交通事故によるむちうちの症状固定とは?その後の対応も解説

執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 第二東京弁護士会

弁護士相談は敷居が高い、そういう風に思われている方も多いかと思います。
しかし、相談を躊躇されて皆様の不安を解消できないことは私にとっては残念でなりません。
私は、柔和に皆様との会話を重ね、解決への道筋を示させていただきます。
是非とも皆様の不安を解消するお手伝いをさせてください。

「むちうちの症状固定とはどんな状態?」
「症状固定と言われた後の対応はどうすればいい?」

交通事故によるむちうちの治療を継続する中で、このような疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

症状固定となった後には、対応すべき手続や注意点があります。

本記事では、むちうちの場合の症状固定時期や症状固定となった後の法的対応などについてご説明します。

1.むちうちと症状固定の時期

交通事故に遭い、首に強い衝撃が加わると、むちうちの症状が現れることがあります。

むちうちは交通事故の際に生じやすい怪我ですが、骨折などの他の怪我と比べると軽症であることから、相手方の保険会社から早期に治療費を打ち切られる場合が多いです。

以下では、むちうちの症状や発生する原因、症状固定の意味やその目安となる時期についてご説明します。

(1)むちうちとは

むちうちとは、交通事故の衝撃によって首がむちを打ったように前後に強く揺さぶられることによって生じる筋肉や神経の損傷のことをいいます。

具体的には、痛みや痺れ、めまいといった症状が現れます。

診断書には、外傷性頚部症候群や頚椎捻挫といった傷病名で記載されます。

交通事故の中でも、追突事故や正面衝突などの前後から強い衝撃が加わる事故態様において発症することが多いです。

(2)症状固定とは

症状固定とは、一定期間治療を継続した後に症状が一進一退となり、これ以上治療を継続しても医学的に症状が良くならない状態をいいます。

むちうちの場合は、事故から3か月以上にわたって通院治療を継続したものの、痛みや痺れといった症状が残ったと診断された場合、損害賠償上「症状固定」と判断されます。

なお、症状固定に関する注意点やポイントについては、以下の記事も参考になりますので、合わせてご覧ください。

症状固定とは何?重要性やその後の流れについてご説明します

(3)むちうちの症状固定時期の目安

むちうちの症状固定時期は、治療を開始してから3か月から6か月が目安とされています。

むちうちは、交通事故による怪我の中では比較的軽症と判断されることから、治療の途中でも加害者側の保険会社は治療費の打ち切りを打診し、示談交渉の開始を提案してくることがあります。

しかし、基本的に症状固定のタイミングを判断するのは医師なので、担当医が治療を継続しなければならないと判断すれば、保険会社の提案を鵜吞みにせずに治療を続けることが何よりも重要です。

なお、治療費の一括支払対応を打ち切られた場合でも、治療の必要性・相当性があったと判断されれば、その後に要した治療費について相手方に請求し、受け取ることができる可能性があります。

そのため、健康保険を利用するなどして治療費を立て替えながら通院を続けましょう。

2.症状固定となった後の対応

担当医から症状固定と診断された場合には、症状の残存の程度に応じて、後遺障害等級の認定申請を行うことを検討しましょう。

具体的には、以下のような手順で進めます。

症状固定後の対応の流れ

1.医師に後遺障害診断書を作成してもらう
2.後遺障害等級の認定申請を行う
3.認定結果をもとに示談交渉を行う

順にご説明します。

(1)医師に後遺障害診断書を作成してもらう

後遺障害の申請をするためには後遺障害診断書が必要ですので、担当医に作成を依頼する必要があります。

症状固定となった時点で残存する症状をはじめ、入通院期間や自覚・他覚的症状、緩解の見通しなどについて記載してもらう必要があります。

むちうちの際の後遺障害診断書の作成については、以下の記事でも詳しく解説していますので、合わせてご確認ください。

交通事故でむちうちになった場合の後遺障害診断書について弁護士が解説

(2)後遺障害等級の認定申請を行う

担当医に後遺障害診断書を作成してもらった後には、後遺障害等級の認定申請を行います。

後遺障害等級の認定申請には、事前認定と被害者請求の2つの方法があります。

以下では、認定申請の方法とむちうちの場合に認定される可能性がある後遺障害等級についてご説明します。

#1:認定申請の方法

後遺障害等級の認定申請には、事前認定と被害者請求の2つの方法があります。

事前認定は、加害者の任意保険会社に認定申請を依頼する方法で、被害者は後遺障害診断書のみを用意すればよいため、申請の手間が省けるのがメリットです。

もっとも、それ以外の必要書類については、任意保険会社が準備・提出を行うため、書類の不備や不足などによって適切な等級認定を受けられないリスクがあります。

一方、被害者請求は加害者の自賠責保険に対して、被害者自身が書類の作成・収集を行って認定申請を行う方法です。

そのため、書類作成や収集の手間がかかりますが、適切な等級認定を受けられるような工夫をこらすことができるのが大きなメリットです。

もっとも、どのように書類作成を行えばよいか、収集すべき資料は何か、といったことについては、専門知識や実務経験がなければ難しい場合がほとんどです。

そのため、認定申請を行う際には、弁護士に相談・依頼することがおすすめです。

#2:むちうちの場合に認定される可能性がある後遺障害等級

むちうちの場合、認定される可能性がある等級と認定基準は以下のとおりです。

後遺障害等級 認定基準
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

12級13号の認定を受けるためには、交通事故を原因として痛みや痺れなどの症状が生じたことをレントゲンやMRIなどの画像所見で医学的に証明できなければなりません。

これに対して、14級9号では、画像所見では証明できないものの、神経学的検査や事故後の症状の一貫性などから矛盾なく説明できることが求められます。

このように、認定申請には専門的な知識や経験が要求されるため、事前に弁護士に相談・依頼することがおすすめです。

(3)認定結果をもとに示談交渉を行う

認定申請の結果が通知(後遺障害に該当または非該当)されれば、認定結果をもとに示談交渉を行います。

後遺障害等級の認定が下りると、等級に応じた後遺障害慰謝料と逸失利益を受け取ることができます。

むちうちの場合の慰謝料相場は、以下のとおりです。

後遺障害等級 自賠責基準 裁判所(弁護士)基準
12級13号 94万円(93万円) 290万円
14級9号 32万円(32万円) 110万円

※()内は2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合

慰謝料の算定基準は3つあり、自賠責基準が最も低額で、裁判所(弁護士)基準が最も高額です。

保険会社との示談交渉では、任意保険基準と呼ばれる自賠責基準と同額かやや高い基準で示談金額が提示されるため、知らないうちに低い金額で示談が成立してしまうリスクがあります。

適切な賠償を獲得するためには、提示された示談金額やそこに含まれる損害項目を確認することが重要です。

提示された金額に少しでも不安がある場合には、弁護士に相談することがおすすめです。

3.むちうちで適切な賠償を得るためのポイント

交通事故を原因とするむちうちについて、適切な賠償を得るためのポイントは、以下のとおりです。

むちうちで適切な賠償を得るポイント

  • 適切な頻度・期間で治療を行う
  • 後遺障害診断書の内容を確認する
  • 必要な手続や示談交渉を弁護士に依頼する

順に見ていきましょう。

(1)適切な頻度・期間で治療を行う

事故から症状固定の診断を受けるまで、継続して通院し、治療を受けていることが望ましいです。

むちうちの治療期間は一般的には3か月から6か月といわれており、通院日数も適切な頻度である必要があります。

また、後遺障害等級の獲得を目指すのであれば、主に整形外科において、事故の被害から症状固定の診断を受けるまで継続して通院し、治療を受けていることが望ましいです。

治療期間は6か月以上で、通院日数も一定程度(半年間で100日以上が望ましい)である必要があります。

事故直後から整形外科を受診・通院することで、交通事故と怪我の因果関係や症状の経過などを証明することができます。

後遺障害等級の認定申請を考えているのであれば、適切な通院頻度で治療をしていなければ、認定を受けることは極めて難しくなるため、医師から指示されたとおりに通院することが何よりも大切です。

(2)後遺障害診断書の内容を確認する

担当医から後遺障害診断書を作成してもらったら、その記載内容を確認することが大切です。

適切な等級認定を受けるために特に重要なのが、自覚症状、他覚症状および検査結果です。

自覚症状は、痛みや痺れが残る部位を伝えるだけではなく、症状の程度、その症状が日常生活に及ぼしている影響を詳しく記載する必要があります。

また、後遺障害等級の認定を受けるためには、症状が事故直後から一貫して続いていることが必要です。

天候などの外的要因によって症状が変動するような記載になっている場合には、等級非該当となるリスクがあるため、自分の症状を正確に表現できているかどうかにも注意が必要です。

(3)必要な手続や示談交渉を弁護士に依頼する

後遺障害等級の認定手続や示談交渉については、専門家である弁護士に依頼することがおすすめです。

交通事故の対応に精通している弁護士であれば、適切な等級認定のための書類作成や資料収集に習熟しており、示談交渉の場でも効果的な主張・立証を行うことができます。

また、弁護士は後遺障害慰謝料について、裁判所(弁護士)基準と呼ばれる最も高額な基準を用いて交渉を行うため、示談金額の増額も期待できます。

複雑な手続を一任することができ、安心して治療に専念できることも大きなメリットであるといえます。

まとめ

本記事では、むちうちの症状固定時期の目安や症状固定となった後の対応などについて解説しました。

むちうちは、交通事故の怪我の中では比較的軽症とはいえ、完治しない場合もありえます。

治療を継続しても症状が残存した場合には、後遺障害等級の認定申請を検討しましょう。

交通事故に遭い、むちうちの症状が現れた場合には、後遺障害等級の認定も視野に入れて、なるべく早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、これまでに数多くの交通事故問題に対応してきました。

経験豊富な弁護士が丁寧にお話を伺いますので、交通事故を原因とする怪我の治療やその後の手続にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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