自己破産で同時廃止事件になるケースとは?メリットと主な手続き

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「どのような場合に同時廃止事件になるのか」
「同時廃止事件のメリットとは何か」

自己破産を検討している方の中には、費用を抑えられる同時廃止事件にするためにはどうしたらいいのか調べている方もいるのではないでしょうか。

弁護士による申立てであり、なお且つ管轄裁判所の要件を満たす場合は、同時廃止事件として手続を進めることができます。

本記事では、自己破産で同時廃止事件として扱われるための要件や主なメリット、手続の流れについてご紹介します。

1.自己破産で同時廃止事件になるケース

自己破産で同時廃止事件になるケース

破産事件は、管財手続が原則です。

しかし、明らかに債権者へ配当できるお金(破産財団)が生じないケースでも管財手続を行わなければならないとすると、債務者、債権者、そして裁判所にとっても負担が大きくなってしまいます。

そこで、破産法のうえでは、例外的に、破産財団の形成が見込めないことが明らかな場合、同時廃止事件という簡易な手続を選択できることになっています。

多くの裁判所では、管財事件と同時廃止事件との振り分け基準を定めています。

たとえば、東京地方裁判所では、次の1~6全てにあてはまらない場合は同時廃止が選択できるとしています。

  1. 33万円以上の現金がある場合
  2. 20万円以上の換価対象資産がある場合
  3. 所有不動産に設定されている抵当権の被担保債権額が、不動産処分予定価格の1.5倍未満の場合
  4. 資産調査が必要な場合
  5. 法人の代表者や個人事業主の場合
  6. 免責不許可事由の存在が明らかでその程度が軽微といえない場合

いずれにも該当しない場合には、同時廃止事件になります。

(1)33万円以上の現金がある場合

33万円以上の現金を債務者が有している場合には、管財事件に振り分けられます。

これは、債務者が33万円以上の現金を有している場合には、経験則上、他にも財産を有しているとの疑いを生じさせ、調査が必要であると考えられているためです。

(2)20万円以上の換価対象資産がある場合

20万円以上の換価対象資産がある場合は、管財事件に振分けられます。

換価対象資産は、資産類型ごと(費目・項目ごと)に20万円以上か否かが判断されます。

たとえば、債務者の保有資産が、

  • 現金25万円
  • 解約返戻金相当額が15万円の生命保険契約
  • 自家用車の資産価値が10万円

だった場合は、同時廃止事件に振り分けられます。

他方で、債務者の保有資産が、

  • 現金25万円
  • 解約返戻金相当額が15万円の生命保険契約
  • 自家用車の資産価値が25万円

だった場合は、20万円以上の換価対象資産があるため、管財事件に振り分けられます。

(3)所有不動産に設定されている抵当権の被担保債権額が、不動産処分予定価格の1.5倍未満の場合

所有不動産に設定されている抵当権の被担保債権額が、不動産処分予定価格の1.5倍未満のオーバーローン又はアンダーローンの場合、管財事件に振り分けられます。

抵当権の残額が不動産の価値の1.5倍以上の場合、たとえ高く売れたとしても、他の債権者への配当が生じる可能性は低いです。

こういった事案では、同時廃止事件を選択しても事実上問題がないことになるため、裁判所によってはこのような基準を設けています。

また、同時廃止に振り分けられるオーバーローンの程度も裁判所によって異なります。だいたい1.3倍~1.7倍など、1.5倍前後の数字であるケースが少なくありません。

(4)資産調査が必要な場合

保有しているすべての資産を申告していない可能性が疑われる場合は管財事件として取り扱われます。

たとえば、保有しているすべての口座の預貯金通帳を提出していない可能性がある場合や、口座の取引履歴で使途不明の入出金がある場合、受領した退職金や保険金の使い道を疎明できない場合などがこれにあたります。

(5)法人の代表者や個人事業主の場合

現在法人の代表者である者は、原則として、法人と併せて管財事件として扱われます。

また、かつて法人の代表者であった場合も、管財事件として扱われる場合があります。

個人事業主の場合、会社の代表者と同じように調査が必要になるので管財事件として扱われます。

もっとも、個人事業主であるものの、業務委託により委託先から特定の売上が毎月入り、月々の売上に大きく変動がない場合等のように、実質的に給与を受け取っている場合と変わらないときは、同時廃止として扱われることもあります。

(6)免責不許可事由の存在が明らかでその程度が軽微といえない場合

免責不許可事由とは、破産手続により免責が認められない法定の理由のことです。

この理由があると、借金が免除されないことになってしまいます。

免責不許可事由は、破産法252条1項各号に定められています。

たとえば、次のような場合は、免責不許可事由にあたる場合があります。

  • 破産者の地位や職業、収入及び財産状態に比して、通常の程度を超えた支出をした。
  • ギャンブルや先物取引、FX取引などの投機的な取引をした。
  • 特別の利益を与える目的等で、特定の債権者にだけお金を返した。
  • 裁判所等による調査に対してウソの説明をした。
  • 氏名や信用状態等について、相手を誤信させてお金を借りた。

もっとも、免責不許可事由に該当する場合であっても、裁判官の裁量判断により免責が認められる「裁量免責」という制度があります。

免責不許可事由があったらただちに破産できないというわけではありませんので、裁量免責を得られる程度であるかを含め、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

2.同時廃止事件のメリット

同時廃止事件のメリット

同時廃止事件になるメリットについてご紹介します。

主なメリットは以下の2つです。

  1. 費用が安い
  2. 手続の負担が少ない

(1)費用が安い

同時廃止事件のメリットの1つ目は、手続にかかる費用が管財事件と比べると安価になるという点です。

管財事件になると、裁判所は管財人という中立的な立場の弁護士を選任します。

この管財人報酬として、最低20万円を超える引継ぎ予納金(自己破産手続で裁判所に支払う費用)が必要になります。

しかし、同時廃止事件に振り分けられた場合には、このような金銭的負担は必要ありません。

(2)手続の負担が少ない

同時廃止事件のメリットの2つ目は、管財事件と比べて手続の負担が少ないという点です。

管財事件になると、調査を要するため、破産手続きが終了するまでに長く時間がかかったり、郵便物を管財人を通じて受取ることになったり、管財人と面談するための時間を要したりすることになります。

しかし、同時廃止事件に振り分けられた場合には、これらの負担がありません。

このように同時廃止にはいくつかのメリットがあります。

しかし、債権者から免責に対する意見が出る可能性がある場合など、中立的な立場で調査し意見する管財人がいなければ破産手続を終えて免責を受けるというゴールにたどり着けないケースもあります。

破産は免責を得るための手続ですので、ゴールを見据えたうえで同時廃止と管財のどちらで申立てをすべきかは適切に選択する必要があります。

3.同時廃止事件の主な流れ

同時廃止事件の主な流れ

同時廃止事件の全体の流れについてご紹介します。

  1. 破産を申し立てる
  2. 裁判官と面接をする(債務者審尋)
  3. 破産手続開始決定及び同時廃止の決定
  4. 裁判官と面接をする(免責審尋)
  5. 免責許可又は免責不許可の決定

(1)破産を申し立てる

多くの場合、破産を希望する方から依頼を受けた弁護士が破産を申し立てます。

申立書類や多岐にわたる添付書類の作成を弁護士が行います。

(2)裁判官と面接をする(債務者審尋)

(1)で裁判所に提出した申立書類の内容の確認を行います。

そのうえで、裁判官が、当該事件を同時廃止事件と扱うか、管財事件と扱うかについて振り分けを行います。

(3)破産手続開始決定及び同時廃止の決定

(2)で同時廃止事件に振り分けられた場合には、破産手続きの開始決定と破産手続きを終了させる廃止決定が同時に行われます。

(4)裁判官と面接をする(免責審尋)

裁判官が、債務者に対し、免責不許可事由がないか確認を行います。

(5)免責許可又は免責不許可の決定

裁判所が、債権者の意見を聞いたうえで、免責許可の可否を決定します。

免責許可は、前述した一定の免責不許可事由がない限り、必ず発令されることになります。

まとめ

管財事件よりも同時廃止事件の方が、費用を抑えつつ迅速に手続を行うことができます。

ただし、同時廃止事件になるためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。

今回ご紹介した要件に該当している方は、同時廃止事件になる可能性があるので、そのことを踏まえて弁護士に自己破産の相談をしてみましょう。

弁護士法人みずきでは、同時廃止事件に関する相談を無料で受け付けております。自己破産を検討している方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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