任意整理の流れとは?任意整理の具体例な手続と注意点を紹介

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「任意整理って具体的にはどうやって進めるの?」
「任意整理をする上で気をつけた方がいいことは?」
任意整理をしようと考えている方の中には、手続の内容について知った上で進めたい、とお考えの方も多いと思います。

この記事では、任意整理の具体的な流れや注意すべき点についてご説明します。

1.任意整理とは



任意整理とは、借金の負担を軽減する手段、すなわち債務整理の手段の一つであり、裁判所を通さず債権者と直接交渉することにより、借金の減額を目指すものです。

債権者との交渉によって、利息、遅延損害金の全部ないし一部の支払を免除してもらい、さらに、返済のスケジュールを設定しなおして和解することで、借金をしてしまった方に無理のない範囲で借金を返済していく方法です。

以下では、任意整理の具体的な流れとリスクなどについてご説明します。

(1)任意整理の流れ

任意整理を行う場合、2~6か月の期間で和解が成立します。

具体的な流れの詳細とそれぞれにかかる時間は以下のとおりです。

ご依頼いただく弁護士によってスケジュールが異なる部分はありますが、平均的な場合の流れをご説明します。

1. 弁護士へのご相談・ご依頼

債務整理の相談を受け、相談者から聞き取った状況から、利息部分の減額や支払スケジュールの調整によって、返済が可能であると判断したら、弁護士から任意整理による解決を提案し、了解を得られればご依頼いただきます。

2.債権者への受任通知の送付(即日~3日)

任意整理の依頼を受けた弁護士は、速やかに各債権者に対し、依頼を受けた旨の通知(受任通知)を送付します。

弁護士からの通知には法律上の効果が認められており、債権者は直接依頼者に連絡をすることができなくなるため、督促行為を止めることができます。

3. 取引履歴の開示請求、債務額の調査(1~3か月)

受任通知と合わせて、債権者に対して依頼者との取引履歴の開示を請求します。

取引履歴の開示を受けることにより、それぞれの債権者の債権の総額や、元本、利息、遅延損害金、それぞれの具体的な金額を把握することができます。

通常は1か月程度で開示されますが、債権者によっては二、三か月程度を要することもあります。

4.利息制限法に従った引直し計算(1~2週間)

依頼者が借金を始めた時期によっては、債権者が上限利息を超えた利息を請求しており、本来支払う必要のない分まで支払をしている場合があります。

そこで、そのような疑いのある借金については、上限利息での計算(引直し計算)を行います。この引直し計算によって、いわゆる「過払い金」が発生していることがわかれば、債権者に対して逆に過払い金の返還を請求します。

過払い金の返還請求を行う場合には、その回収に3~8か月が必要になる場合があります。

5.債権者との和解交渉(1~3か月)

すべての債権者の債権額が判明した時点で、各債権者との間で、①利息の一部又は全部の免除による債務の減額、②返済期間について交渉します。

ここでいう利息には、すでに発生している利息、遅延損害金(返済が遅延した場合の損害金、利息よりも高率で定められた金利)、将来分の利息が含まれます。

これらのうち、将来分の利息については免除してくれることが多いですが、すでに発生した利息および遅延損害金についてどこまでの免除を認めるかについては債権者ごとに異なり、一概に何割の免除が認められる、と断言することはできません。

また、返済期間については、5年を目安に交渉します。

しかし、短い期間での返済を要求してくる債権者に対しては、3年に設定するよう交渉しますので、だいたいは3~5年の範囲内で決まります。

6.和解の成立

すべての債権者との和解交渉が完了したら、各債権者との交渉結果に応じた内容の和解書を取り交わし、和解を成立させます。

任意整理は全債権者のトータルで月々の返済額をいくらにするかという視点で行うため、なるべく各債権者との交渉が固まった段階で並行して和解するようにします。

7. 返済の開始

和解が成立したら、和解書の内容に従って、依頼者ご自身による返済が始まります。

返済開始の時期は、和解書を取り交わした月の月末や、翌月末とすることが多いですが、和解交渉の際に依頼者様の状況に合わせて決めることになります。

 

2.任意整理に関する注意点



任意整理を進めていくにあたり、様々な注意点があります。

具体的にどのような注意点があるのか、以下ご説明します。

(1)弁護士に相談する

まず、任意整理を進める際は弁護士に相談することをおすすめします。

任意整理は、裁判所を介さずに債権者と直接交渉を行う手続であるため、弁護士に依頼せずに行うことも一応可能ですが、債権者との立場や専門性が求められる観点から、推奨できません。対等な立場で交渉するためにも弁護士に依頼する方がよいでしょう。

弁護士は、交渉の場面だけでなく、これまでの経験から依頼者に対する助言をすることもできます。

また、弁護士から債権者に対して受任通知を送付することで督促を止めることもできます。

(2)返済の見通しを立てておく

2点目は、任意整理を進める際には、返済ができるかどうか見通しをしっかり立てることです。

任意整理の最後には債権者との交渉結果に従って和解書を取り交わしますが、これに従った返済ができなければ、再度債権者から支払請求を受けてしまいます。その場合、再和解や追加介入という手段も考えられますが、当初の支払条件よりも厳しい条件で合意せざるを得なくなるでしょう。

そもそも支払が一切できないとなれば、自己破産を検討しなければならないかもしれません。

このような事態に陥らないためにも、返済できる額を弁護士と相談し、収支計画を立てておく必要があるでしょう。

(3)ブラックリスト入り

3点目として、ブラックリスト入りによる影響が挙げられます。

金融機関は借入れの申込みを受けると、申込みをした人に返済能力があるかどうかの調査(与信審査)を行います。

与信審査のために金融機関は、申込者のそれまでの借入れの履歴や返済状況などの信用情報を信用情報機関に照会します。

信用情報には、契約者が借入金を返済できなくなったこと(金融事故)を示す事故情報も含まれており、任意整理の手続に入ったことも事故情報に該当します。

信用情報機関に事故情報が登録されていると、信用がないと判断されローンやクレジットカードの申込みの審査に落ちてしまい、それらを利用することができなくなります。

このように、信用情報機関に任意整理をした事実が登録されてしまうことを「ブラックリスト入り」と呼び、これによって借入れなどができなくなってしまうのです。

事故情報は永久に残っているわけではなく、その影響は一定期間にとどまりますが、任意整理をするには、このようなリスクがあることも把握しておきましょう。

(4)任意整理に応じない債権者もいる

任意整理をする上で注意すべき4点目は、債権者が任意整理に応じない可能性があることです。

重複してしまいますが、任意整理は裁判所を介さない手続であるため、交渉に応じるよう強制することはできません。債権者が交渉したくないと判断すれば、弁護士がいくら交渉しても任意整理をすることはできません。

まれに任意整理に全く応じない業者もいるため、そのような債権者との間では任意整理が難しいことは覚えておきましょう。

まとめ

任意整理を行う場合、通常であれば2~6か月の期間で和解が成立します。

また、弁護士に依頼があった時点で債権者に対して受任通知の送付がされるため依頼者様への督促は止まります。

和解が成立した後は、3~5年をかけて利息等の一部または全部カットされた金額を返済していくことになります。

任意整理を弁護士に依頼すれば督促が止まりますし、ご自身で交渉をする必要がなくなり、和解が成立するまで生活の立て直しに集中することができます。

任意整理による解決が可能な状況かどうかを検討するためにも、まずは弁護士へのご相談をおすすめします。

 

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