自己破産をすると官報に掲載される?自己破産のリスクについて

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「自己破産をすると官報に名前が載ってしまうって本当?」
「官報に載ったことって周りの人に知られてしまう?」
自己破産は、裁判所に申立てをし、免責許可決定を受けることによって、債務の支払義務の免除を得ることができる手続です。

一方で、自己破産をした事実は官報に掲載されることになっています。

自己破産をしたことが官報に掲載されると聞くと、何か不利に扱われるのではないかと不安になってしまうと思います。

この記事では、官報とはどのようなものなのかそこに自己破産をしたことが載るというのはどういうことなのか、ご説明します。

実のところ、官報に掲載されることによって周囲の人に自己破産をしたことを知られてしまう蓋然性は相当低いということをこの記事によってわかっていただければと思います。

1.官報とはどのようなものか

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官報とは、日本国が発行している機関誌であり、法令の公布や、公務員の人事異動といった国の行為についての広報や、各省庁、裁判所、会社の公告すべき事項が記載されています。

行政機関の休日を除いて毎日発行されており、販売は、各都道府県庁所在地に所在する「官報販売書」にて行われており、一般の書店、小売店で販売されることはありません。

また、インターネット版官報も用意されており、過去30日間の官報は無料で閲覧できるほか、それより前の官報についても有料で検索、閲覧をすることが可能となっています。

参照:インターネット版官報(https://kanpou.npb.go.jp/)
このように官報はだれでも入手、閲覧ができるものです。

しかし、そもそも官報について存在を知らなかったり、知っていてもわざわざ購入してこれを見ようする人はまれであったりするため、その内容に興味を持つ人はほとんどいません。

仕事上官報に掲載された情報を取り扱う必要がある人以外に、一般の人がこれを読む機会はほとんどないといってよいでしょう。

2.自己破産をしたことが官報に掲載されるとどうなるか

自己破産の手続のある段階に至ったことは申立人の住所、氏名などとともに官報によって公告されるべき事項とされています。

そのため、自己破産の申立てをすると、申立てをした人の住所氏名が官報に掲載されてしまいます。

しかし、先にご説明したとおり、一般の人が官報を読む機会はほとんどないと考えられます。したがって、官報に掲載されはしますが、そのことによって自己破産を行ったことを周囲の人に知られるという可能性は、ゼロと言い切ることはできませんがほとんどありません。

一方、消費者金融等の金融機関では、破産手続や個人再生手続を申し立てた人の情報を官報から収集していることが考えられますが、このことが、生活に及ぼす影響はほぼないでしょう。

自己破産の手続については官報による公告が行われることになっていますが、そのことが悪影響を及ぼすことはほとんどないのです。

3.官報に掲載されるタイミング

任意整理後に連絡せず滞納するリスク

自己破産の手続においては、主に①破産手続開始決定時②破産手続の終了時③免責許可決定時にそれぞれ官報に掲載されます。

以下、詳しくご説明します。

(1)破産手続開始決定時

自己破産の申立て後、申立て書類に問題がなければ、裁判所から破産手続を開始する旨の決定がされます。

この決定がされたことは、官報に掲載されることになっており、決定をした裁判所、決定の内容などとともに、破産を申し立てた人の氏名、住所が掲載されます。

(2)破産手続の終了時

自己破産の場合に破産手続が終了する形としては、大きく分けて2種類あります。

一つは手続の「廃止」です。これは、破産者の財産がほとんどなく、配当にあてることができないことがわかった時点で手続を終了させる、というものです。

破産を申し立てる際、破産者に財産がなく、免責不許可事由もない場合には、「同時廃止」といい(1)の開始決定と同時に廃止が行われます。

破産者に財産があるか調査の必要がある、または財産はないものの免責不許可事由についての調査の必要がある場合には、管財人の調査後、債権者集会の期日において手続を廃止することになります(「異時廃止」といいます)。

もう一つは、手続の「終結」です。これは、破産者に財産があり、換価、配当の手続が必要となった場合の終了の仕方です。

裁判所の選任した管財人による換価、配当などの手続をすべて終えて破産手続を終了させる場合には終結という呼び方をします。

廃止、終結いずれの場合も開始決定と同様に公告がされます。

同時廃止の場合は、公告も開始決定と同時にされることになります。

(3)免責許可決定時

破産者の債務の支払義務を免除する、免責の決定が行われたことも公告されます。

免責許可決定は、管財人がつかない同時廃止事件の場合は、廃止後に免責審尋という裁判官による確認の期日が設けられ、その期日後に出されます。

管財人がついている場合は、通常最後の債権者集会の日に同時に免責審尋が行われ、その期日後に免責許可決定が出されます。

免責許可決定の公告は、単独であったり、手続の終結と同時であったり様々です。

4.自己破産のその他のリスク

ここまで官報掲載との関係についてご説明してきましたが、自己破産の手続には、官報の掲載以外にも事前に検討しておいた方がよいことがいくつかあります。

以下、官報の掲載以外に、自己破産によって破産者が受ける影響についてご説明します。

(1)財産を処分されてしまう

自己破産の手続においては、資産価値のある財産は、管財人により売却され(「換価」といいます)、債権者への配当にあてられてしまいます。

そのため、家や自動車などの価値の高い財産については手放さなければならないことを覚悟する必要があります。

ただし、家財道具など生活に必要なものは換価の対象にはなりません。また、99万円以下の現金、20万円以下の預貯金、査定額が20万円以下の自動車など、一定の価値(「換価基準」といいます)以下の財産は原則として換価の対象とならず、それらの価値の合計が99万円を上回らなければ、自由財産として手元に残せます。

換価基準や自由財産の基準については裁判所によって異なる場合がありますので、申立ての前に確認しておく必要があります。

ローンが残っている場合、家については債権者による抵当権の実行により、自動車については所有権留保に基づく引揚げにより、それぞれ破産手続とは別に手放さなければならなくなることがほとんどです。

資産価値のある財産がある場合、ローンが残った財産がある場合は、自己破産を申し立てたあとそれらがどうなってしまうので、事前に専門家に確認しておいた方がよいでしょう。

(2)一定期間信用情報機関に事故情報が登録される

自己破産を含む債務整理に共通のリスクとして、手続を行うと、そのことが信用情報機関に事故情報として登録されてしまいます(いわゆる「ブラックリスト入り」)

信用情報機関とは、金融機関から個人の借入れの履歴などの情報(これをひっくるめて「信用情報」といいます)の提供を受けこれを管理し、金融機関が与信審査を行う際にその照会に応じて信用情報を提供する機関です。

この信用情報には、契約者が借入れの返済ができなくなったことなどの金融事故の情報、すなわち事故情報も含まれています。

借入れの申込みを受けた金融機関が信用情報機関に信用情報の照会をした際に、申込者に事故情報があることがわかると、その人には経済的な信用に疑いがあることになり、審査を否決されてしまいます。

簡単に言うと、事故情報があると与信審査が必要なローンやクレジットカードの利用ができなくなってしまうのです。

自己破産をしたことは、まさに債務の返済ができなくなったことを示す事実ですから、事故情報にあたります。

そのため、自己破産をした後は、ローンやクレジットカードの利用ができなくなってしまいます。

事故情報は永久に信用情報機関に登録されているわけではなく、5年から10年で削除されることになっています。

しかし、自己破産を行った後しばらくの間、借入れができないという負担が生じることは覚えておきましょう。

(3)保証人が請求を受けてしまう

保証人がついている債務を負っていながら自己破産をした場合、保証人が請求を受けてしまうリスクが高まります。

自己破産の手続を終え、免責許可決定が確定すれば債務者の支払義務は免除されます。しかし、その効果は申立てをした当人だけに生じるものであり、保証人の債務には影響を及ぼしません。債権者は保証人に対して請求することができるため、保証人から債権を回収しようとするのです。

保証人が請求を受けてしまうのであれば、保証人がついている債務を自己破産の対象から外せばいいのでは、と考えるかもしれません。

しかし、自己破産の手続においては「債権者平等の原則」がはたらいているため、一部の債権者を対象から外すということはできず、債権者一覧表にはすべての債権者を記載しなければなりません。意図的に債権者を外したことが判明すると、免責を受けられない可能性もあります。

したがって、保証人がいる場合は、保証人の方に支払ってもらうか、保証人の方ともども債務整理を行う、ということになります。

保証人の有無については申立ての前に確認し、保証人の方に黙って手続を進めることのないようにすべきでしょう。

(4)破産手続中、一定の資格が制限される

破産開始決定が出されると、破産者は、各種士業、警備員、生命保険の外交員などの一定の資格を取得したり、その資格を使ったりすることができなくなるため、それらの資格を必要とする業務を行うことができなくなります。

資格の制限はずっと続くわけではなく、免責許可決定が確定すれば、資格を取得したり、資格を必要とする仕事をしたりすることができるようになります(「復権」といいます。)。

資格の制限は破産手続をしている間に限られるわけですが、その間仕事ができなくなってしまうので、生活には大きな影響があることになります。

制限を受ける資格を必要とする職業におつきの方は、資格が使えなくなるのに備えて一時的に求職したり、転職したりといった対応が必要です。

(5)破産手続中、自由な住居の移転ができなくなる

破産手続が開始されると、居住地を離れる際に裁判所の許可が必要になります。

ただし、裁判所の許可が得られないということはほとんどありませんので、転居等が禁じられるわけではありません。

また、この制限は、破産の手続が行われている間だけ効果があるものです。したがって、破産の開始と同時に手続が廃止される同時廃止の場合には関係がありません。

なお、引っ越しだけでなく、2泊以上の宿泊を伴う旅行、海外旅行の場合にも裁判所の許可が必要になる運用がされています。

自己破産を申し立てて管財人がつくこととなったら無断での引っ越し、旅行などはせず、必ず代理人弁護士や管財人に事前に話をするようにしましょう。

まとめ

自己破産をすると官報に掲載されるとはどういうことなのか、官報に掲載されるとどのようなリスクがあるのか、官報掲載以外に自己破産を行ったことによって受ける影響についてご説明してきました。

自己破産は支払義務を免除してもらえる手続ですが、その一方で財産を引き上げられてしまったり、保証人が請求を受けてしまったりと、官報に掲載されてしまうことのほかにも検討の必要な影響がある手続です。

自己破産を選択する際には、保証人へ説明するべきかどうか、手放さなければいけない財産に何があるかなど、弁護士に相談しよく検討してから手続を進めていくことをおすすめします。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

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