退職後の休業損害はいつまで支払われるのか?3つのケースによって解説

交通事故によって、お仕事を休まなければいけなくなり、結果として収入が減ったりなくなってしまったりすることがあります。

これを休業損害といいます。

休業損害は、基本的には「本来であればもらえたはずの金額」を補填してもらうことになります。

したがって、たとえば会社員などの給与所得者は、勤務先に「休業損害証明書」を作成してもらい、本来勤務すべきだったのに休んでしまった日数と、それによって減少した給与を立証します。

これによって、「実際に減った分」の休業損害を補填してもらうことが可能になります。

では、「休業」ではなく、「退職」をした場合には、どのようになるでしょうか。

これは、一概には言い切れず、いろいろなパターンが有り得ます。

例えば、傷害は重症なのか軽症なのか。仕事の内容や、職場でのポストはどうなのか、自主退職なのか、解雇なのか、退職勧奨なのか、さまざまな要因を総合的に考慮していくことになります。

判断のポイントは、事故がなければどうだったのか、事故のせいでやむなくそうなったのかです。

(1)職場の上司と上手く話せず、事故後に自主退職した場合

Case1
軽微な事故にあって軽いむち打ち損傷を負ったAさん。
週に一度通院してシップをもらう程度でした。
Aさんは、ちょうど職場の上司とそりが合わなかったため、事故後に職場を自主退職しました。

このような場合には、退職後の休業補償請求は著しく困難でしょう。

退職の理由からすると、事故がなくとも辞めていたと言えそうですし、お怪我が重くないことからすると、事故のせいで辞めざるを得なくなったとも言えなさそうです。

そうすると、仕事をやめた後の補償を事故加害者に請求する法的な根拠がなくなってしまいます。

(2)事故後に復帰はしたものの、以前より身体に不自由を感じて、怪我が治る前に退職した場合

では、次のような場合にはどうでしょうか

Case2
交通事故で脚の骨折を負ったBさん。
Bさんは長時間の電車通勤で、しかも勤務先は階段昇降が必要でした。
事故後に一度は復帰したものの、ラッシュ時の通勤が困難であること、階段の昇降も不自由が大きいことから、怪我が治る前に退職しました。

これは、Case1よりは、休業損害が認められる可能性が高いです。

事故がなければ、通勤にも階段昇降にも不自由はありませんから、退職する理由がありません。

また、一時復帰していることから、可能な限り復職をしたい、つまり辞めたくないという意思も見て取れます。

この場合には、たとえ辞めていなくとも、怪我が治るまでは休業せざるを得ない、という判断が有り得ます。

そうすると、加害者は、被害者が辞めずに休業していれば賠償しなければならないのに、被害者が退職をしたという事実だけで賠償を免れるというのはおかしいといえます。

そのため、少なくとも、怪我が治るまで(症状固定まで)は、休業補償と同等の金額を請求することができそうです。

(3)交通事故後に、怪我による欠勤が続いたことで、解雇された場合

次は解雇されてしまった場合です

Case3
Cさんは、交通事故に遭い、むち打ちなどの怪我を負いました。
Cさんは、高校卒業後に現在の勤務先へ就職し、現在3年目でしたが、この怪我のおかげで、勤務先の欠勤を続けることになってしまい、この欠勤を理由に勤務先から解雇を言い渡されました。

かなり、かわいそうなケースといえそうです。

この場合には、本件事故がなければ解雇にされることもなく、勤務を継続していたはずです。

自主退職ではなく、強制的な解雇ですから、事故のせいでやむなくそうなったと言わざるを得ません。

そして、本件で厄介なのは、怪我が治ったからといってすぐに就職できるとは限らないという点です。

もちろん、その当時の経済情勢等に鑑みる必要がありますが、新卒以外の就職市場が縮小傾向にある場合には、一度職を離れると復帰までの道のりが険しくなります。

このような場合には、怪我が治るまで(症状固定)までのみならず、その後も一定程度の期間について休業補償が認められる余地があります。

つまり、怪我が治っても直ちに再就職できるとは限らないから、再就職ができそうな期間分も補償しよう、という発想です。

過去の裁判例では、治療が終了してから3ヶ月間は休業補償を認めるとしたものがあります(東京地判平成14年4月28日)

目次

まとめ

以上からもわかるように、退職(解雇)後の賠償が認められるかどうかは、それこそケースバイケースといえます。

個別の具体的な事情を無視して、「絶対もらえる」とも「絶対もらえない」ともいえません。

ただし、加害者側の保険会社は、多くの場合認めないという主張をしてきます。

「辞める必要がなかった」「事故がなくても辞めていた」などなど、あらゆる反論をしてきます。

したがって、被害者側としては、その保険会社の反論を排斥できるような準備をしておく必要があります。

「辞める必要がなかったのに、勝手に辞めた」と言われないように、勤務先から退職理由書をきちんともらったり、交渉経緯をきちんと残したり、入念な準備をしましょう。

軽はずみに、退職勧奨に応じてしまうと、本来であれば得られたはずの給与や賠償が受けられなくなってしまいます。

お仕事をお辞めになる大切な決断の前に、是非、弁護士にご相談ください。

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