自己破産をしたら養育費の支払はどうなる?支払が困難な場合の対処法

自己破産をしたら養育費の支払はどうなる?支払が困難な場合の対処法

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「借金の返済と養育費の支払で困っていて自己破産をしたい」

「養育費は免責の対象になる?」

借金の返済に加えて養育を支払っている状況で破産を検討されている方は、自己破産をした場合に養育費の支払がどうなるか気になっていると思います。

結論をいうと、自己破産をしても養育費の支払義務はなくなりません

一定の事由がある場合に自己破産とは別の手続により減額できる可能性があるにとどまります。

本記事では、自己破産をした場合に養育費の支払義務がどうなるのかや、養育費の支払が困難な場合にとりうる手段についてご説明します。

1.自己破産をしても養育費は免責されない

自己破産をしても養育費は免責されない

自己破産をしても養育費の支払義務がなくなるわけではありません

自己破産とは、裁判所に申し立てを行い、借金を返済できる見込みがないことを認めてもらった上で、借金の支払義務を免除を受ける手続のことです。

借金の支払義務の免除のことを「免責」といいます。

養育費については、破産法253条1項4号ハに、免責の対象とならない、「非免責債権」であることが規定されています。

したがって、自己破産をして免責許可決定を受けても養育費を支払う義務はなくならないということになります。

(1)破産開始前の滞納分養育費の扱いについて

破産手続開始決定前に支払期限が到来していて支払っていない養育費がある場合は他の債務と同じ扱いとなり、養育費の支払を受ける側の人(「権利者」といいます。)も他の債権者と同様の立場になります。

自己破産の手続中に、支払っていなかった養育費を自ら支払う必要はありません

財産がある場合には破産管財人による換価処分が行われ、債権額の割合に応じて配当が行われます。

このとき、権利者も未払いの養育費の割合で配当を受け取ることになります。

養育費は非免責債権ですので、配当分を差し引いても未払いが残ってしまう場合、その分は、自己破産の手続終了後も支払う義務が残ります

これにより、自己破産の手続後、養育費を受け取っている相手が、滞納分の請求や強制執行の手続を行う可能性があります。

また、養育費を受け取る側の経済状況など特別な理由があれば、手続中であっても滞納分の養育費を支払うことが認められることもあります。

(2)破産手続開始決定後や手続中に支払期限か到来した養育費について

破産手続開始決定後に支払期限が到来した養育費は自己破産手続外の債権になります。

そのため手続中で扱われることはなく、相手方から通常どおり請求を受けることになります。

つまり、破産手続開始決定後は約束どおりの養育費を支払わなければなりません

支払をしない場合には強制執行の手続をされてしまい、給料や預貯金を差し押さえられる可能性があります。

破産手続開始決定後は養育費の支払をしなければならないことを覚えておきましょう。

2.養育費の支払が困難な場合の対処法

養育費の支払が困難な場合の対処法

自己破産をしたあとも養育費の支払義務は継続しますが、支払が困難な状況が続くなら養育費減額調停の申立てを検討しましょう

以下のようなケースにおいて、養育費を支払う側の人(「義務者」といいます。)は養育費減額調停を申し立てることにより、養育費の減額を受けられる可能性があります。

  • 離婚後、義務者の収入が減った
  • 離婚後、義務者に扶養家族が増えた
  • 離婚後、権利者が再婚し、子と再婚相手が養子縁組した

養育費減額調停を申し立てると、調停委員が双方当事者の主張を取り次ぐ形で妥当な養育費の金額について話し合いが行われます。

話し合いがうまくいかず調停が成立しなかった場合でも、審判に移行し、裁判官の判断により、適正な養育費の金額が決定されることになります。

離婚時に先にあげたような事実が予想されたという事情がある場合は難しいですが、そうでなければ養育費が減額される可能性があります。

特に、収入の減少や扶養家族が増えたことによって、自己破産をするほど資金繰に困ってしまったということであれば、養育費の減額が認められる蓋然性は高まるでしょう。

なかには「相手が話し合いをしてくれないだろうから、意味がなさそう」と誤解する人もいますが、前記のとおり、養育費に関する調停は不成立で終わっても審判に移行し裁判官が金額を決定するため、相手との合意は必要ありません。

もし、離婚後も連絡を取り合っているなど相手と話し合いの余地があるなら、権利者に減額をしたい旨やその理由を伝えましょう。

調停を待たずとも、減額合意ができる可能性があります。

ご自身で交渉するのが難しいという場合には、弁護士に相談しましょう。

本人同士での話し合いではそもそも着地点がわからず合意に至ることが難しいことがありますが、弁護士が間に入ることでスムーズに金額が決まることも考えられます。

話し合いで合意できなかった場合に養育費減額調停に移行するときも、弁護士に依頼しておけばスムーズに進めることができます。

まとめ

自己破産をして免責許可決定を受けても、養育費は非免責債権であるため養育費の支払義務はなくなりません。

しかし、自己破産をするほど困窮しているのであれば、事情次第で養育費減額調停を申し立てることにより、養育費を減額することができる可能性があります。

養育費減額調停が不成立に終わっても、審判に移行し、裁判官が養育費の金額を決定することになります。

まずは弁護士に相談し、ご自身に養育費の減額が認められる事情があるかどうか確認してみましょう。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。