交通事故の後遺障害等級認定の基準とは?賠償額の目安について解説

交通事故の後遺障害等級認定の基準とは?賠償額の目安について解説

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「交通事故で慰謝料をもらうには、後遺障害等級の認定が大切と聞いたけれど、どういうことだろう」
「できるだけ賠償金が大きい後遺障害等級を認定してもらいたいが、どうしたらよいのだろう」

交通事故によって怪我をして、治療を続けても回復の見込みがない状態になってしまったら、後遺障害等級の認定を受けることにより賠償金を受け取れる可能性があります。

この記事では、後遺障害等級の認定を受けるための基準や賠償額の目安についてご説明します。

1.交通事故における後遺障害とは

1.交通事故における後遺障害とは

交通事故によって負った怪我について、治療を続けても症状の改善が見込めない状態(この状態を「症状固定」といいます。)となってしまうことがあります。この状態のときに残った症状を「後遺症」といいます。

しかし、単に後遺症があるというだけでは、これに対する賠償を受けることはできません。

後遺症が自賠法上の「後遺障害」に該当すると認められれば、同法に定められた金額の賠償を受けることができますし、ほとんどの場合、加害者側の保険会社も後遺障害に応じた賠償をします。

交通事故において後遺症という言葉と後遺障害という言葉は、区別して扱われますので注意しておきましょう。

交通事故における後遺障害と認められるには、以下の条件をみたすことが必要です。

 

後遺障害と認められる条件

  • 将来においても回復が見込めない症状固定の状態となっている
  • 事故と障害との間に因果関係がある
  • 障害が医学的に認められる
  • 労働能力の喪失や低下を伴う
  • 自賠法施行令(自動車損害賠償保障法施行令)により定められた等級に該当する

後遺障害は1~14級までの等級と140種類、35系列に細かく分類されています。

たとえば、むちうちの症状であれば、「14級9号」か「12級13号」に認定される可能性があります。

2.後遺障害等級の認定を受けるには?

2.後遺障害等級の認定を受けるには?

後遺障害等級の認定を受けると、自賠責保険から慰謝料と逸失利益を含めた保険金が支払われます。

後遺障害等級を受けるにはどのような準備が必要なのでしょうか。

ここでは、後遺障害等級の認定を受けるまでの流れと自賠責基準による賠償金の目安についてご説明します。

後遺障害等級の認定の申請方法や自賠責保険によって支払われる保険金のより詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。

交通事故による後遺症が残ったら?後遺障害等級の認定について解説

(1)後遺障害等級を受けるまでの流れ

後遺障害等級の認定は次の流れに沿って行われます。

  1. 必要な書類を準備する
  2. 自賠責保険または任意保険会社に書類を提出する
  3. 審査機関による審査が行われる
  4. 審査結果が通知される

認定の結果は通常1~2か月で通知されます。後遺障害の内容によっては半年以上かかることもあります。

申請する際、被害者本人が自賠責保険に直接書類を提出する方法を「被害者請求」、加害者側の任意保険会社が自賠責保険に書類を提出する方法を「事前認定」といいます。

被害者請求の場合は被害者本人が必要書類をすべて集めて加害者側の自賠責保険に提出しなければなりません。

そのため、準備の負担が大きいケースもあります。

後遺障害等級の認定は書類のみで判断されるため、しっかり準備しましょう。

一方、事前認定では、被害者本人は医師から後遺障害診断書を作成してもらい、これを加害者側の任意保険会社に提出するだけです。
ほかの必要書類は任意保険会社が準備するため、申請の手間を省けます。

ただ、自分で書類を集められない分、書類の内容を確認したり、追加提出をしたりすることができないのがデメリットです。

加害者側の任意保険会社による手続ですので、しっかり資料を集めてくれるとも限りません。

提出書類について少しでも不安な点があれば、弁護士のサポートを受けて被害者請求をすることをおすすめします。

(2)後遺障害等級に則った賠償金の目安

各後遺障害等級の自賠責保険の上限額は下の表のとおりです。

この上限額は慰謝料と逸失利益を合わせた金額です。

慰謝料は、後遺障害が残ってしまったことによる精神的損害に対するものです。

逸失利益は、交通事故で後遺障害が残ったことで労働能力が制限され、本来であれば得られるはずであった収入を得られなくなったという損害のことです。

等級 自賠責基準
1級・要介護 4000万円
2級・要介護 3000万円
1級 3000万円
2級 2590万円
3級 2219万円
4級 1889万円
5級 1574万円
6級 1296万円
7級 1051万円
8級 819万円
9級 616万円
10級 461万円
11級 331万円
12級 224万円
13級 139万円
14級 75万円

出典:国土交通省の後遺障害等級表

3.後遺障害等級14級9号の認定を受けるポイント

3.後遺障害等級14級9号とは

後遺障害等級14級9号には、むちうち等によって生じた神経症状が該当します。

14級は後遺障害等級の中でもっとも軽い等級であり、認定される数が多いものです。

ここでは、後遺障害等級14級9号の認定を受けるためには、どういったポイントを押さえるべきかご説明します。

後遺障害等級14級は自覚症状のみで認定されることもあります。

しかし、「気圧の影響で痛くなる(つまり痛くない日もある)」「長時間同じ姿勢でいると痛い(つまり長時間同じ姿勢でいなければ痛くない)」といった、一時的な痛みで認定されるのは難しいです。

安静にしていても痛いという、痛みの常時性が必要になります。

後遺障害等級14級9号の認定を受ける場合は次の点に気をつけましょう。

(1)事故直後から症状が認められ、今も継続していること

むちうちの症状がリハビリにより完治することもあります。

この場合は当然後遺障害等級の認定を受けることはできません。また、初診時には小さな痛みだったものが少したって大きな痛みになることもあるでしょう。

しかし、最初のカルテに記載がなく後から症状が追記されると、症状に一貫性がなく、認定を受けるのが難しくなる可能性があります。

そのため、些細な痛みであっても、初診時から漏らさず担当医に申告しておきましょう。

(2)事故直後から通院を続けていること

事故直後から通院し続けることで、事故と障害の因果関係を証明できます。

また、通院した回数は症状の重さを判断するうえで、重要になってきます。

(3)神経学的検査で異常がみられること

ジャクソンテスト、スパーリングテスト、深部腱反射といった神経学的検査で一部所見が認められなければなりません。

これらの検査と自覚症状が整合していると、後遺障害等級の認定につながりやすくなります。

(4)画像所見があること

レントゲンやMRIの画像で症状の確認ができると認定されやすくなります。

MRIは事故後から2か月以内に撮影するようにしましょう。事故から時間が経過すると事故との因果関係を証明するのが難しくなります

なるべく事故後すぐに撮ってもらうのがよいでしょう。

まとめ

交通事故による怪我の治療を続けても回復が見込めない症状固定となったと診断されることがあります。

症状固定の診断を受けたあとは、所定の書類を準備して自賠責保険に申請することにより、後遺障害等級の認定を受けられる場合があります。

認定が受けられれば、保険金が支払われます。

後遺障害等級によって賠償金の金額が大きく異なってくるため、確認しておきましょう。

申請方法やご自身の怪我がどの等級に該当するか不安であれば、弁護士に相談して適切なアドバイスをもらうことをおすすめします。

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