任意整理をしても返済が苦しい場合はどうする?放置するリスクや対処法について弁護士が解説

「任意整理による返済が苦しくなったらどうなる?」
「返済ができなくなってしまう前にすべきことは?」

任意整理を行い、債権者への返済を続けている方の中には、返済負担についてこのような悩みや不安をお持ちの方もいると思います。

任意整理は、将来的に発生する利息のカットと返済スケジュールの再設定(概ね5年程度)について債権者と直接交渉を行い、合意に基づいて返済を行う手続です。

特に利息の負担が大きい場合には、任意整理を行うことで、将来の利息をカットしながら月々の返済負担を軽減して完済を目指すことができます。

また、任意整理では、手続の対象とする債権者について、債務者が自由に選ぶことができる点が特徴です。

例えば、住宅ローンや車のローンの残債務がある場合、これらが手続の対象に含まれてしまうと、抵当権や所有権留保が実行され、住宅や車を手放さなければならない可能性が高いです。

しかし、任意整理を行うことで、これらの債務を手続の対象から除外することができ、住宅や車などの財産を手放すことなく手続を行うことができます。

もっとも、返済義務自体がなくなるわけではないため、債権者との合意が成立した後にも、その合意内容に基づき、返済を継続する必要があります。

しかし、収入の変動などによって、合意に基づく返済ができなくなるケースもあるでしょう。

そのような場合には、返済を滞納することで訴訟や差押えなどの法的リスクが高まるため、支払が滞ってしまう前に適切な対応をとる必要があります。

本記事では、任意整理の返済が滞った場合のリスクや対処法について解説します。

なお、任意整理のメリットやデメリット、手続の流れについては、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

2024.11.29

任意整理とはどのような手続?メリット・デメリット、手続の流れを弁護士が解説

1.任意整理の返済が滞った場合のリスク

任意整理を行い、返済を続けている途中で収入の減少などが生じ、返済を行うことが難しくなるケースもあります。

そのような場合には、返済が滞ってしまう前に適切な対応をとる必要があります。

返済ができない状態を放置することで、以下のようなリスクが高まることに注意しましょう。

任意整理の返済が滞った場合のリスク

  1. 債権者から返済を促す連絡が入る
  2. 債権者から一括返済の請求を受ける
  3. 訴訟や差押えの手続に移行する

返済が滞ってしまった場合でも、早期に債権者へ連絡するなどの対応を行うことで、大きな問題にならないことも多いです。

そのため、返済が滞りそうになった段階で弁護士に相談するなどして、適切な対応を行うことが大切といえるでしょう。

(1)債権者から返済を促す連絡が入る

合意で定められた期日までに返済ができない場合、債権者から確認の連絡が入ります。

タイミングは債権者によっても異なりますが、返済期日を経過してから概ね数日以内に返済を促す連絡がされることが一般的です。

この時点でお金を工面することができれば、すぐに入金することで、大きな問題には発展しないことが多いといえます。

しかし、返済ができない事態が続くことで、遅延損害金が発生し、返済金額に上乗せされることになります。

遅延損害金は、返済が遅れたことに対する制裁という意味合いがあるため、通常の利息と比較すると高い利率が定められていることが多いです。

また、遅延損害金は、滞納期間が長引けば長引くほど加算されていくことにも注意しましょう。

そのため、返済の目途が立たない場合に連絡を放置し続けることで、返済負担が膨らむことになってしまうのです。

遅延損害金の計算方法については、以下の記事も参考になります。

2022.04.30

遅延損害金はいくらになる?計算シミュレーションや発生リスク・対処法を紹介

(2)債権者から一括返済の請求を受ける

返済ができない状態のまま放置し、2回目の滞納をしてしまった場合、債権者から一括返済の請求を受ける可能性が高まります。

任意整理では、債務者が2回以上返済を滞納した場合には、債務者が期限の利益を喪失するという「懈怠約款」が付されていることが一般的です。

期限の利益とは、返済期日が到来するまでは、債務者は支払を行わなくてもよいという利益のことをいいます。

滞納が1度であれば、急いで遅れている分の支払いをすれば、次回以降の返済に対する期限の利益はそのまま、つまり分割での支払いは可能となります。

しかし、2回以上の滞納をしてしまうと、それ以降の分割返済も全くできなくなる、つまり残額を一括で支払わなければならなくなります。

そのため、1回目の滞納を起こしそうな場合には、収支の状況から、継続的に返済を行うことができるか否かを見極めることが大切です。

特に債権者から一括返済の請求を受けた場合には、これを放置すると、残額すべてに遅延損害金がかかり続けることになりますし、法的リスクも高まります。

ご自身で最適な解決方法が見つからない場合には、任意整理を依頼していた弁護士になるべく早期に連絡するようにしましょう。

(3)訴訟や差押えの手続に移行する

債権者から一括返済の請求を受けた場合にも返済ができないでいると、債権者から訴訟を提起される可能性が高いです。

訴訟が提起された場合には、裁判所から債務者に対して訴状が送達され、書面の作成・提出や期日に裁判所に出廷することを求められます。

訴状が届いた場合にも対応を行わない場合には、債権者勝訴の判決が出され、これに控訴などの必要な対応を行わなければ判決が確定してしまいます。

もっとも、訴訟になった時点で債務者側で反論できる事情は基本的にはないため、それ以上争うことができません。

訴訟になってから交渉を行おうとしても、債権者側もそれなりの費用や時間を負担して起こしているため、交渉に応じてもらえない可能性が高いです。

そして、債権者勝訴の判決が確定すると、債権者はその判決に基づいて、強制執行の手続を申し立てることが可能となります。

その結果、強制執行によって債務者の財産が差し押さえられてしまいます。

具体的には、債務者が所有する不動産や車、預貯金や給与などが差押えの対象となる可能性があります。

そのため、差押えが行われると、これらの財産を失ってしまう事態になりかねないため、訴訟や差押えに移行する前に対応を行うことが重要です。

2.任意整理の返済が困難な場合の対処法

上記のように、任意整理による返済が滞ってしまうと、さまざまなリスクがあります。

そのため、返済が困難であることが判明した時点で、なるべく早期に対応をとる必要があるといえます。

具体的には、以下のような対応です。

任意整理の返済が困難な場合の対処法

  1. 返済が滞る前に債権者に連絡する
  2. 追加介入を行う
  3. 再和解を行う

それぞれについて解説します。

(1)返済が滞る前に債権者に連絡する

収支の状況によって、期日までに支払ができない可能性がある場合には、返済を滞納してしまう前に債権者に連絡することが重要です。

返済ができない事情やいつまでに返済ができる見通しであるのかなどについて丁寧に説明を行うことで、債権者が支払の猶予などを認めてくれる可能性があります。

なお、すでに過去に返済を滞納したことがある場合には、債権者が支払の猶予などを認める可能性は低いです。

また、1回目の滞納であったとしても、収支の状況から今後も継続して返済を行うことができるのかについて見通しを立てておくことが大切といえます。

そのため、返済の見通しが立たない場合には、なるべく早期に弁護士にも相談することが重要です。

弁護士に相談することで、現在の収支の状況や今後の見通しも踏まえた最適な解決方法の提案を受けることができます。

(2)追加介入を行う

弁護士に相談の上で、追加介入を行うことで、返済負担を軽減できる可能性があります。

追加介入とは、任意整理の合意が成立した時点で対象に含めていなかった債務も任意整理の対象として含めることです。

先ほども述べたように、任意整理では手続の対象となる債権者を債務者が選ぶことができます。

そのため、一部の債権者のみと任意整理について合意していた場合には、残りの債権者についても任意整理の交渉を行うことで、返済負担を軽減することにつながります。

もっとも、すでに大部分の債権者を対象にして任意整理を行っていた場合には、追加介入を行っても、返済負担がそれほど軽減されないこともあります。

また、債権者が応じなければ追加介入を行うことはできないことにも注意が必要です。

なお、住宅ローンや車のローンの残債務を手続の対象から除外していた場合には、これらについて追加介入を行うことで、住宅や車などを手放さなければならない可能性が高いといえます。

このように、追加介入を行う際には、さまざまな注意点があるため、まずは弁護士に相談の上で、返済負担を軽減することができるのかどうかについて説明を受けることが重要です。

(3)再和解を行う

追加介入が困難な場合や追加介入によって返済負担を軽減することができない場合には、再和解を行うことを検討しましょう。

再和解とは、一度合意した返済条件について、債権者と再度交渉することによって、返済負担の軽減を図る方法です。

追加介入とは異なり、交渉を行う相手は、最初に任意整理について合意した債権者になります。

支払が滞り、一括返済の請求を受けている場合でも、債権者と再和解ができれば、分割による返済を行うことができる可能性があります。

もっとも、再和解ができるかどうかも債権者次第です。

そのため、債権者が応じない場合には、再和解を行うことができないことに注意しましょう。

特に返済がすでに2回以上滞っていた場合や収支の状況などから再和解しても完済の目途がないような場合には、債権者が交渉に応じる可能性は低いです。

また、以前の任意整理を行ってからあまり時間がたっていない場合には、再和解の交渉も困難となります。

そのため、再和解によって解決を図りたい場合には、早期に弁護士に相談の上で債権者との交渉を依頼することが重要です。

再和解の詳細や再和解が適しているケースなどについては、以下の記事で詳しく解説しています。

2022.09.30

任意整理後に支払が厳しいときはどうする?放置するリスクとは

3.任意整理では解決が難しい場合にとるべき手続

任意整理によって合意した条件での返済が困難になった場合には、なるべく早期に債権者や弁護士に連絡をすることで、追加介入や再和解が可能なケースもあります。

もっとも、現在の収支では、継続的に返済を行うことが難しい場合には、債権者が交渉に応じない可能性が高いです。

そのため、債権者が交渉に応じない場合や返済負担の軽減とならない場合には、以下のような手続を行うことを検討しましょう。

任意整理では解決が難しい場合にとるべき手続

  1. 個人再生
  2. 自己破産

なお、それぞれの手続と任意整理の具体的な違いについては、以下の記事も参考になります。

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(1)個人再生

個人再生は、借金の返済が困難であることを裁判所に申し立て、借金総額に応じて減額された金額を原則3年(特別な事情が認められた場合には5年)で返済する再生計画の認可を裁判所から受けて返済する手続です。

任意整理では、将来的に発生する利息部分が減額の対象ですが、個人再生では元本部分も含めて減額を受けることができます。

具体的には、借金総額に応じて以下のように返済金額(最低弁済額)が定められています。

借金総額 最低弁済額
100万円未満 借金総額
100万円以上500万円以下 100万円
500万円超え1500万円以下 借金総額の5分の1
1500万円超え3000万円以下 300万円
3000万円超え5000万円未満 借金総額の10分の1

そのため、任意整理と比較すると、借金の返済負担を大幅に軽減することが可能です。

また、住宅ローンについては、住宅資金特別条項(いわゆる「住宅ローン特則」)を利用することができれば、住宅ローンの返済を続けたまま個人再生を行うことができます。

これによって、住宅を手放すことなく借金の減額を行うことが可能です。

もっとも、個人再生は任意整理とは異なり、手続の対象とする債権者を選ぶことができず、すべての債権者を対象にしなければなりません。

そのため、車やバイクのローンが残っている場合には、これを手続の対象から除外することはできず、個人再生を行うことで債権者に引き上げられてしまう可能性が高いです。

また、資産価値の高い財産を所有している場合には、最低弁済額よりも返済しなければならない金額が増加し、減額幅がそれほど大きくならないケースもあります。

さらに、任意整理とは異なり、裁判所を通して手続が進行するため、手続に必要な資料や費用を多く準備する必要があります。

このように、個人再生を行う際にはさまざまな注意点があることも押さえておきましょう。

個人再生のメリットやデメリット、手続の流れや注意点については、以下の記事も合わせてご覧ください。

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個人再生とは?弁護士が手続の概要やメリット・デメリットなどを解説

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個人再生の流れやスケジュールとは?手続に関する注意点も解説

(2)自己破産

自己破産は、借金の返済が困難であることを裁判所に申し立て、裁判所から免責許可決定を受けて借金の返済義務を免除してもらう手続です。

税金などの一部の支払義務は免責されないものの、借金については返済義務を免れるため、任意整理と個人再生とは異なり、手続後は返済を行う必要がなくなります。

特に怪我や病気などによって、収入を得ることが難しくなったような場合には、自己破産を行うことを検討した方がよいケースもあります。

もっとも、自己破産では、債務者が一定額以上の財産を所有している場合には、手続の中で換価処分が行われて債権者に配当されます。

具体的には、住宅や車、バイク、高額な保険の解約返戻金や預貯金などです。

そのため、これらの財産については、手放さなければならない可能性が高いといえます。

なお、自己破産の手続は、債務者の財産の有無などによって、以下のいずれかに振り分けられます。

自己破産の手続の種類

  • 同時廃止事件
  • 管財事件

このうち、同時廃止事件は、債務者に一定額以上の財産がない場合や免責不許可事由に該当する事情がない場合などに振り分けられる簡易的な手続です。

これに対して、管財事件は債務者に一定額以上の財産がある場合や免責不許可事由の有無が明らかでない場合などに振り分けられます。

免責不許可事由とは、裁判所が免責を与えない事由のことです。

具体的には、以下のような事由が挙げられます。

主な免責不許可事由

  • 浪費やギャンブルが借金の主な原因である
  • 特定の債権者のみに返済を行った(偏頗弁済)
  • 返済できないにも関わらず借入れを行った
  • 換金行為を行った
  • 財産を処分したり隠したりした
  • 裁判所への提出書類や資料を偽造・変造した など

任意整理を行っている途中で自己破産を行った場合には、管財事件に振り分けられる可能性があります。

これは、一部の債権者のみに返済を行っていたことが免責不許可事由に該当する可能性が生じるため、調査が必要になると裁判所が判断する場合があるからです。

同時廃止事件と管財事件の振り分け基準や手続の流れ、注意点などについては、以下の記事も合わせてご参照ください。

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自己破産における同時廃止事件とは?振り分けられる基準や手続の流れなどについて解説

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破産の管財事件とは?基準や手続きの流れ、注意点を弁護士が解説

まとめ

本記事では、任意整理による返済が滞った場合のリスクと対処法について解説しました。

収入の減少などの事情により、任意整理を行っても返済が困難になった場合には、返済ができない状況を放置することで、債権者から訴訟を提起されたり、財産を差し押さえられたりするリスクが高まります。

そのため、任意整理による返済が難しくなった時点で、なるべく早期に債権者や弁護士に連絡することが大切です。

収支の状況などによっては、追加介入や再和解によって返済負担を軽減できる可能性があります。

また、これらの対応ができない場合でも、個人再生や自己破産に方針を変更することで、借金問題を解決することが可能です。

どのような解決方法が最適であるかは債務者一人ひとりの状況によっても異なるため、判断に迷う際には弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに任意整理をはじめとする債務整理の手続に数多く対応してきました。

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執筆者 金子 周平 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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