は、管財事件になることが多いです。

  • 財産がある場合
  • 免責不許可事由が疑われる場合
  • 債務額が多い場合
  • 個人事業主、法人代表者の場合

東京地方裁判所では、33万円以上の現金、または、20万円以上の価値のある財産がある場合に、管財事件としています。

また、免責不許可事由がある場合、裁判所の判断による免責(裁量免責)ができるか判断するために管財事件となります。

ほかにも借金額が大きい場合や個人事業主・法人の代表者が自己破産をする場合も破産管財人の下で手続が行われます。

上記に該当しない場合は、同時廃止事件として扱われる可能性が高いでしょう。

3.管財事件の特徴

管財事件の特徴

続いて管財事件の4つの特徴についてご説明します。

  1. 財産の処分が管財人に委ねられる
  2. 破産管財人から質問を受ける
  3. 郵便物が管財人に届くようになる
  4. 旅行等に裁判所の許可が必要となる

どのような制限を受けることになるのかチェックしておきましょう。

(1)財産の処理が破産管財人に委ねられる

破産者が所有する財産は破産管財人が管理するため、自由に処分することができません。

破産財団に属する財産は破産者の意思に関係なく処分されるので、換金方法等が指定できない点を覚えておきましょう。

ただし、自由財産に該当する財産は、破産管財人の管理対象外になります。

  • 主な自由財産の例は以下のとおりです。
  • 新得財産(破産手続開始後に取得した財産)
  • 99万円以下の現金
  • 差押禁止動産(生活に欠かせない用品)
  • 差押禁止債権(確定給付企業年金、確定拠出年金など)

また、東京地方裁判所では、預貯金や解約返戻金等20万円以下の財産についても自由財産とする扱いをとっています。

どのような財産が自由財産になるかについては裁判所ごとに扱いが異なりますので、お近くの弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

(2)破産管財人から質問を受ける

破産管財人は自己破産手続を進めるにあたって財産状況や生活状況の調査を行います。

調査の方法は、破産管財人との面談によることがほとんどです。

破産管財人の事務所に赴いて、収入や月々の生活費、現有資産など、申立書の内容をもとにした質問に回答することになります。

また、免責不許可事由がある場合、債務発生の経緯などについても質問が行われます。

破産管財人から質問されたことに対しては偽りなく回答する必要があります。

正確に回答できるよう、準備をしておきましょう。

(3)郵便物が管財人に届くようになる

管財事件として手続が開始されると、郵便物は破産管財人のもとに転送されるようになります。

これは、本人が申告していない財産や債務がないかどうか、破産管財人が郵便物から判断するために行われる手続です。

そのため、自己破産手続中は、第三者から送られてきた郵便物を直接受け取ることはできません。

多くの場合は、定期的に破産管財人の事務所まで取りに行くことになります。

自己破産手続が終了するまで継続されるので、郵便物の受け取りが不便な点は想定しておくことをおすすめします。

(4)旅行等に裁判所の許可が必要となる

破産の手続中は、2泊以上の旅行について裁判所の許可が必要となります。

また、引っ越しについても同様です。

これらについては、裁判所からの連絡に応じなくなるなど、手続の障害になるような事情がなければ許可される傾向にあります。

4.管財事件の主な流れ

管財事件の主な流れ

管財事件の流れについてご紹介します。

主な流れは以下のとおりです。

  1. 申立て(申立書の補正、裁判官面談等)
  2. 破産手続開始
  3. 破産管財人の選任、予納金の納付
  4. 破産管財人との打合せ
  5. 破産管財人による財産の調査や換価処分手続
  6. 債権者集会
  7. 債権者に配当
  8. 免責審尋
  9. 免責許可の決定

まずは、必要な書類を揃えて、裁判所に自己破産手続の申立てを行いましょう。

裁判所によっては裁判官との面談、申立書の補正等が行われた後、管財事件か同時廃止事件のどちらかに決まります。

なお、本人が申し立てた場合は管財事件となるのがほとんどです。

管財事件として自己破産手続が開始されると、破産管財人が選任されます。

予納金の納付先の銀行口座が指定されるので、期日までに予納金の納付を行いましょう。

破産管財人との打合せでは質問等に答え、後日、破産管財人が財産の調査や処分を行い、債権者に対して弁済・配当する準備を行うことになります。

財産調査がひと段落したら、破産管財人は債権者に対して破産者の財産状況等について説明会を開催し、配当可能な財産があれば期日までに配当が行われます。

債権者集会や免責審尋が終了して1週間程で裁判所が最終的な免責可否について決定します。

免責許可が決定されると官報にその旨が掲載され、その時から2週間以内に債権者から異議がなかった場合に免責が確定します。

まとめ

自己破産で管財事件として手続が進められると、さまざまな影響を受けることになります。

裁判所から管財事件と判断されたら、破産管財人との接触が多くなるため、誠実に対応することを心がけましょう。

弁護士法人みずきでは、自己破産に関する相談を無料で受け付けておりますので、管財事件に関することでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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