交通事故の裁判はどのくらいの期間がかかるの?手続の流れは?

交通事故の裁判はどのくらいの期間がかかるの?手続の流れは?

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「交通事故の裁判にかかる期間ってどれくらい?」
「裁判が長期間かかるのはどんなケース?」

交通事故の被害に遭って裁判をすることになった場合、どのくらいの期間がかかるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

交通事故の裁判は期間として平均1年程かかりますが、早ければ6か月以内に終わる場合もあります。

この記事では、交通事故の裁判にかかる期間はどれくらいなのか、裁判の流れ、裁判が長引くケースについてご説明します。

1.交通事故の裁判で判決が確定するまでの期間

交通事故の裁判で判決が確定するまでの期間

裁判には民事裁判と刑事裁判の2種類あり、交通事故の民事裁判にかかる期間は平均1年程です。

ここからは民事裁判と刑事裁判の違い、交通事故の民事裁判の期間について解説します。

(1)裁判には民事裁判と刑事裁判がある

裁判には民事裁判と刑事裁判がありますが、交通事故の被害者が加害者側に訴訟する場合には民事訴訟を行うことになります。

民事裁判と刑事裁判の違いを分かりやすくまとめると以下のようになります。

  • 民事裁判→私人と私人の争いを解決するためのもの
  • 刑事裁判→国家が私人に刑罰を科してよいかどうか決めるもの

つまり、交通事故の被害者が加害者側に損害賠償を求める場合は私人と私人の争いに該当するので、民事裁判を行うことになります。
一方、検察官が交通事故の加害者に懲役や罰金などの刑罰を求める場面は刑事裁判となるというわけです。

(2)交通事故の民事裁判にかかる期間は平均1年

「交通事故の裁判って時間がかかりそう」という印象を持っている方も多いと思いますが、民事裁判では半数以上が1年以内に審理終了(結審)しています。

裁判所が公開している交通損害賠償事件の審理期間ごとの割合はこちらです。

6か月以内 19.7%
6か月超1年以内 41.7%
1年超2年以内 32.7%
2年超3年以内 5.3%
3年超5年以内 1.0%
5年超 0.04%

出典:事件類型別事件状況①(平成30年終局)|裁判所

このように、約20%のケースで6か月以内、約40%のケースで6か月~1年以内に結審を迎えていて、平均審理期間は12.4か月です。なかには2年を超える長期間がかかるケースもありますが、ほとんどの場合2年以内で裁判を終えている結果となっています。

2.交通事故の民事裁判手続の流れ

交通事故の民事裁判手続の流れ

交通事故の民事裁判は1年程かかることが分かりましたが、どういう流れで手続が進んでいくのかも把握しておくことをおすすめします。

交通事故の民事裁判のおおよその流れはこちらです。

  1. 裁判所に訴状を提出
  2. 第1回口頭弁論
  3. 争点・証拠の整理
  4. 和解協議
  5. 和解または判決

それぞれの段階の詳細を詳しくご説明します。

(1)裁判所に訴状を提出

裁判を始めるにあたり、原告、つまり、損害賠償を請求する側で訴状を作成し裁判所に提出しなければなりません。
訴状の書式や記入例は裁判所に用意されてはいますが、弁護士に依頼していれば、当然訴状の作成、提出も弁護士が行うことになります。

また、訴状のほかにも病院の診断書、交通事故証明書などの証拠書類を用意しなければなりませんが、これも弁護士に依頼することにより取り寄せ等を任せることができます。

訴状や証拠書類等の準備ができたら、原告(損害賠償を請求する被害者)の住所地または被告(請求を受ける加害者)の住所地、もしくは事故発生場所の住所地を管轄する裁判所に提出します。

裁判所は訴状に不備がないことを確認すると、原告が提出した書類を被告に送付します(「送達」といいます)。

(2)第1回口頭弁論

訴状の送達後、だいたい1か月後に第1回の口頭弁論期日が開かれます。
口頭弁論では、法廷において、当事者またはその代理人弁護士による書面の陳述や証拠の取り調べが行われます。
陳述といっても書面をすべて読み上げるのではなく、その書面について「陳述します」と一言告げるだけです。

初回以降の口頭弁論期日は、だいたい1か月ごとに開かれるようになります。なお、弁護士に依頼をしている場合は、当事者が裁判に出席する必要はありません。

被告が答弁書を提出せず、第1回の口頭弁論期日にも出席しなかった場合は、被告がすべての請求を認めたことになり、審理は終結し、判決が出されることになります(「欠席判決」といいます。)。
欠席判決は、被告が任意保険会社に加入しておらず、損害を賠償する資力もない場合に見られます。

(3)争点・証拠の整理

口頭弁論期日が開かれ、原告と被告の主張や争点を整理していく段階になると、弁論準備期日という非公開の期日に移行することがあります。
口頭弁論期日、弁論準備期日を繰り返し、争点を明らかにしつつ、双方が主張を客観的に裏付ける証拠を提出します。
裁判所はその証拠を確認した上で、事故状況等を当事者に確認する必要があると判断すると、尋問が行われることになります。

尋問が行われる場合は、被害者本人も出廷しなければなりません。

(4)和解協議

争点・証拠の整理が終了した段階で、裁判所から和解を勧告されることがあります。
和解とは、裁判所が仲介し、原告と被告の双方が合意のうえで紛争を解決することです。

双方が裁判所から提示された和解案を受け入れれば和解が成立します。

和解の試みは、尋問の前後に行われることが多いです。

(5)和解または判決確定

和解協議ののちに和解が成立すれば、和解によって裁判は終了となります。
和解調書が作成され、被害者は和解の内容に従って損害賠償金を受け取ることになります。

和解が成立しなかった場合は、必要に応じて尋問が行われます。
尋問後の和解の試みも奏功しなければ、判決が出されることとなります。

当然ですが、判決になった場合に被害者が必ず全面勝訴するとは限りません。
一切主張が認められず敗訴となることも、主張の一部のみが認められることもあります。
判決に不服がある場合は控訴を行い、上級審の判断を仰ぐこともできます。

和解が成立すれば裁判の期間は比較的短く済みますが、和解が成立しないと長期化する可能性があります。
控訴となれば、さらに長引くものと覚えておきましょう。

3.交通事故の裁判が長引く4つのケース

交通事故の裁判が長引く四つのケース

交通事故の裁判は半数以上が1年以内に終了していますが、事故の内容によっては長引いてしまいます。数は少ないものの、3年を超えるような長期の裁判もあります。

交通事故の裁判が長引くケースとして、以下の4つが挙げられます。

裁判が長引くケース

  1. 過失割合で争いが起きる場合
  2. 後遺症が残る事故の場合
  3. 死亡事故の場合
  4. 鑑定が実施される場合

ここからは裁判が長引くケースについて詳しくご説明します。

(1)過失割合で争いが起きる場合

交通事故の損害賠償金を大きく左右するのが過失割合です。過失割合とは、事故の当事者がそれぞれどの程度責任を負うかを割合で示したものです。

被害者側にも過失があると判断されると、その割合分の損害賠償金が減額されます(「過失相殺」といいます。)。
過失割合は事故の状況をもとに決められますが、被害者と加害者の意見に食い違いがあり、争いになることが多いです。ドライブレコーダーや防犯カメラなどの客観的な動かしがたい証拠があれば比較的スムーズに決まっていきますが、そのような証拠がない場合は当事者の尋問によってどちらの言い分に整合性があるかを判断する必要があるため、裁判が長引きやすいです。

(2)後遺症が残る事故の場合

交通事故の怪我が後遺症として残ってしまった場合、被害者は加害者側に後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求することができます。

後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級によって請求できる金額の目安が決まっています。
しかし、後遺障害の等級の認定を受けていても、加害者側の保険会社がこれを争ってくることがあります。
そうなると、お互いに医師の意見書を証拠として出し合うなどするため、裁判が長引くことがあります。

(3)死亡事故の場合

被害者が死亡してしまった死亡事故の場合、加害者と遺族の間で争いが生じやすいです。損害賠償も高額になるので、加害者も主張や反論が多くなり、裁判が長引くでしょう。

また、交通事故から死亡するまでに期間が空いた場合には、死亡の原因が本当に交通事故によるものなのか明確にする必要があります。
こういった場合、医学的な分野での立証が必要になるため、結果的に裁判が長期に及びます。

(4)鑑定が実施される場合

交通事故の裁判では、裁判所の指名により鑑定が実施されることがあります。
鑑定とは、専門的知識と経験を有する鑑定人に、判断や意見を求めることです。

鑑定の具体例としては、医師による医学鑑定、損傷状況等に基づく事故の原因調査などが考えれらます。

鑑定が実施されることは多くありませんが、仮に実施された場合、裁判の長期化は避けられません。

まとめ

交通事故における裁判の期間は、早ければ6か月以内、平均的には1年程かかります。裁判の途中で和解が成立すれば比較的短期間で裁判は終了しますが、和解が成立しなければ1年半程かかる場合もあります。

また、なかには2年や3年以上と長期間を要するケースもあると理解しておきましょう。裁判が長期間かかるケースとしては、過失相殺に争いがある、後遺症が残った事故、死亡事故などが挙げられます。

事故の内容に関わらず、スムーズに裁判を進めたいならば、弁護士のサポートが必要不可欠です。裁判の期間について不安がある、裁判そのものを悩んでいるならば、まず弁護士に相談することをおすすめします。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。