治療期間3ヶ月で症状固定と言われたら?弁護士が注意点を解説

執筆者 潮崎 雅士 弁護士

所属 第二東京弁護士会

初動が大事。様々なことに当てはまりますが、法律問題もそうです。しかし、今まで法律問題に関わったことがなく、どうすればよいかわからない方が多いと思います。そうして初動が遅れると、最良の解決は難しくなってしまいます。
逆に相談が早ければ早いほど、より良い解決がしやすくなります。ですので、何かお困りのことがあれば、お早めにご相談ください。皆様の法律問題の最良の解決に向けて全力でサポートさせていただきます。

「交通事故の怪我の治療を続けていたら、3か月を経過したので症状固定と言われた」
「症状固定と言われたら、治療は終了しなければいけない?」

交通事故によって怪我をした場合でも、加害者側の任意保険会社から、治療開始から3ヶ月を経過したので症状固定だと言われてしまうことがあります。

特に、打撲やむちうちなどの怪我の場合、このように言われることが多いのですが、その際の対応には注意が必要です。

本記事では、症状固定とはどういうものか、加害者側の保険会社から症状固定と言われた場合の注意点と対処法についてご説明します。

1.症状固定の意義

症状固定とは、症状が一進一退となり、治療を続けても改善が見られない状態のことをいいます。

いつ症状固定になったかどうかは、法律的な判断によって決まるものであり、時期が争いになった場合には、裁判所が、医師の診断内容等を要素として判断することになります。

症状固定となった場合は治療の必要性がないことになるため、傷害部分の損害は、その時点までの請求しか認められなくなります。

つまり、症状固定後は治療費、通院交通費、休業損害などの請求はできなくなりますし、傷害(入通院)慰謝料も症状固定までの通院日数・期間を基礎として算定することとなります。

一方、症状固定の時点で残存した症状はいわゆる「後遺症」となります。

この後遺症については、自賠責保険に対して後遺障害等級の認定申請を行うことができます。

この申請の結果、後遺症が自賠法に定められた後遺障害等級(14等級35系列の計140種類)のいずれかにあたると認められた場合は、その等級に応じ、後遺障害慰謝料と逸失利益(後遺障害によって減少する将来の収入)の請求が認められるようになります。

このように、症状固定は、その前後で、賠償を受けられる損害の種類が変わる、重要な意味を持つものです。

そして、症状固定までの期間、すなわち治療期間について、加害者側の保険会社の言うままに3ヶ月とすることを認めてしまうと、損害賠償に影響を受けてしまいますので、注意が必要です。

具体的な注意点について、次の項で詳しく解説します。

2.治療期間3ヶ月で症状固定となることの注意点

加害者側の保険会社に言われるままに治療期間3か月で症状固定とした場合、以下のような影響を受けてしまいますので注意が必要です。

治療期間が3ヶ月で症状固定となる影響

  • 十分な傷害慰謝料を受け取れない可能性がある
  • 後遺障害等級の認定を受けられないリスクがある

具体的に説明いたします。

(1)十分な傷害慰謝料を受け取れない可能性がある

傷害慰謝料は、怪我を負ったことによる精神的苦痛を補償するものです。

傷害慰謝料の算定方法には、自賠責基準、任意保険基準、裁判所(弁護士)基準の3つがありますが、通院の日数および期間が算定の基礎となります。

加害者側の保険会社の言われたとおりに3ヶ月で症状固定とすることに応じてしまうと、本来もっと通院が必要であったとしても、3ヶ月分の慰謝料しか支払ってもらうことができません。

もちろん、その後通院を続けて、後でその分も含めて保険会社と交渉するということはできますが、一度被害者側が3ヶ月での治療終了に応じたことを盾に態度を変えない可能性が高くなってしまいます。

このように、治療期間3ヶ月で症状固定となった場合、本来もらえるはずの傷害慰謝料を受け取れなくなってしまう可能性があります。

(2)後遺障害等級の認定を受けられないリスクがある

交通事故による怪我の後遺症がいずれかの後遺障害等級に認定されるためには、四肢の欠損といった明らかに不可逆なものを除くと症状固定までの治療期間が6ヶ月以上であることが要求されます。

そのため、それよりも短い期間の3ヶ月で症状固定として治療を終了してしまうと、後遺症が残ったとしても後遺障害等級の認定を受けられない可能性が高くなります。

後遺障害等級の認定を受けられなければ、後遺障害慰謝料と逸失利益の請求は認められなくなります。

つまり、請求できる損害額が大きく減ってしまうことになるのです。

3.治療期間3ヶ月で症状固定と言われた場合の対処法

交通事故の怪我の中でも、むちうちなどの比較的軽度の怪我は、治療を開始してから3ヶ月を経過した時点で症状固定と言われる場合が多いです。

もっとも、医師に言われた場合と保険会社に言われた場合とでは、対処法が異なります。

以下では、それぞれの場合についての対処法についてご説明します。

(1)医師に言われた場合

交通事故の怪我の中でも、打撲やむちうちについて、医師が3ヶ月程度で症状固定と判断してしまうことがあります。

先に説明したとおり、症状固定かどうかは法律的な判断で決まるものですから、医師に症状固定かも、と言われても実際にはそう評価されないという可能性があります。

まだ症状の改善を感じている、というような場合は症状が一進一退となっているとは言えませんので、そのことを医師に説明して治療を続けるようにしてもらうことが必要になります。

もっとも、主治医に対して治療の必要性を説明するのは難しいことと思われます。

そのため、医師から症状固定の時期について話が出た際には、後遺障害等級の認定手続や示談交渉のことを見据えて、早い段階で弁護士に相談するのがおすすめです。

(2)保険会社に言われた場合

治療を開始してから3ヶ月を経過した時点で、加害者側の任意保険会社から症状固定として治療費の一括対応の打ち切りを打診されることがあります。

これは、3ヶ月が完治期間の目安となるむちうちの場合に多いです。

もっとも、症状固定の時期を判断するのは保険会社でもありませんので、このような打診をされても治療をやめないことが何よりも大切です。

治療をやめてしまい極端に短い治療期間で症状固定となってしまうと、先にご説明したとおり、傷害慰謝料が少なくなってしまったり、後遺障害部分の損害が認められなくなってしまったりするリスクがあります。

そのため、保険会社からこのような打診があった場合には、一括対応の延長を交渉しましょう。

また、一括対応の延長を認めてもらえず治療費の支払を打ち切られた場合にも、健康保険を利用して負担を軽減した上で治療費を支払い、治療を継続することが重要です。

もっとも、打ち切りの打診があった際に、保険会社の交渉や自費で通院した方がよいかの判断を行うのは困難を伴います。

そのような場合には、弁護士に相談することで、スムーズに進むことがありますので、まずは相談することが望ましいでしょう。

まとめ

本記事では、交通事故による怪我の治療を開始して、3ヶ月で症状固定となることの注意点や対処法について解説しました。

治療期間が3ヶ月で症状固定としてしまうと、後遺症が残っても後遺障害等級の認定を受けることは難しい場合がほとんどです。

適切な賠償を受けるためにも、症状固定の時期について不安や疑問がある場合には、なるべく早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに交通事故の後遺障害等級の認定申請や示談交渉に対応してきました。

経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、交通事故の怪我の治療やその後の法的対応にお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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執筆者 潮崎 雅士 弁護士

所属 第二東京弁護士会

初動が大事。様々なことに当てはまりますが、法律問題もそうです。しかし、今まで法律問題に関わったことがなく、どうすればよいかわからない方が多いと思います。そうして初動が遅れると、最良の解決は難しくなってしまいます。
逆に相談が早ければ早いほど、より良い解決がしやすくなります。ですので、何かお困りのことがあれば、お早めにご相談ください。皆様の法律問題の最良の解決に向けて全力でサポートさせていただきます。