任意整理をするとどんなデメリットがある?7つのメリットも解説

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

「任意整理をするとどんなデメリットがあるのか?」
「任意整理は何のメリットがあるのか?」

借金の返済に困っている方で任意整理をすべきかどうか迷っている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、任意整理にはどのようなデメリットがあるのかや、それに対してどのようなメリットがあるのかについてご紹介します。

1.任意整理の5つのデメリット

任意整理の5つのデメリット

任意整理とは、弁護士が消費者金融やクレジットカード会社などの債権者と交渉を行って、月々の支払い金額の減額や借金の利息部分のカットなどを行い、月々の返済や借金の完済をしやすくするための手続きです。

債務整理手続きの一つになります。

任意整理には、いくつかのデメリットがあることを押さえておく必要があります。

特に把握しておくべきデメリットは以下の5つです。

  1. 一定期間クレジットカードが使えなくなる
  2. 一定期間借入ができなくなる
  3. スケジュール通りに返済し続けなければならない
  4. 元本は返済しなければならない
  5. 任意整理に応じない債権者もいる

それぞれご紹介するので、どのようなデメリットがあるのかチェックしておきましょう。

(1)一定期間クレジットカードが使えなくなる

任意整理をすると、信用情報機関に事故情報が登録されるため、一定期間クレジットカードが使えなくなります。

任意整理を行う場合、対象としたカードローンやクレジットカードはその時点で利用ができなくなります。

任意整理の対象としていないその他のクレジットカードはそのまま使い続けることができますが、クレジットカード会社が信用情報を照会した場合には、そのクレジットカードが使用できなくなる可能性が高いです。

また、信用情報機関に事故情報が登録されている間は、新規でクレジットカードの申込みをしても、審査の際に信用情報機関に照会が行われるため、発行を受けることができません。

ただし、信用情報機関から事故情報が削除されれば、新たにクレジットカードの審査に通ってそのクレジットカードを使用することが可能です。

任意整理の場合に、信用情報機関に事故情報が登録される期間を以下の表にまとめています。

株式会社シー・アイ・シー(CIC) 株式会社日本信用情報機構(JICC) 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
完済から5年 完済から5年
(ただし2019年9月30日以前の契約は受任通知の送付日から5年)
完済から5年

完済日を基点に削除されるまでの日数がスタートすることを押さえておきましょう。

(2)一定期間借入ができなくなる

一定期間借入ができなくなる点も押さえておく必要があります。

クレジットカードの審査に通らなくなることと同じ理由から、信用情報機関に事故情報が登録されている間は、新規でローンを組むことができなくなります。

ただし、信用情報機関から事故情報が削除されれば、審査に通って、ローン契約を結ぶことは可能です。

(3)スケジュール通りに返済し続けなければならない

任意整理後は、任意整理で定まった返済スケジュール通りに返済をしていかなければなりません。

任意整理によって、借金の利息のカットを行って支払っていく金額を低くすることはできるのですが、借金の元金部分は支払っていく必要があります。

基本的には最長5年間で返済していく必要があります。

もしスケジュール通りに返済することができずに返済が滞ってしまった場合は債権者から残る借金の一括請求を受けてしまいます。

そのような場合は再度任意整理を行って支払いスケジュールを立て直す必要があります。

場合によっては任意整理以外の自己破産、個人再生といった他の債務整理の手段を検討する必要もあるでしょう。

任意整理を行っても月々の返済が困難な場合では、裁判所を通じて借金の減免を求める個人再生や自己破産を選択しなければならない可能性が高いと考えてください。

(4)元本は返済しなければならない

任意整理は、月々の支払額を見直したり、利息分の減免を行う手続きであるため、借金の元金部分は全て返済しなければなりません。

たとえば、300万円の借金がある場合は、300万円に対して今後ついていく利息部分のカットを交渉して支払金額を低くすることはできますが、任意整理をしても借金の元金部分である300万円は満額で返済することが必要になります。

ただし、過去に払いすぎていた過払金があるケースだと、その過払金をまず借金から差し引いて計算を行うため、借金の元金が減ったり、なくなったりすることがあります。

このように任意整理では、過去に払いすぎていた過払金があったという例外的な場合を除いては、借金の元金は減らないことを覚えておきましょう。

(5)任意整理に応じない債権者もいる

任意整理は、弁護士が債権者との交渉で月々の返済金額やスケジュールの変更を取り決めし直すものであるため、必ずしも債務者側の希望通りに債権者が合意に応じるとは限りません。

いくら弁護士が交渉を重ねて粘っても、債権者の方で任意整理の提案を受け入れてもらえないことがあることを押さえておきましょう。

もっとも、返済がどうしても難しい状況の債務者に対して、任意整理の提案を拒否すると債権者としても元金さえ回収できないリスクが発生するため、基本的には任意整理に応じる場合が多いです。

2.任意整理の7つのメリット

任意整理の7つのメリット

これまでは任意整理のデメリットを説明しましたが、任意整理をすることによる大きなメリットがあります。

主なメリットは以下の7つです。

  1. 債権者からの督促が止まる
  2. 支払い金額を減額できる
  3. 返済スケジュールを調整できる
  4. 財産はそのまま残せる
  5. 個人再生や自己破産よりも生活への影響が少ない
  6. 裁判所を介さずに早期解決が見込める
  7. 介入先の債権者を選択することができる

それぞれご紹介するので、任意整理をするか決めるときの参考にしてみてください。

(1)債権者からの督促が止まる

任意整理の依頼を受けた弁護士は債権者に対して、今後の窓口が弁護士になることを記載した受任通知を送付します。

債権者はそれ以降弁護士宛に連絡をするため、債務者に対する督促が止まります。

債務者にとって債権者から督促が来ることが大きなストレスになります。督促が来なくなることが分かるだけでも精神的な負担を軽減し、落ち着いて日常生活や今後の再起に取り組めるでしょう。

家族に知られてしまうリスクも低くなるので、督促状が何度も届いている方は、その点もメリットといえます。

(2)支払い金額を減額できる

任意整理をすることで借金の利息分が減免されます。

そのため、本来支払うべき金額より少ない金額に支出を抑えることが可能です。

毎月返済を行っても利息に充当されてほとんど借金の元金が減っていない状態から利息をカットすることによって借金の元金への返済に充てられるため、完済までの期間が短縮されます。

また、利息分がなくなるだけでも毎月の支出が抑えられるので、お金のやりくりに余裕が生まれるでしょう。

(3)返済スケジュールを調整できる

返済スケジュールを調整できる点もメリットです。

利息分を除いた残りの元金を原則として最長5年の返済スケジュールに見直すことができます。

生活に支障が出ない程度に月々の返済金額を調整するため、返済のために借入を行うような状態から脱却することができます。

(4)財産はそのまま残せる

任意整理をしても財産はそのまま残すことができます。

たとえば、住宅ローンや自動車ローンがある場合、それらのローンの支払いは継続したまま、他の借金について任意整理を行うことができます。

住宅や自動車という生活基盤を維持したまま、他の借金について返済金額の調整が図れる点も押さえておきましょう。

(5)個人再生や自己破産よりも生活への影響が少ない

個人再生や自己破産では、持っていることのできる財産に大きな制約があります。

任意整理では、財産を残しつつ、返済金額の調整が図れるため、生活への影響が他の債務整理の手段と比べて小さく抑えられます。

任意整理によって、持っているクレジットカードの利用停止やローンの新規契約はできなくなりますが、その他に生活に影響することは少ないので、任意整理前と同じような生活を送ることが可能です。

(6)裁判所を介さずに早期解決が見込める

任意整理は、自己破産や個人再生と異なって裁判所を介さずに、弁護士が債権者と直接交渉するため、手続にかかる期間が短くなることが見込めます。

個人再生や自己破産は裁判所を介して行われるので、裁判所への申立から3ヵ月程度は少なくとも期間がかかってしまいますが、任意整理であれば債権者と支払いスケジュールの取り決めができた時点で手続が終了になります。

任意整理が成立したら、あとは決まったスケジュールにしたがって着実に返済していきましょう。

(7)介入先の債権者を選択することができる

任意整理は、きちんと経済的再建の計画ができる限り、どの債権者を対象にするか選択することができます。

たとえば、A、B、Cの債権者がいる場合、AとBだけを対象に任意整理を行い、Cに対しては従来通り返済することもできるのです。

身内や親族といった近しい関係の方が保証人になっている場合、債務整理を行うと保証人が代わりに債務を支払う必要がありますが、任意整理の場合、そういった債務を任意整理の対象から外す等それぞれの方の実情に合った柔軟な対応をすることができます。

まとめ

任意整理をすることで、信用情報機関に事故情報が登録されるため、クレジットカードやローンの審査に一定期間通らないというデメリットがあります。

一方で、月々の支払い金額の減額や利息の減免、借金の完済に向けた負担の軽減というメリットがあります。

借金の返済に困難を感じている方は一度弁護士に相談することをお勧めします。

それぞれの方の事情を踏まえて任意整理を行った場合にどうなるのか、メリットやデメリットがご自身の場合はどの程度なのか、具体的な助言を受けることができます。

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執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。