成年後見制度について|付されるまでの流れを解説!

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成年後見制度

成年後見制度とは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に対し、家庭裁判所が後見開始の審判をすることにより開始する制度です。つまり、判断能力が不十分である方が不当な契約などを結ばないように、公的機関が保護するための制度といえます。
「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」とは、判断能力の乏しい状態が常に継続してしまう方をいいます。このような方は、悪質な訪問販売や介護施設への入所などの本人でなければ決めることができない事項について、他人に言われるがまま意思決定をしてしまう危険があります。このような危険から本人(成年被後見人)の身を守るために、法律上、後見制度が用意されています。
判断能力が不十分になった場合に、家庭裁判所に対し、後見開始の審判を求める手続を「法定後見制度」といいます。

任意後見制度

「法定後見制度」の他に、「任意後見制度」も存在します。
「任意後見制度」とは、本人の判断能力が十分なうちに、将来判断能力が不十分となってしまうときに備えて、本人自らが選んだ後見人に、財産管理などの法律行為を行う権限を与えることをいいます。
自らが選んだ後見人に権限を与えるためには、口約束だけでは足りず、公正証書を作成する必要があります(任意後見契約に関する法律第3条)。公正証書の作成には、公証人が携わるため、当事者間のみで後見契約を結ぶわけではありません。
本人の判断能力が不十分な状態に陥ってしまった場合、家庭裁判所は、任意後見監督人を選任します。任意後見監督人とは、あらかじめ選任された後見人がきちんと財産管理などの事務を行っているか、公的機関としての立場から、監督する役割を担う者です。そのため、配偶者や兄弟姉妹、子供などが就任することはできず、弁護士などの法律事務の専門家が就任することが一般的です。
「法定後見制度」と「任意後見制度」は、公的機関による適切な監督の下、後見人が本人の財産管理などの事務を執り行う点で共通しますが、「任意後見制度」は、本人自ら後見人を選ぶことができるという点で、メリットがあります。

いかなる場合に成年後見人を付するか(法定後見制度)

判断能力が不十分となってしまう要因は、認知症、知的障害、精神障害、頭部外傷などさまざまなものが考えられます。判断能力の判定は、法的な評価を伴うため、医師の意見は重視されるものの、一律の判断基準は存在しません。簡易知能評価スケールや契約締結判定ガイドラインなど、判断の参考になる資料は存在しますが、いずれも一判断要素を示すために用いられるものにすぎません。
そのため、以下の判断要素から、判断能力が十分か否かを、近親者などの周りの方々のご協力をいただき検討する必要があります。

①コミュニケーション能力(意思表示能力・理解能力)
②契約の意思(当事者の把握・契約を結ぶことの理解)
③基本的情報の把握能力
④生活状況・将来の計画・援助の必要性
⑤記憶や意思の継続
⑥専門家の意見照会

ご自身の近親者がどのような状態にあるか、日常生活上の会話や弁護士との面談時のやりとりの中で一つずつ検証していくことが重要となります。

成年後見人が付されるまでの流れ(法定後見制度)

法定後見が開始されるまで、一般的に以下のような流れとなります。

このような一連の流れで、法定後見は開始されます。申立てから法定後見の開始まで、4ヶ月ほど期間を要します。そのため、本人の保護を早急に開始するために、申立事情説明書や財産目録などの必要書類を作成し、申立てまでの期間を短縮するよう努める必要があります。

いかなる場合に成年後見人を付するか(法定後見制度)

成年後見人の仕事は、財産管理や契約の締結などを本人に代わって行うことです。食事の世話や介護などを実際に施さなければならないというわけではありません。

(1)就任時の職務
・財産目録の作成
※家事審判記録の取り寄せや関係者からの事情聴取を行い、作成します。
・金融機関に対する対応
※金融機関に対して後見人に就任したことを知らせます。口座開設などの手続も必要となります。
・財産管理の計画
※収入と支出を明らかにし、本人の生活に必要なお金を確保するなど、財産管理の計画を立てます。
(2)その後の職務
・財産管理
※収入・支出の全般につき把握をしなければなりません。預貯金や株式などの金融商品、不動産、税務処理に至るまで本人になり代わり幅広く管理を行います。
・身上監護に関する職務
※医療に関する契約や施設への入所契約、介護に関する契約など、生活を営む上で必要となる法律行為を行います。
・家庭裁判所への報告・許可申請
※初回の報告は比較的早い時期に設定されますが、その後は、おおむね1~3年に1度、家庭裁判所に財産管理の状況を報告することになります。
※本人の居住用不動産を売却する場合は家庭裁判所の許可が必要となります。また、後見人が本人に代わって営業活動などを行うときは後見監督人の同意が必要となる場合があります。

後見人ができないこと

日常生活には、さまざまな法律行為が存在します。後見人は、本人の生活につき広範囲な代理権を担っていますが、後見人ができない事務も存在します。
例えば、婚姻、離婚、養子縁組等の身分に関する事項を代理することは出来ません。また、遺言書を本人に代わって書くこともできません。遺言書は法律上15歳以上であれば書くことができるため、未成年者との均衡を考えると、遺言にあたっての本人の意思は尊重されなければならないと考えられているからです。
さらに、後見人は、本人と後見人の利益が相反する行為を行うことができません。例えば、後見人が本人の所有する不動産を購入する場面や、後見人の債務について、本人が連帯保証をする場面などが、利益が相反する行為にあたります。この場合、後見人は、家庭裁判所に対し、特別代理人の選任の申立てをしなければなりません。

本人ができること

成年後見制度を利用しても、本人が法律行為を一切行えないというわけではありません。本人がすでに行った法律行為は、後見人が、取り消すか、事後的に認めるか(追認)という判断を行うことになります。
食料品や日用品を購入することも売買契約にあたり、法律行為といえます。しかし、本人の一般的な生活や意思決定は尊重されるべきとの考え方から、「日常生活に関する行為」については、後見人であっても取り消すことはできないとされています。
このように、成年後見制度はあくまでも判断能力が不十分な本人を保護する制度であり、法律上、本人の日常生活に過度な支障が生じないよう配慮がなされています。

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