高次脳機能障害と後遺障害等級の判断基準

高次脳機能障害とは、脳が損傷を受けたために、言語、行為、認知、記憶、注意、遂行機能、社会的行動などの高次の精神活動に障害が生じている状態をいいます。
交通事故に遭い、頭に大きな衝撃を受けたことで、人格が変わってしまったり、記憶力が大きく低下してしまうなどの症状が現れたとしたら、高次脳機能障害という後遺症があるかもしれません。
ここでは、どのような症状の場合に、どの程度の後遺障害等級が認められることになるかご説明します。

※症状に気付いた場合にはどうすればよいか、どのような検査を受ければよいかは、
「高次脳機能障害~後遺障害認定のためにできること~」
「高次脳機能障害を後遺障害と認められるために」
を参照ください。

高次脳機能障害における後遺障害等級

高次脳機能障害が認められた場合には、その障害の程度によって、「神経系統又は精神の障害」もしくは「局部の神経系統の障害」として、後遺障害等級の以下の等級に該当することとなります。

(神経系統又は精神の障害)
第1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
第3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
第5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
第7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
第9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

(局部の神経系統の障害)
第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
第14級9号 局部に神経症状を残すもの

高次脳機能障害における後遺障害等級の判断要素

これらの後遺障害等級のいずれに該当するかは、①意思疎通能力、②問題解決能力、③作業負荷に対する持続力・持久力、④社会行動能力の4つの能力の各々の喪失の程度により判断されます。

①意思疎通能力の判定

職場において他人とのコミュニケーションを適切に行えるかどうか等について判定します。主に、記銘・記憶力、認知力または言語力の側面から判断します。

②問題解決能力

作業課題に対する指示や要求水準を正確に理解し適切な判断を行い、円滑に業務が遂行できるかどうかについて判定します。主に、理解力、判断力または集中力について判断します。

③作業負荷に対する持続力・持久力

一般的な就労時間に対処できるだけの能力が備わっているかどうかについて判定します。精神面における意欲、気分または注意の集中の持続力・持久力について判断を行います。その際には、意欲または気分の低下等による疲労感や倦怠感を含めて判断します。

④社会行動能力

職場において他人と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定します。主に協調性の有無や不適切な行動(感情や欲求のコントロールの低下による場違いな行動等)の頻度についての判断を行います。

これらの要素を判断するにあたって、複数の障害が認められる場合には、原則として障害の程度の最も重篤なものに着目して、後遺障害等級が評価されます。 例えば、意思疎通能力が9級相当、問題解決能力が5級相当、社会行動能力が7級相当の障害が認められる場合、最も重篤な問題解決能力に着目し、第5級2号が認定されます。

それでは、上記の後遺障害等級1級から14級まで、4つの能力がどの程度であれば認められることになるのかご説明します。

高次脳機能障害における後遺障害等級の判断要素

※第1級及び第2級については、介護の要否及び程度を踏まえて認定することになります。

第1級1号
「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」
具体的には、
①重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの
または
②高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの

第2級1号
「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの」
具体的には、
①重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
または
②高次脳機能障害による認知症や情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの
または
③重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの

第3級3号
「生命維持に必要な身のまわりの処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」
具体的には、
①4つの能力のいずれか1つ以上の能力の全部が失われているもの
(例:作業負荷に対する持続力・持久力「作業に取り組んでもその作業への集中を持続することができず、すぐにその作業を投げ出してしまい、働くことができない場合」)
または
②4つの能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの

第5級2号
「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」
具体的には、
①4つの能力のいずれか1つ以上の能力の大部分が失われているもの
(例:問題解決能力「1人で手順どおりに作業を行うことは著しく困難であり、ひんぱんな指示がなければ対処できない場合」)
または
②4つの能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの

第7級4号
「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」
具体的には、
①4つの能力のいずれか1つ以上の能力の半分程度が失われているもの
(例:意思疎通能力「職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためには時々繰り返してもらう必要がある場合」)
または
②4つの能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの

第9級10号
「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」
具体的には
高次脳機能障害のため4つの能力のいずれか1つ以上の能力の相当程度が失われているもの
(例:問題解決能力「1人で手順どおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、たまには助言を必要とする場合」)

第12級13号
「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの」
(例:意思疎通能力「職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、ゆっくり話してもらう必要がある場合」)

第14級9号
「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの」
MRIやCT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められる場合に該当します。

以上のように、上記の4つの能力の程度によって後遺障害等級の判断が分かれます。 弁護士に相談する際には、具体的事情をお伝えください。

高次脳機能障害における後遺障害等級の判断要素

高次脳機能障害の症状は目に見えないため、医学的に証明することが難しく、後遺症の認定も難しいとされています。また専門的な分野のため、上記の判断要素に基づく判断も1人では難しいと思います。
1人で抱え込むのではなく、弁護士に相談することによって、後遺障害等級の説明や検査の方法など様々なアドバイスを受けることができます。
高次脳機能障害でお悩みの方は、是非当事務所にご相談ください。

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