過失割合のゴネ得とは?示談交渉に与える影響や対処法について弁護士が解説

執筆者 潮崎 雅士 弁護士
所属 第二東京弁護士会
初動が大事。様々なことに当てはまりますが、法律問題もそうです。しかし、今まで法律問題に関わったことがなく、どうすればよいかわからない方が多いと思います。そうして初動が遅れると、最良の解決は難しくなってしまいます。
逆に相談が早ければ早いほど、より良い解決がしやすくなります。ですので、何かお困りのことがあれば、お早めにご相談ください。皆様の法律問題の最良の解決に向けて全力でサポートさせていただきます。

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「過失割合で相手がゴネてきたらどうしたらいいのか」
「示談交渉でゴネ得をさせないためにはどうすべきなのか」
交通事故の被害に遭われた方の中には、示談交渉で加害者側から過失割合でゴネられて困っている方もいると思います。
過失割合は、示談交渉で交通事故の当事者同士が話し合って決める事柄です。
当事者間の過失割合は、加害者が被害者に対して支払う示談金の金額を左右する重要な要素であるため、加害者側が過失割合を巡ってゴネることがあります。
しかし、加害者側が主張する過失割合で示談が成立してしまうと、被害者は適正な示談金を受け取ることができないリスクが高まるため、注意が必要です。
本記事では、過失割合で加害者がゴネる理由やゴネてきたときの対処法等について解説します。
1.ゴネ得とは
過失割合におけるゴネ得とは、不当な主張を繰り返したり、合理的な理由なく交渉を長引かせたりすることで、より有利な過失割合で解決することをいいます。
双方の車が動いている事故態様の場合、双方に過失が出ることが多いです。
そのような場合、交渉によって過失割合を決めることになります。
その際の加害者の主張が合理的なものであればそれを前提に交渉をすれば問題ありませんが、不合理なものである場合、それを前提に交渉してしまうと被害者にとって不利な解決となり、適正な被害回復がされないこととなってしまいます。
そのため、被害者は加害者にゴネ得をさせないように立ち回ることが大切です。
2.加害者がゴネる理由
加害者が過失割合について、ゴネる主な理由は、以下の2つです。
- 支払う示談金を低く抑えたいから
- 示談交渉自体を長引かせたいから
なお、これ以外にも示談交渉が難航してしまう原因はいくつか考えられます。
示談交渉においてお互いの意見が合わずに難航してしまう主な理由については、以下の記事もご参照ください。
(1)支払う示談金を低く抑えたいから
加害者は支払う示談金を低く抑えることを目的にゴネてくる可能性があります。
被害者に過失が認められた場合、過失相殺という処理が行われ、被害者の過失分を差し引いた金額が支払う示談金となります。
そのため、被害者の過失割合が高くなれば、加害者はその分、支払う示談金の額を低くすることができます。
このような事情から、加害者は、過失割合の交渉において主張を強引に通そうとしたり、被害者の言い分を一切聞かなかったりして、被害者が諦めて合意することを狙っている場合があることに注意が必要です。
示談は、一度成立してしまうと、これを撤回することは基本的にはできません。
そのため、加害者がこのような対応をとった場合には、速やかに弁護士に相談し、加害者の主張の妥当性について確認することが重要です。
(2)示談交渉自体を長引かせたいから
示談交渉自体を長引かせることを目的にしている場合もあります。
被害者は、示談交渉が終了するまでは、基本的に示談金を受け取ることができません。
そのため、過失割合について争うことで、示談金の支払いを先延ばしにすることができます。
被害者は、怪我による身体的負担と示談交渉自体による心理的負担を抱えていることが多いです。
そういった被害者は、早く解決させて心理的負担だけでも無くしたいと思い、加害者の不当な主張を受け入れてしまうことがあります。
そうすると、上記で述べたように、加害者は支払う示談金を低く抑えることができ、結果的に加害者が望んだ内容で決着してしまうことになります。
このように、示談交渉を長引かせることを狙って加害者が過失割合についてゴネることもありますが、その背景には示談金の支払を減らしたいという思惑がある点を意識しておくことが重要です。
特に被害者本人が交渉の相手である場合には、このような態度をとる傾向にあるため、過失割合について不当な主張を繰り返された場合にも、まずは弁護士に相談することが適正な賠償金を獲得することにつながります。
3.ゴネられた場合に過失割合で妥協すべきでない理由
交通事故における賠償金は、過失割合によって大きく変わるため、ゴネられても妥協すべきではありません。
具体的には、交通事故によって発生した損害賠償額が1000万円の場合、過失割合によって以下のように金額が変動します。
過失割合(加害者:被害者) | 被害者が最終的に受け取ることができる示談金額 |
10:0 | 1000万円×(1−0)=1000万円(全額) |
8:2 | 1000万円×(1−0.2)=800万円(2割減額) |
7:3 | 1000万円×(1−0.3)=700万円(3割減額) |
このように、被害者に高い過失割合が認められてしまうと、その分だけ最終的に受け取ることができる示談金が減少してしまうことに注意しましょう。
また、加害者にも損害が発生している場合、過失割合に応じて、被害者も加害者の損害を賠償する必要があるため、受け取ることができる賠償額はさらに減少してしまいます。
そのため、過失割合の交渉において、加害者側がゴネてきたとしても、妥協せずに根気強く交渉することが重要です。
4.加害者が過失割合でゴネてきた場合の対処法
加害者は、上記のような理由から、過失割合について争う姿勢を見せることが多く、加害者側の保険会社は「保険実務ではこのような扱いになっている」などの主張をして、交渉の余地がないかのような言動をとるケースもあります。
そうすると、被害者ご自身で交渉を行っても、保険会社の担当者は応じないことがほとんどです。
そのような場合、以下のような対処をすることが考えられます。
- 弁護士に相談する
- 保険会社が主張する基本過失割合を確認する
- 修正要素の有無を確認する
- 客観的な証拠に基づいて反論・立証を行う
順にご説明します。
(1)弁護士に相談する
保険会社が提示する過失割合に疑問や納得のいかない点がある場合には、まずは弁護士に相談することが最も重要です。
特に交通事故の対応に慣れた弁護士であれば、過失割合を決定する要素や根拠などについて熟知しています。
そのため、保険会社の主張に対して、適切な判断や反論をすることが可能です。
また、弁護士に相談することで示談交渉を依頼することもでき、弁護士に示談交渉を依頼することによって、後述する対応についてもアドバイスやサポートを受けることができます。
(2)保険会社が主張する基本過失割合を確認する
保険会社が主張する過失割合も何らかの根拠に基づいていることが多いため、保険会社の主張の根拠が何かを確認することが大切です。
保険会社が主張の根拠としている基本過失割合の選択が常に正しいとは限りません。
基本過失割合は事故状況などによって類型化がされているものの、適切な過失割合を導き出すのが難しい事故類型もあります。
また、そもそも類型自体が存在しないような事故であった場合には、裁判例や法律の規定の趣旨などを斟酌した上で過失割合を検討することが求められます。
このように、適切な基本過失割合を選ぶことは専門知識や経験がなければ難しい場合もあるため、弁護士に依頼することをおすすめします。
(3)修正要素の有無を確認する
事故類型ごとの修正要素の有無や内容について把握しておくことも大切です。
過失割合は、基本過失割合のみでは確定せず、修正要素にあたるような事情が存在する場合には、これを考慮した上で過失割合が決められます。
具体的な修正要素は、事故類型によって異なり、基本過失割合に及ぼす影響もさまざまです。
もっとも、どのような事情が修正要素として考慮されるのかは専門知識や実務経験がなければ判断が難しい場合がほとんどです。
基本過失割合や修正要素については、弁護士に相談の上で説明を受けることが望ましいでしょう。
(4)客観的な証拠に基づいて反論・立証を行う
加害者の主張を覆すには、客観的な証拠に基づく効果的な反論・立証が不可欠です。
具体的には、ドライブレコーダーの映像のほか、事故現場の防犯カメラの映像などに基づきながら事故当時の道路状況や当事者の行動などを明らかにし、反論していく必要があります。
ただし、どのような証拠に基づいて反論・立証を行うべきかは事案によって異なり、専門的な知識が不可欠です。
そのため、弁護士のサポートを受けながら証拠の収集と反論・立証を進めることが大切です。
4.加害者側の保険会社がゴネてきた場合に弁護士に相談・依頼するメリット
上記のように、加害者側の保険会社が過失割合を巡って争ってきた場合には、さまざまなポイントを押さえながら対応を進めることが必要です。
交渉を進めることに不安や悩みがある場合には、弁護士に相談の上、対応を依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- 適切な過失割合を反論・立証できる
- 保険会社への対応を依頼できる
- 訴訟などの法的手続を視野に入れた交渉を行うことができる
なお、弁護士への相談は、示談が成立する前であればいつでもすることができます。
弁護士に相談すべき最適なタイミングや相談したタイミングごとのメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
(1)適切な過失割合を反論・立証できる
弁護士に依頼することで、保険会社の主張に対して、適切な過失割合を反論・立証することができます。
先ほども述べたように、過失割合の反論・立証のためには客観的な証拠が必要です。
弁護士に相談することで、適切な過失割合を立証するために不足している証拠について説明を受けることができます。
なお、被害者ご自身で収集できる証拠には限界があるため、弁護士に相談するだけでは対応できないことがあるのも事実です。
例えば、防犯カメラの映像などについては、被害者ご自身で収集することはできないこともあります。
しかし、弁護士に相談の上で交渉を依頼すると、そのような証拠についても収集を依頼することが可能です。
(2)保険会社への対応を依頼できる
弁護士に相談の上で示談交渉を依頼すると、保険会社への対応を弁護士に一任することが可能です。
特に過失割合などを巡って交渉が難航している場合には、精神的負担も大きく、弁護士に対応を依頼することで、そのような負担を軽減させることにつながります。
また、保険会社の担当者も弁護士が代理人として交渉窓口に立つと、態度を改めて不当な主張をしなくなるケースもあります。
そのため、示談交渉をスムーズに進めることができ、早期解決へ至る可能性も高まります。
(3)訴訟などの法的手続を視野に入れた交渉を行うことができる
弁護士であれば、訴訟などの法的手続を視野に入れた交渉を行うことが可能です。
過失割合は、示談交渉で決めることが多いものの、お互いの主張に折り合いがつかない場合もあります。
そのような場合には、訴えを提起して裁判所で過失割合と損害賠償金について確定させることになります。
弁護士に示談交渉を依頼することで、交渉に折り合いがつかなかった場合の対応についても一任することができます。
なお、交通事故に関する裁判の流れやポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
交通事故の加害者側は、示談金の減額や示談交渉の長期化を図って、過失割合に関して意図的にゴネるケースも多いです。
加害者側がゴネ得を狙ってきた場合は、被害者ご自身で示談交渉を行うと難航する可能性があるため、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで、解決に向けてスムーズなやり取りが実現し、示談金の増額等を期待できるのがメリットです。
弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で受け付けておりますので、加害者側との示談交渉に困っている方はお気軽にご相談ください。
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執筆者 潮崎 雅士 弁護士
所属 第二東京弁護士会
初動が大事。様々なことに当てはまりますが、法律問題もそうです。しかし、今まで法律問題に関わったことがなく、どうすればよいかわからない方が多いと思います。そうして初動が遅れると、最良の解決は難しくなってしまいます。
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