交通事故で傷病手当金を受け取ることはできる?受給条件と受け取り方法を解説

「交通事故で傷病手当金を受け取ることはできる?」
「傷病手当金を受け取るにはどうしたらいいのか」

交通事故の被害に遭った方の中には、傷病手当金について調べている方もいるかと思います。

傷病手当金とは、健康保険(国民健康保険以外の会社加入の健康保険、いわゆる「社保」。)から支給を受けることができる給付金です。

これにより、業務外の病気や怪我が原因で仕事を休まざるを得なくなりそれによって減少した給与分について、一部の補償を受けることができます。

業務外の怪我には、交通事故による怪我も含まれるため、交通事故による怪我を原因とした収入の減少についても、傷病手当金を受け取ることが可能です。

もっとも、交通事故の怪我について傷病手当金を受給する際には、いくつかの条件を満たす必要があるほか、賠償という観点からは注意点もあります。

本記事では、交通事故の傷病手当金の概要や受け取り方法等について解説します。

1.傷病手当金とは

傷病手当金とは、健康保険法99条を根拠とする、健康保険加入者向けの保障制度です。

病気や怪我による休業をした場合に、保険加入者やその家族の生活を保障することを目的としています。

労働災害以外の病気や怪我のために会社を休んだことにより、事業主から生活に必要な分の給与の支払が受けられない場合に、減少した収入の一部に当たる額を受給することができます。

プライベートで交通事故に遭い怪我を負った場合には、後述する受給要件を満たせば、傷害手当金を受給することが可能です。

もっとも、傷病手当金と加害者から支払われる休業損害は同じ性質のものであるため、二重取りをすることはできません。

休業損害を先に相手から受け取ると、受け取った分の金額が、傷病手当金から減額されますし、反対に、傷病手当金を先に健康保険から受け取ると、相手から支払われる損害賠償額は、傷病手当金の金額を控除(損益相殺)した金額になります。

なお、傷病手当金のほかにも、交通事故の損害賠償金から控除される項目はいくつかあります。

交通事故の損害賠償金に関する損益相殺の概要や具体的な項目については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご参照ください。

2025.04.25

損益相殺とはどんなもの?交通事故の賠償金から控除される項目について解説

また、休業損害を受け取るための要件や請求方法などについては、以下の記事もあわせてご覧ください。

2021.12.31

交通事故による休業損害とは?計算方法と注意点を解説

2022.05.31

交通事故の休業損害とは?加害者に休業損害を請求する方法

2.傷病手当金を受け取るための条件

交通事故によって休業したからといって、必ず傷病手当金を受け取ることができるわけではありません。

傷病手当金を受け取るには、以下の条件を満たす必要があります。

傷病手当金を受け取るための条件

  1. 業務外の負傷や病気(交通事故)であること
  2. 交通事故によって労務ができないこと
  3. 4日以上仕事を休んでいること
  4. 休業中に収入を得ていないこと

順にご説明します。

(1)業務外の負傷や病気(交通事故)であること

傷病手当金を受け取るためには、交通事故が業務外で生じたものである必要があります。

業務中に交通事故に遭った場合は、労災保険が適用され、傷病手当金の支給対象外になります。

そのため、傷病手当金を受け取る前提条件として、プライベートでの交通事故であることが必要となることに注意が必要です。

(2)交通事故によって労務ができないこと

交通事故によって労務ができない状態でなければ、傷病手当金を受け取ることができません。

つまり、交通事故の怪我によって仕事ができない状態であることが条件といえます。

従来の仕事ができなくなった状態でも、勤務先の計らいによって同一の事業所内で配置転換をしてもらい、より軽い業務に従事して収入を得ているなどの場合は支給の対象外となります。

なお、労務ができない状態かどうかは怪我の程度や職務内容などを考慮した上で判断がなされます。

怪我の程度については、医師の所見が必要となるため、受給の際には医師に診断書または意見書を作成してもらいましょう。

(3)4日以上仕事を休んでいること

交通事故による怪我の療養目的で、最初に連続3日間(待機期間)休んだ上で、合計で4日以上休んでいることが求められます。

つまり、交通事故が原因で休業したとしても、その日数が3日以下であれば、傷病手当金を受け取ることができません。

また、待機期間が完成していることも求められますが、これは仕事をしていない日が3日連続していればよく、有給休暇や土日などの公休日が含まれていても問題ありません。

(4)休業中に収入を得ていないこと

休業中に収入を得ていないことも重要です。

休んでいても有給休暇によって収入があった場合も同じ扱いとなります。

ただし、休業期間中の収入額がその期間中に支払われる傷病手当金の総額より少なければ、その差額分だけ受け取ることが可能です。

なお、長期的に休業する場合、会社側がよかれと思って有給休暇取得扱いをする可能性もあるため、交通事故の怪我によって4日以上休む場合、給与が生じないように事前に会社に傷病手当金を受給する旨を伝えておきましょう。

3.傷病手当金を受け取る方法

上記の条件を満たしている場合、傷病手当金を受け取ることができます。

傷病手当金の受け取り方法は以下のとおりです。

傷病手当金を受け取る方法

  1. 治療を行い診断書を作成してもらう
  2. 必要書類を揃えて会社に提出する
  3. 健康保険組合に申請する

順に見ていきましょう。

(1)治療を行い診断書を作成してもらう

傷病手当金を受け取るためには、交通事故による怪我によって業務が不能であることを証明しなければならないため、治療後は診断書を作成してもらいましょう。

診断書に業務不能である旨の記載がなければ、交通事故による怪我と休業との因果関係を証明することができず、傷病手当金の支給が認められない可能性があります。

傷病手当金に限らず、加害者側と示談交渉を行うときの重要な書類なので、診断書を受け取ったら記載内容に目をとおして、適切かどうかチェックすることが重要です。

(2)必要書類を揃えて会社に提出する

治療を開始したら、必要書類を揃えて会社に提出しましょう。

傷病手当金の申請に必要な書類は以下のとおりです。

傷病手当金の申請に必要な書類

  • 診断書
  • 健康保険傷病手当金支給申請書
  • 会社の証明書
  • 第三者行為による傷病届(交通事故の場合)

診断書の作成には時間がかかるので、医師に診断書の作成を依頼したら、並行して健康保険傷病手当金支給申請書、第三者行為による傷病届と給与の支払状況を記した会社の証明書を手配しましょう。

健康保険傷病手当金支給申請書と第三者行為による傷病届の書式は、会社で受け取ったり、協会けんぽや健康保険組合のサイトからダウンロードしたりすることもできます。

会社の証明書とは、給与の支払い状況を証明する書類などをいいます。

これは、総務部もしくは人事部などに申請することで、受け取ることが可能です。

書類の提出期限は、傷病手当金を受ける権利が生じた日の翌日から2年以内なので、全ての書類が揃ったら忘れない内に速やかに会社に提出しましょう。

なお、傷病手当金の支給期間は、支給開始日から1年6か月までです。

この期間を超えて休業した場合には、上限を過ぎた分の補償を受けることができない点に注意しましょう。

(3)健康保険組合に申請する

必要書類を受け取ったら、健康保険組合や協会に申請します。

会社が被害者に代わって申請することもあります。

傷病手当金は、申請から約2~4週間程度で振り込まれることが多いです。

この期間を過ぎても振り込まれない場合は、一度会社に問い合わせてみましょう。

まとめ

交通事故の傷病手当金は、特定の条件を満たすことで受け取ることができます。

ただし、傷病手当金は、休業損害と一緒に受け取ることができない点に注意が必要です。

傷病手当金を受け取る場合は、必要な書類を揃えて提出期限を迎えるまでに会社に提出します。

もっとも、傷病手当金を受給した方がよいか、あるいは休業損害を請求した方がよいかは、個別具体的な事情によっても異なります。

そのため、どのような場合に受給の申請を行うべきか判断が難しい場合には、まずは弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士法人みずきは、これまで数多くの交通事故の問題を解決してきました。

経験豊富な弁護士が親身にお話を伺いますので、交通事故の被害に遭われた方は、お気軽に当事務所にご相談ください。

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執筆者 淵脇 龍雄 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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