家事審判とはどのようなものか

家事審判とはどのようなものか

審判は調停と裁判の利点を生かした手続

調停が裁判所を交えたお話し合いであることは、以前のコラムでご説明いたしました。
あくまで話し合いなので、「法的にどうなのか?」という点だけでなく、それぞれの当事者の言い分を柔軟に取り入れた解決が望めます。

対して裁判は、双方が法的な主張を交し合い、「法的に適当な解決」を目指すことになります。
そして、和解ができなければ、最終的には判断者である裁判官が、強制的な判断(判決)を下します。
強制的に解決ができる反面、中には「かわいそうだとは思うけれど、法律的には敗訴になってしまうな」という場合もあります。

では、審判はどうでしょうか。
審判は、裁判と同様に、裁判官が職権によって強制力を伴う結論を出します。
したがって、話し合いによる双方の合意による解決を目指した調停とは異なります。
もっとも、その裁判官が判断する上で考慮する事項は、法律のみに拘束されません。
したがって、事案の内容を十分に加味した結論が出る可能性があります。

そういう意味では、審判は調停と裁判の利点を生かした手続といえます。

離婚に関係する審判の種類

審判は、上記のような特色があるので、さまざまな事項を定める際に用いられています。
たとえば、

・子の氏の変更許可
・相続放棄
・後見人の選任
・養子縁組の許可

などは、調停ではなく最初から審判で判断されます。
これは、これらの事項は、公益に関することであるため裁判所の関与が求められているだけであり、対立当事者による争いではないからです。
「子の氏を変更すべきだ!」
「いや、すべきじゃない!」
という話し合いは、そもそもあり得ないということですね。
もともと争いはないけれど、市民の自由にさせてしまっても問題がある事項について、裁判所が事情を聞いた上で判断するものです。

他方で、離婚に関係する審判としては以下のようなものがあります。

・親権者の変更
・養育費の請求
・婚姻費用の分担
・子との面会交流の実施

これらは、まさに離婚の話の中で対立が生じやすいものです。
したがって、まずは調停=話し合いでの解決を目指すことになります。
そのため、これらの事項を最初から審判で申し立てをしても、裁判所からは「まずは話し合ってみてはどうでしょう」と、調停に移されることが多いです。
調停の話し合いで、どうしても結論が出ない場合に、審判に移行した上で、裁判官が一切の事情を考慮して判断を下すことになります。

また、制度上は離婚自体も審判によってすることもできますが、実際はほとんど審判が出されることはありません。
したがって、離婚自体について調停が不成立となってしまった場合には、訴訟を提起することを検討する必要があります。

「離婚調停の実際③~離婚調停の終わり方~」についてはこちらの記事をご覧ください。

離婚調停の実際③ ~離婚調停の終わり方~

審判手続きの流れ

離婚に関係する審判は、多くの場合に先に調停をした後に行われます。
これが、どのような場合に審判に移行するかというと、調停では解決しないだろうと調停委員が判断したとき、つまり調停が不成立で終了するときです。
この場合、裁判所は審判に付すことができます。
具体的な手続きの流れは裁判所ごとに異なりますが、一般的には当事者双方同席の上で、調停不成立になる旨を調停委員(裁判官)が伝えます。
そして、「審判に付します」と宣言されることになります。
この際、離婚などほかの事項については調停が続くということもあります。

つまり、
離婚するかしないかは調停での話し合いを継続する。
ただし、婚姻費用の分担額については話し合いでは埒が明かないので、審判で決める。
ということになります。

婚姻費用や養育費などの金額を決める審判であれば、それまで調停で出された資料や主張された事項を基に算定します。
もしも審判官が判断をするのに資料が足りないと思えば、追加での提出を求められます。
これらの資料が出揃い、審判をするに熟したと判断された時点で、審判が出されることになります。
また、親権や監護権などのお子さんが絡む場合には、家庭裁判所調査官が手続に関与することになります。
家庭裁判所調査官は、お子さんの養育状況や、双方の用意できる環境などを調査した上で報告書をまとめ、審判官に意見を出します。
これに時間を要する場合には、審判が出されるまでより期間がかかることもあります。
しかし、いずれにせよ、審判手続きに移行したからには、何らかの結論が出されることになります。

審判の効力

審判は、裁判官が行う強制的な解決であるとご説明しました。
では、その審判の内容に異議があるときはどうしようもないのでしょうか。
この場合、審判が出されてから2週間以内に不服の申し立てをすることができます。これを即時抗告といいます。
もっとも、「嫌だ」という理由だけで何でもかんでも否定されてしまっては審判制度の意味がないので、即時抗告がなされると高等裁判所でその不服に理由があるか否かを判断することになります。
したがって、「なぜ審判の内容が不服なのか」「どのような内容が適切であるか」という点をきちんと説明する必要があります。
つまり、相手方が理由なく即時抗告をしても、それだけで審判が無に帰すというわけではないということです。

即時抗告がされなかったり、即時抗告がされても高等裁判所で棄却されたりした場合、審判は確定することになります。
確定した審判の内容は、判決と同様の効果を持ちます。
したがって、たとえば養育費を定めた審判であれば、相手方が支払わなければ強制執行をすることもできます。

気をつけるべきなのは、強制執行するためには、審判の文面から義務が明確である必要があることです。
婚姻費用や養育費であれば、ほぼ確実に、「誰が、いつ、いくらを、誰に対して支払う」という点が定められているため、問題がありません。
実務上難しいのは、面会交流についての審判です。
細かい話になるので、別の機会に詳述しますが、面会交流権が認めたれた!と思っていても相手方が拒絶した場合に実際は実現できない、ということも少なくありません。
ですので、お子さんとの面会交流について調停・審判をご検討している方は、お早めに専門家の弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

審判に至るその前に

調停はお話し合いなので、弁護士を代理人にせずにご自身で手続きを進める方もいらっしゃいます。
審判も、裁判ほど厳密な法律論を中心としたやり取りだけではないため、個人で対応するという方もいらっしゃります。
もっとも、審判をだす裁判官は、「どういう事情があったら、どういう風に考慮しよう」という一定の考え方をもっています。
したがって、同じ事実を主張するとしても、どのような方法や論理で主張するかで、結論への影響度がまったく変わってくることもあります。
審判手続きに入ってしまったら、遠からず何らかの結論が出てしまいます。
少しでもご自身の思いや状況を汲み取った結論となるように、お早めに弁護士へご相談ください。