バイク事故で寝たきりになってしまったら?賠償金や本人と意思疎通が取れないときの対処法

交通事故の後遺障害等級認定の基準とは?賠償額の目安について解説

執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
私は、そんな法律の世界と皆さんを、柔和に橋渡ししたいと思っています。問題解決の第一歩は、相談から始まります。
皆様が勇気を振り絞ってご相談をしていただければ、後は私どもが皆様の緊張や不安を解消できるよう対応し、法的側面からのサポートができればと思います。敷居はバリアフリーです。あなたの不安を解消するために全力でサポート致します。

「家族がバイク事故で寝たきりになってしまい、これからどうすればいいかわからない」
「バイク事故が原因で夫が意識不明になってしまい、いつ意識が戻るかわからない」

バイク事故の被害に遭い、寝たきりになる、もしくはご家族が寝たきりになってしまわれたのであれば、大変な苦痛や不安を感じられることでしょう。

将来のことなど考えられないほど心労は大きいでしょうが、これからの被害者本人の生活を考えれば、将来の負担を少しでも減らすためにも、然るべき賠償金を受け取ることが大切です。

本記事では、寝たきりと言われる状態をはじめ、寝たきりになってしまったときにすべきこと、被害者本人と意思疎通が取れなくなったときの対処法についてご紹介します。

1.寝たきり状態とは

交通事故により頭を強く打ったり脊髄を損傷してしまったりすると、四肢麻痺や遷延性意識障害(植物状態)などの後遺症が残り、寝たきり状態になってしまうことがあります。

四肢麻痺とは、手足に運動機能障害が残ることで、ひどい場合には自分の意思では身動きが取れなくなってしまいます。

また、遷延性意識障害とは、いわゆる植物状態とも言われる、深い昏睡状態の事を指します。

こうなると、目を開けることはあっても意思疎通が取れなくなってしまいます。

バイク事故の場合、自動車事故よりも身体にかかる負荷が大きく、頭部や脊椎に大きな損傷を負いやすくなってしまいます。

そのため、バイク事故によりこのような状態になってしまったことを本記事では「寝たきり」として取り扱い、対応についてご説明します。

2.バイク事故で寝たきりになってしまった時の対応

交通事故で入院になった場合の慰謝料

バイク事故の被害に遭い、寝たきりになる、もしくはご家族が寝たきりになってしまわれたのであれば、ご本人やご家族の心労は想像を絶するものがあります。

そのような不安を少しでも解消するために、どのような対応をしていくことが必要か、順を追ってみていきましょう。

(1)まずは治療を続ける

寝たきりの状態になるようなお怪我の場合、事故後に救急搬送され、そのまま入院しているケースが多いと思います。

寝たきりの原因は脳の損傷の場合や脊髄の損傷の場合などさまざまですが、主治医の指示に従い治療を継続する必要があります。

なお、入院で個室を利用する場合、個室の利用料が賠償に含まれるか否かに争いが生じる場合があります。

この点、その被害者の状況から、個室での管理が必要であれば、賠償として認められることとなります。

事故直後や意識不明の寝たきり状態の場合には、全身管理が必要となることも多く、そのような場合には個室利用の必要性が認められる可能性が高まります。

(2)後遺障害申請を行う

一般的には、脳損傷や脊髄損傷は、元通りに治るというのが非常に難しいとされています。

そのため、事故後に昏睡状態や四肢麻痺が生じた場合、その後必要な手術や治療を行っても、寝たきりの状態が継続してしまうことは珍しくありません。

このような場合、医学的に必要な治療を一通り行った後、後遺障害申請というものを行う必要があります。

交通事故によって、完治しない症状が残ってしまったことを第三者に認めてもらう手続のことです。

後遺障害等級には、後遺症の症状に応じて1級〜14級まで定められています。

寝たきりの状態になってしまった場合は、最も高い等級である要介護の後遺障害等級1級1号に該当することが考えられます。

以下が、後遺障害等級1級1号の症状です。

等級 症状 概要
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、常時介護を要するもの。

具体的には、高度の四枝麻痺、中等度の四肢麻痺で食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの、など

後遺障害の申請を行うためには、専用の診断書を作成してもらう等、さまざまな資料を取り揃える必要があります。

また、診断書の記載内容や表現によって等級が変動し、本来認められるべき等級が認められないなどという可能性もあります。

そのため、後遺障害申請を行う際は、交通事故に詳しい弁護士に事前に相談し、適切かつ着実に進めて行くことが大切です。

(3)加害者側への損害賠償の請求

治療に区切りがつき、後遺障害の等級が定まると、今回の事故で被った損害額の算定ができるようになります。

一般的に交通事故の場合に加害者に請求できるものは以下のとおりです。

・治療費
・付添費
・通院交通費
・休業損害
・逸失利益
・傷害慰謝料
・後遺障害慰謝料

もっとも、寝たきりとなった場合には、上記の一般的な損害に加えて、以下の損害が発生していることがほとんどであり、これも加害者に請求していく必要があります。

#1:将来治療費・将来介護費用

通常、交通事故の賠償請求の対象となる治療費や介護費用は「症状固定日までに発生したもの」と考えられています。

しかし、寝たきりとなってしまった場合、症状固定日以後も被害者自身の力で生活を続けていくことはできないことがほとんどです。

場合によっては、人工呼吸器や胃ろうなどで生命活動を維持しなければならないこともあります。

そのため、寝たきりの場合には今後、今の状況を維持するのに必要な治療費や介護費用を請求することができます。

介護費用に関しては、施設介護なのか自宅介護なのか、専門家介護なのか家族による介護なのか等によって、さまざまな計算が必要となります。

示談後の生活に直結する損害ですので、適切な主張を行う必要があります。

#2:自宅改造費・自動車改造費

完全に入院や入所し続けて自宅に戻ってこない場合は別ですが、自宅での介護を行う場合には、自宅までの移動や自宅での生活のために、それぞれ改造が必要となることがあります。

たとえば段差をなくしスロープをつける、転落防止用の柵や手すりをつける、可動式のベッドを入れる、自動車に車椅子のまま乗れるようにする、等が考えられます。

これらも、医師やヘルパーに相談しながら見積もりを取り、加害者へ請求していく必要があります。

一般的なむちうちや骨折を負った事故と比べ、請求すべき項目も、そのために準備すべき資料も多くなってきますので、やはり専門家と相談をしながら進めていったほうが安心できます。

(4)意思疎通が取れない場合

寝たきり、特に遷延性意識障害(植物状態)の場合、被害者本人が意思表示をすることができなくなってしまいます。

また、遷延性意識障害ではなかったとしても、被害者がご高齢の場合、長期間寝たきりの状態が継続すると、意思能力が減退してしまうことも少なくありません。

このような場合は、本人が賠償の請求や示談の合意を行うことができなくなってしまうため、本人の代わりにその役割を負う者を定める必要があります。

この点、被害者本人が未成年であれば、親権者が法定代理権を持つので、取り立てて何らかの手続を要さずに進めることはできます。

しかし、被害者が成人である場合は、「成年後見制度」という制度を利用し、代わりに意思表示を行う人を設ける必要があります。

具体的には、家庭裁判所へ申立てを行うことで後見人を選任してもらい、その成年後見人が被害者の代理人として行動していくこととなります。

成年後見人が選任されれば、成年後見人と弁護士が契約を行うことで、弁護士が代理人として賠償請求を行うこともできるようになります。

家庭裁判所へ申立てを行う権限のある人や申立てをする家庭裁判所は次のとおりです。

申立ての権限がある人 本人・配偶者・四親等内の親族・市区町村長
申立てをする裁判所 本人の住所地を管轄する家庭裁判所

法定代理人や成年後見人を被害者本人の代理に立てる際の手続にお困りの場合は、専門家である弁護士に一度ご相談ください。

3.弁護士に依頼するメリット

寝たきりになるほどのお怪我を負った場合、当然ご本人が自身で賠償請求や示談交渉を行うことは難しいでしょう。

しかし、ご親族が対応するとしても、上記のとおり、後見手続きが必要なのか、賠償金としてはどのようなものを請求することができるのか、など検討しなければならないことがたくさんあります。

対応を間違ってしまったために、本来請求できたはずのものができなくなってしまうということも考えられます。

ですので、交通事故で被害者本人が寝たきり状態になってしまった際の事故対応は、専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。

交通事故の対応を弁護士に依頼することのメリットを2つご紹介します。

(1)手続を代行してもらえる

交通事故の対応を弁護士に依頼すると、複雑な手続や加害者側の保険会社との示談交渉を代行してもらうことができます。

交通事故によって被害者様が寝たきり状態になってしまった場合、ご本人はもちろんご家族も今後の生活や将来に対して不安が尽きないことと思います。

そのような状況であっても、加害者側の保険会社は専門用語を用いて加害者にとって有利な示談交渉を進める可能性があります。

また、加害者側の保険会社担当者も、法律の専門家ではないので、本当であれば後見人を選任した上で進めなければならないにもかかわらず、そのような案内もされずに良く分からないまま示談までいってしまう、ということもあり得ます。

少しでも被害者本人やご家族の負担を軽減するためにも、交通事故の対応を弁護士に任せることをおすすめします。

(2)弁護士基準で賠償金請求できる

交通事故の対応を弁護士に依頼すると、弁護士基準で慰謝料を算出することができます。

交通事故における慰謝料の算出基準は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の3つがあります。

なかでも弁護士基準は、過去の裁判例をもとに慰謝料を算出する基準であるため、被害者にとって適正な額であることが多いです。

また、一般的には「自賠責保険基準」<「任意保険基準」<「弁護士基準」の順で金額が高額となります。

例えば、算出基準別の後遺障害慰謝料額は次のとおりです。

ただし任意保険会社は、自社独自の算出基準を設けており非公開であるため一概に相場を定めることはできません。

後遺障害等級 自賠責保険基準 弁護士基準
1級1号(別表第一) 1650万円 2800万円

最高等級である1級1号ともなると、自賠責保険基準も一見高額に見えますが、実際は裁判所が認定する金額から大きな差があるのが分かると思います。

このように、弁護士に交通事故における対応を依頼することで弁護士基準の賠償金を請求することができます

まとめ

バイク事故が原因で、ご家族や近親者が寝たきりになってしまうのはあまりに悲しく、苦しいことでしょう。

突然の事故でそのような状況になってしまっては何も考えられない気持ちもあるかと思いますが、やるべきこと、考えるべきことはどんどん出てきてしまいます。

心身ともに大きな負担を少しでも軽減するために、弁護士に手続や交渉をご依頼されることをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、被害者さまやご家族さまの心に寄り添い、少しでも事故後の生活の負担を減らすべく誠心誠意サポートさせていただきます。

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執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

法律は堅苦しいという印象はあるかと思います。しかし、そんなイメージに阻まれて、皆さんの問題や不安が解決されないのは残念でなりません。
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